ソフトバンクモバイルは29日の2011年冬春の新製品発表会で、次世代通信サービスとして「SoftBank 4G」を提供すると発表した。11月からテストサービスをスタートし、2月以降に発売するモバイル無線LANルータ「ULTRA WiFi 4G SoftBank 101SI」を提供する段階で本サービスを開始する。
SoftBank 4Gは、ソフトバンクはMVNO(仮想移動体通信事業者)となり、傘下のWireless City Planningがサービスを提供。これまで、ウィルコムがXGP(eXtended Global Platform)として高度化PHSを開発してきたものを、Wireless City Planningがさらに発展させてAXGP(Advanced XGP)を開発。そのネットワークを使ってソフトバンクがMVNOとしてサービスを行うのがSoftBank 4Gだ。ソフトバンクの孫正義社長は、「サクサクと超高速でつながるのが、人々が次世代のスマートフォンで求めているネットワーク」と話し、高速な通信速度で先進性をアピールする。
中国のチャイナモバイルらが中心となって実験を進めている次世代通信方式のTD-LTEと「100%互換性がある」(孫社長)のがAXGP。XGPの高度化においてTD-LTEの技術を盛り込んでいったものとなる。そのため、国際標準のTD-LTE向けのネットワーク機器や端末を流用できるほか、いわゆるLTE(FDD-LTE)とTD-LTEなどを1チップで提供可能にするソリューションがあることから、今後のボリュームメリットも期待できるという。XGP用の周波数帯である2.5GHz帯を使い、下り最大110Mbps/上り最大15Mbpsの通信速度を実現できる点が特徴で、「ハイスピード(高速)、ハイキャパシティ(大容量)、ハイレスポンス(低遅延)」(同)の通信サービスとなる。なお、正確に言うとAXGPはいわゆる「4G(第4世代携帯電話)」サービスではない。SoftBank 4Gはあくまでマーケティングとしての用語と考えるべきだろう。
孫社長はSoftBank 4Gについて、各通信事業者が提供する高速通信サービスを「圧倒的にしのぐ速度」と胸を張る。現在、NTTドコモのLTEサービス「Xi」(クロッシィ)は、下り通信速度が、屋内最大75Mbps/屋外最大37.5Mbps。UQコミニュケーションズのUQ WiMAXは下り最大40Mbps、イー・アクセスの「EMOBILE G4」は下り最大42Mbpsだ。
サービスエリアは、2012年度末には全国政令指定都市の99%を予定。利用料金は現在検討中で、「ソフトバンクが出すからには魅力のある価格にしたい」と孫社長は説明する。
今回2011年冬春の新製品として発表された第1弾商品のULTRA WiFi 4G 101SIは64(W)×100(H)×16.1(D)mm・約105gとコンパクトなモバイル無線LANルータで、最大10台の無線LAN端末を接続して通信が行える。マルチSSID設定も可能で、連続通信時間は約5時間。標準で電池パックを2個同梱し、それを使えば約10時間の連続通信時間を確保できる。
通信速度は、AXGPの最大速度までは出せず、下り最大76Mbpsとなる。現在、ソフトバンクが提供している下り最大42MbpsのHSPA+「ULTRA SPEED」にも対応するため、AXGPエリアでは高速通信を利用し、それ以外のエリアではW-CDMAで通信を行う、といった使い方が可能。76Mbpsまでしか出せない理由はネットワークチップの処理性能の問題とのこと。AXGPのみのチップであれば規格通りの速度が出るが、HSPA+とAXGPを搭載したULTRA WiFi 4G 101SIでは76Mbpsまでしか出せないのだという。
孫社長は、クラウドの利用を例に挙げ、これらのサービスに欠かせないのが、モバイルインターネットの通信速度であると指摘。写真や動画、さまざまなデータをネットワークにアップすれば、手元の端末でどこででも閲覧できるというクラウドの使い方において、「速度が重要で、超高速化、大容量化が欠かせない」と強調する。
今後2年間で1兆円規模の投資を行い、基地局の整備を計画しているソフトバンクだが、この施策で設置したバックボーン、鉄塔などの土木インフラはAXGPでも共有できるという。よって、ソフトバンクではAXGPを推進し、設備投資を行う方針。具体的な投資額は明らかにしなかったが、「これから数千億円単位の投資を継続して行う」と孫社長は説明する。