米Googleと韓Samsungは、10月11日に米カリフォルニア州サンディエゴで開催予定だった新製品発表会を急遽キャンセルした。両社が今回の決定に至った理由について解説しているアナリストらの分析が話題になっている。両社は米Apple共同創業者のSteve Jobs氏の訃報を受けて「同氏に敬意を表したため」と説明しているが、実際の背景はどうなのだろうか?
同件は、Samsungが報道関係者らに向けて「Unpacked 2011」というAndroid新製品の発表イベントを行う旨を通知したことにさかのぼる。これは同地で11-13日にわたって開催されるCTIA Enterprise & Applicationsに併設される形で行われるスペシャルイベントで、公開されたティーザー広告ではGoogleの最新OS「Android 4.0 "Ice Cream Sandwich"」を搭載した「Nexus Prime ("Galaxy Prime"という名称の説もある)」が正式発表されることを示唆するようなマーケティング展開が行われていた。だが開催直前の7日になり、急遽同イベントをキャンセルする旨がSamsungならびにGoogleの連名で関係者らに告知された。複数の報道機関の情報を総合すれば、その理由は「(5日に亡くなった) Steve Jobs氏に敬意を表して」「いまは製品を発表するタイミングではない」だったという。
気になるのはその理由だが、名目上の説明だけでなく、その背後にある戦略上の判断があるはずだ。それについてComputerworldが10日(米国時間)付けの記事でアナリストらのコメントを総合して分析している。iPhone 4Sが予約開始の7日初日のみで100万台のセールスを記録したことは記憶に新しいが(まだ販売されてないものを"セールス"というのも奇妙だが)、同誌によれば、アナリストらの一致した見解として「メディアの興味がまだJobs氏の遺産(Legacy)に向いている」ことが理由にあるという。「(製品発表前に) GoogleとSamsungがSteve Jobsの雲(Cloud)の下から脱出したがっており、賢明な判断だった」というのはEnderle GroupのアナリストRob Enderle氏だ。また同氏は「Jobs氏の死が(製品発表延期の)原因だとするならばそうだろう。メディアがSteve Jobs氏の生涯に注目している以上、そこからNexus Primeの発表で記事スペースを多く割かせるのは難しいだろう」と述べており、いま発表したところでSteve Jobs氏とその遺作である「iPhone 4S」に話題をほとんど持って行かれてしまうというのだ。これを中止したのはビジネス上の判断からも正しいというのが同氏の意見だ。
またComputerworldが紹介する別の理由として、そもそもIce Cream SandwichとNexus Primeの発表準備が整っていない可能性も指摘している。一説によれば、Nexus Primeは当初Verizon Wireless向けに提供され、同ネットワークをターゲットにした専用端末になるという話があるが、ハードウェアやソフトウェアだけでなく、インフラを提供する同社もまた、イベントに向けた準備が整っていない可能性を指摘する。どれが正解かを知る術はないが、いずれにせよ死せるJobs氏がライバルらを引き続き奔走させているのは確かなようだ。