既報の通りKDDIは26日、2011年秋冬モデルの携帯電話の新製品を発表した。発表会で田中孝司社長は、「ワクワク感を伝えるため、これからのauのコンセプトは"未来は、選べる"」と語り、新端末と新サービスで「auの復活」(田中社長)を目指していく考えを示した。

KDDIの田中孝司社長

「未来は、選べる」ワクワク感

田中社長は昨年12月の就任以来、「auの復活」を掲げてさまざまな戦略を進めてきた。「お客さまサイドにたって、ワクワク感を感じてもらえるような商品を出していきたい」という観点から製品を開発してきたと話す。実際、田中社長はこれまでの会見でも繰り返し「ワクワク感」という表現を使い、新端末やサービスを発表してきた。

これまで、スマートフォンに従来のフィーチャーフォンの機能であるおサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信、緊急地震速報などを備えたシャープの「IS03」では、「スマートフォンでもケータイ機能が欲しいという要望に応える」ことを目指した。

おなじみとなった田中社長の「ワクワク感」

2010年秋冬モデルだったIS03。フィーチャーフォンの機能を盛り込んだ

その後、「自分に合ったものを選びたいという思いも強い」とみて、今夏モデルではグローバルで人気の「Xperia」シリーズ、防塵防水・耐衝撃モデル「G'zOne IS11CA」、10キー搭載「AQUOS PHONE IS11SH」など、幅広いラインナップをそろえた。「もっと自分らしい端末が欲しい」という声に対しては、iidaブランドから「INFOBAR」を投入。SNSやOfficeをもっと使いたい、最新モデルを使いたいという声に対してWindows Phone 7.5搭載の「IS12T」を準備。「スマートフォンを選べるという思いがワクワク感につながるのではないか」という視点からラインナップを強化してきた。

11年になり、スマートフォンのラインナップを強化

INFOBARブランドのスマートフォンも投入

さらに、ユーザーの「サクサク使いたい、機敏に使いたい」という思いに答えるため、年末までに10万カ所にエリアを拡大する公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」を提供。さらに高速通信のモバイルWiMAXを使った「+WiMAX」サービスをスタートし、高速な通信で利用できるようにする。

Windows Phone 7.5端末は、世界で最初のリリースとなった

au Wi-Fi SPOTと+WiMAXで高速通信を実現

その第1弾端末としてWiMAX内蔵スマートフォン「HTC EVO WiMAX」も発売し、テザリングにも対応することで、PCなどの無線LAN機器で通信が行えるようにした。EVO WiMAXユーザーの8割がWiMAXを利用しており、利用者アンケートでは通信速度について82%が満足または非常に満足と答え、テザリング機能についても91%が満足・非常に満足と答えたという。「3Gだけでなく、WiMAX、Wi-Fiとネットワークを選べるようにすることでワクワク感につながるのでは」と田中社長は語る。

HTC EVO WiMAXは通信速度もテザリングも好評

スマートフォンにおけるコミュニケーション機能を強化するため、Skype、jibe、Facebookといったサービスと協業するなどし、取り組みを強化してきたのもこの1年のポイントだ。

コミュニケーション形のサービス強化のために提携などを実施

定額制の音楽配信サービス「LISMO unlimited」は、これまでの楽曲ダウンロード形式の音楽配信とは「違った楽しみ方を提供」してきたとしており、ユーザーも、従来の着うたフル購入経験者は53.7%で、残る46%程度は未経験で、田中社長は「新たな音楽ユーザーが増えた」という点を強調する。音楽配信で楽曲をたくさん購入すると、それだけ多くの支払いが必要になるが、LISMO unlimitedは定額制であり、「(楽曲購入の)バリアを外した」サービスであり、ユーザー1人あたり1日平均26曲も聴いているそうだ。「音楽といえばauという思いがある」という田中社長は、今後もビデオ配信やその他のサービスを強化することで、LISMO unlimitedを展開していきたい考えを示す。

LISMO unlimitedでは新規ユーザーを獲得し、1日平均の利用楽曲数も26曲と「驚き」

音楽だけでなく、映像やそれ以外のサービスも拡大していく

コミュニケーションや音楽など、「楽しみ方を選べるのもワクワク感が伝わる」と、田中社長はワクワク感を伝えるための施策を紹介してきた上で、「ユーザーの欲しい未来をかなえたいというのが(KDDI)社員の思い」と強調。「お客さまだけでなく、社員の心の中にもワクワク感が生まれる、それを形にしてきた1年だった」と振り返る。

そして田中社長は、「これからのauのコンセプトは、"未来は、選べる"」と話す。これまでフィーチャーフォンでのキャリアのビジネスモデルは垂直モデルで、「これを使って下さいと、選択の余地をあまり示せていなかった」という。それに対して、「これからの未来はこうなると想像してもらい、選べる形で提供、提案できれば」という方針だ。

「個人個人で、こういう世界が来ればいいという思いは違う。提供側の論理を押し付けるのではなく、お客さまが自ら選ぶ、そんな時代に来ているのでは」と田中社長。「欲しい未来を選べる自由」をユーザーに提供していきたい考えだ。

「未来は選べる」をコンセプトに、復活を狙う

田中社長は、低迷する毎月の純増数に対して、「この1年間頑張ってきた指標として現れてくるのはMNPの差」と指摘。他社からauに移転する流入数に対して、他社に移行する流出数が多かったのが、「何とか流出が止まるぐらいまで持ってこれた」という認識だ。純増数増加のためにはモバイル無線LANルーターやフォトフレームなど、「下半期はMNPとは関係ない非携帯型端末も頑張っていく」が、出遅れたスマートフォンでは「モメンタム(勢い)を示せた」という。