三洋電機は9月16日、同社のライスブレッドクッカー「GOPAN」の累計出荷台数15万台を記念して、「GOPAN」で作った玄米パンを活用して、健康への関心の高い中高年層向け食育活動「玄米パンで健康を学ぼう! おとなのお米教室」を開催した。

今回のお米教室は、日本人の食生活全般において課題となっている「脂質の過剰摂取」や「朝食欠食」などに向き合い、乳幼児から高齢者までの食育推進活動を実施している国立病院機構 東京医療センター 管理栄養士である伊藤友香氏と協力し、食物繊維や鉄分などの栄養素を多く含む玄米パンを気軽に作れるGOPANの特色を生かし、どう生活習慣病を予防していくか、という話題を中心に行われた。

GOPANのコンセプトは、「食料自給率の向上(米の消費拡大)」「食育」「地産地消」の3つに貢献することで、日本人の食を見直そうというもの。特に現代日本は、朝食を食べない、いわゆる朝食欠食が約1700万人(男性全体の14%、女性全体の10%、2009年度)おり、その一方、コメの消費減に伴う炭水化物摂取の減少と食の欧風化による脂質摂取の増加に伴って、生活習慣病ならびにその疑いがある人の割合が確実に増えている状況にある。

そうした状況を少しでも改善したいという想いが今回のおとなのお米教室であるが、この時期に開催したのは「食欲の秋に向けて、色々と食べたくなる前に実施したかったため」としている。

生活習慣病は、長年の生活習慣が重なり合って生じる疾病で、高血圧、肥満、糖尿病、心臓病、脂質異常症、脳卒中などの症状を引き起こす。この内、高血圧は高齢者の医療費のトップ(32.6%)で、40~74歳の男性の約6割、女性でも約4割が当てはまるという。

長年の生活習慣によって引き起こされる生活習慣病。自分は大丈夫と思っていても、存外、高血圧だったり肥満だったりする人も多い

また、脂質異常症は、境界型を含め、有病者は2200万人いると推定されている。男性は30~50代で増え始め、50代ではおよそ2人に1人、女性も50代で増え始め、60代ではおよそ3人に1人の割合となる。

さらに、糖尿病はすでに発症している人ではなく、「強く疑われる人」でも890万人。「可能性を否定できない人」になると1320万人おり、強く疑われる人の約4割は未治療という状態となっている。

厚生労働省や農林水産省などがそうした予防のための食生活指針を出しているが、その基本はご飯などの穀類と野菜をしっかり採り、塩分を控えて、地産地消を中心に時には新しい料理への挑戦を行いつつ、無駄や廃棄を少なくしようというもの。

厚労省などが作製した新しい食生活指針

具体的に、どの程度食べれば良いのかは適正体重と1日に必要なエネルギー量から伺うことができる。適正体重の計算式は

身長(m)×身長(m)×22=適正体重(kg)

であり、この「22」という値は、BMI(Body mass index)で、もっとも病気にかかりにくいと言われる値(標準値)を意味しており、その求め方は

BMI=体重(kg)÷身長(m)2

となる。一方の1日に必要なエネルギーの計算式は

推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル

BMIの求め方

標準体重の求め方

推定エネルギー必要量の求め方

で表される。身体活動レベルは、1.5が1日中ほとんど動かない人、1.75が家事や軽いスポーツしている人、通勤で歩くことがある人もここにあてはまる。そして2.0は積極的にスポーツやジムで体を動かしている人を当てはめ、基礎代謝量は性別と年齢によって変わってくる(以下の表を参照)。

年齢/性別 男性 女性
18-29歳 1510 1120
30-49歳 1530 1150
50-69歳 1400 1110
70歳以上 1280 1010

講演した伊藤氏は、「主食と主采、副菜、そして果物や穀類などを組み合わせながら、色々な食べ物をバランスよく食べることが重要」と指摘。塩分と油を控えめにし、食物繊維を採ることを進める。

また、「ダイエットのために主食を控えておかずを食べる人がいるが、管理栄養士としてはおすすめしない。主食、特にご飯は脂質が少なく、また白米や玄米だけであれば塩分も入っていない。逆に味のついているものや脂質の多いものでお腹を満たそうと思うと、脂質過多などの症状になりやすい」と、主食抜きダイエットには否定的な見解を示す。

1人ひとりに即した1日の適切なエネルギー量の摂取を心がけることが重要となってくる

さらに、「パンには塩分が含まれているが、GOPANの玄米パンは塩分控えめなので、減塩にも向いている。バランスよく、きのこ、果物、こんにゃくなども取ってもらいたいが、一番重要なのは、野菜を毎食取ってもらいたいということ。特に食物繊維の多いのが良い」とする。 食物繊維には、不溶性と水溶性の2種類があり、不溶性は穀類、野菜、豆類に含まれ便秘予防などに効果がある。一方の水溶性は果物や海藻類、こんにゃくなどに含まれ、コレステロールや糖質の吸収を妨げ、腸内環境を改善する効果があるという。必要な量は男性で19g以上/日、女性でも17g以上/日と言われており、白米では1食で0.45gだが玄米パンは一枚で1.3gとかなり多めに含まれている。

また、食物繊維の摂取と一緒に食塩や脂肪を控えめにすることにも気をつけるべきとし、「栄養指導で話しているのは漬物や汁物の量を気を付け、1日の合計を10g以下に抑えること。ラーメンを汁まで飲めば6g、そばもそばつゆに6gくらい入っている。味気ない場合は酸味、酢やレモンを使うことで薄味でもいける。また、練り物であるかまぼこなどにも以外に塩分が含まれており、食べるときはほかのものを薄味にすると良い」とするほか、しょうゆもそのまま食材に垂らすのではなく、しょうゆ皿を使うことで、塩分を減らすなど、工夫をしながら、全体でバランス良く塩分を調節することが減塩への一歩とした。

食塩を控える方法も色々とある

食物繊維を摂るにはやはり野菜を食べることが重要になってくる

さらに、魚介類を食べることも推奨された。「脂肪には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある。肉や乳製品は飽和脂肪酸で血液中の脂肪を増加させるが、魚や野菜の油は不飽和脂肪酸で、血液中の脂肪を減少させる効果がある。しかし、肉は食べてはいけないわけではなく、逆に飽和脂肪酸が少なすぎると脳出血の割合が増えるといわれているので、肉を食べつつ魚の割合を増やしてもらえると良い。心筋梗塞の予防のためには魚を1日90g(大き目の切り身1切れ程度)とりましょうと言われている」と、魚介系も食べていくことで、より健康的になれるとした。

脂質の供給元は肉やドレッシングなどの油脂、調味料が約半数を占めるということは、逆にそれらを工夫すればよいということになる

肉類の摂取量が微妙に増加傾向なのに対し、魚介系は年々右肩下がりというのが現在の日本の食の様相となっている

なお、今回、参加者には三洋電機が、女性社員が全員管理栄養士というファンデリーと協力して作製した「GOPAN 玄米パン毎日献立レシピ」を元にした料理が配られた。

レシピは三洋電機の特設サイトでも閲覧することが可能だ。いずれも料理も、手間暇かけて作るのではなく、忙しい朝でも手軽に作れるように8品目以下で作ることができ、また、肥満で気になるコレステロールも1食当たり、10~30mg程度に抑えた健康レシピとなっている。

こうした料理を口にした会場の参加者からは、GOPAN用の素材をセットにして販売してもらいたいという声も複数聞かれた。実際に、ホームベーカリーでふっくらとしたおいしいパンを焼こうと思うと、それぞれの材料をきっちりと計測して生地を作る必要がある。炊飯器のように適当に目盛りを上回ったり、下回ってもそれなりにできる、というものではない。その点について三洋電機では、「そうした定型的に作れるようにするのは、今後の課題」としており、「GOPANは定型のレシピを提供するのではなく、自分で色々を混ぜて楽しんでもらうスタイルを押している。利便性を考えると、確かにそういうものが欲しくなるが、是非、色々な味を試してもらいたい」と、様々なパン作りを楽しんでもらい、GOPANのコミュニティを自由に作っていってもらいたいとしている。

玄米パン毎日献立レシピより「朝からファイバーチャージ 和食 ごぱん」。鉄分5.4mg、食物繊維7.9g、塩分2.7gと手軽でヘルシー

同じく玄米パン毎日献立レシピより「鉄分たっぷり! 簡単朝ごぱん」。こちらは鉄分8.9mg、食物繊維6.5g、塩分2.8gと鉄分が多め

同じく玄米パン毎日献立レシピより「ヘルシー 朝ごぱんディップ」。こちらはほかの2品と趣きが異なりディップ形式のため、一概に鉄分や食物繊維の量がいえないが、玄米パン1枚(100g)+各ディップで換算すると、鉄分は2.0mg以上、食物繊維3.3g以上、食塩相当量1.8g未満となる。なお、レシピにはこれらのほかのレシピも多数掲載されているので、気になる人が一度読んでみることをおススメしたい

確かに、今回の教室で出された玄米パンは玄米130gと白米90gを足したものとなっているが、これは玄米だけだとかなり硬くなってしまうためとのこと。逆に言えば、そういうパンが作りたいと思えば、玄米を多くすれば良いし、精米機を活用すれば9分づきや7分づき、5分づき、3分づきといった精米度合いを自宅ででも手軽にできるため、そうした米を用いて作っても良いだろう。

今回の教室で出された玄米パンは玄米130g、白米90g、砂糖16g、塩4g、油脂10g、小麦グルテン50g、ドライイースト3gの分量。ざっくりこんなもの、と量を適当に量って作ってしまうと、しぼんでしまったり、もちもち感が出なかったりするので、おいしいパンを焼きたいというのであれば、やはりしっかりと量を量ることは必要条件になるだろう

また、パン作りにはバターやマーガリン、ショートニングなどが一般的に用いられるが、動物性油脂だったりトランス脂肪酸が気になったりする人もいると思う。そうしたことが気になる人は、それらをオリーブオイルに変えて、さらにヘルシーに、といったことも自己責任においては可能だ(機器の安全上、三洋電機ではそうした液体の使用は一切保証していない)。実を言うと、拙宅にもGOPANの1世代前の同社のホームベーカリーがあり、実際にオリーブオイルを使って焼いたこともあるが、やはり量の加減が難しく、失敗も多かった。しかし、そうした試行錯誤もパン作りの醍醐味と言えるだろう。

厚労省などが出している新しい食生活の指針にも「食事を楽しみましょう」と記載されているが、作るときから楽しんで、自分で作ったものをしっかりと食べることが健康への第一歩となるはずで、丁度この時期は食欲の秋、それに併せて健康に食べることを意識することは、これまでの自分の食生活を振り返る意味でも良い機会になるだろう。