はじめに

データトラフィックの急増と、AppleのiPhoneのような"スマートフォン"の登場によって、端末・アクセス系だけでなく、バックホール・ネットワークにおいても通信ネットワークの急速な拡大に対するニーズが高まっています。

通信機器メーカとサプライヤは、QoS(Quality of Service)やCoS(Class of Service)などの要件といった、ネットワーク運営会社からの厳しい契約上の要求を満たす必要があります。要求に応えられなかった場合は罰則条項が発動され、サプライヤに重い罰金が課せられることもあります。装置の稼働時間は、ファイブナインとも呼ばれる99.999%が要求され、それが一般的にサービスの信頼性の尺度となっています。

複雑な設計

通信設計エンジニアが、ASIC、ASSP、通信プロセッサやFPGAといった複雑なデバイスを使用して、ネットワークおよびスイッチファブリックに適切なソリューションを提供するケースが増えてきています。

こうしたデバイスは、それぞれが電圧のみならず、各電圧のシーケンス制御においても非常に異なる電源要件を持っています。また、ラックマウント型装置の場合、実際のPCBは非常に大きな物理サイズとなり、上記のすべてのデバイスが搭載されることがあります。そのため、設計どおりの動作を確保するには、ボード上の電源供給を非常に注意深く検討する必要があります。こうした複雑なデバイスはボードに搭載された複数の電源を必要とし、それらを一定の順序でオンおよびオフし、故障を監視し、トリミングして電圧精度を確保する必要があります。

さらに、ボードへの入力電源には冗長電源管理が求められることもよくあり、プラグイン・ボードの場合は活線挿抜機能も求められます。様々な電源系統を制御するすべての機能が、電源管理を必要としています。すべての電源の投入後、システムにはリセット分配、FPGAおよびASSP用スタートアップ・コンフィグレーション制御、ウォッチドッグタイマ、マイクロコントローラ用システムバス・インタフェースなどのデジタル対応機能が求められます。こうしたデジタル対応機能にはデジタル管理が必要です。電源管理とデジタル管理をまとめて、ボード管理またはプラットフォーム管理と呼ぶことがあります。

従来の方法

電源管理の従来の方法では、ソリューションを実現するために多数の単機能ICとディスクリート・コンポーネントを使用していましたが、この方法には多くの欠点があります。デバイス数が多いために部品点数が増加し、ボードサイズも大型化します。このことはボードの信頼性に直結し、全ての信号を正確にモニタできないこともあります。ボードの設計変更が必要になった場合、電源要件もそれに対応して変化する可能性があります。この方法を図1に示します。青色のブロックはアナログ機能を示し、赤色は電源モニタ用のデジタル機能を示しています。黒またはグレーのコンポーネントは、実装されるペイロードまたは主機能を表しています。

図1:従来の方法

プログラマブル・ソリューション

従来の方法が持つ欠点を克服するため、Lattice Semiconductorでは第3世代のミクスドシグナル・デバイスファミリ「プラットホーム・マネージャ・ファミリ」を発表しました。このプログラマブルなデバイスは、ボード管理設計を大幅に簡略化します。

プラットホーム・マネージャは、ボードの電源管理機能(活線挿抜、シーケンス制御、モニタ、リセット生成、トリミング、マージン管理)とデジタル・ボード管理機能(リセットツリー、不揮発性エラーロギング、グルーロジック、ボードのデジタル信号のモニタと制御、システムバス・インタフェースなど)を1つのチップに統合します。ブロック図を図2に示します。

図2:プラットホーム・マネージャの内部ブロック

プラットホーム・マネージャは、独立したアナログチャネルによって最大12の電源テストポイントをモニタできます。これらの入力チャネルは差動入力でモニタできるため、グランド検出に対応しています。各アナログ入力チャネルは、独立してプログラム可能な2つのコンパレータによってモニタされ、High / Lowとインバウンド/アウトオブバウンド(ウィンドウ比較)の両方のモニタ機能に対応しています。

その他の機能用として、最大6系統の汎用5V耐性デジタル入力が用意されています。このデバイスには、48マクロセルCPLDと640LUTのFPGAも内蔵されています。アナログ入力チャネルのすべてのコンパレータと汎用デジタル入力のステータスは、CPLDアレイの入力に渡され、その出力によってすべてのデジタル出力(オープンドレインとHVOUT)が制御されます。プラットホーム・マネージャのFPGA選択は、デジタル・ボード管理要件に合わせて最適化されており、分散メモリの使用によって柔軟で効率的なロジックが実現されています。インスタントオン機能を持つため、ボードへの電源供給開始直後に必要となる制御機能をデバイスに内蔵できます。