9月13日(現地時間)に、米国アナハイム市でBuild Windowsが開催。初日の基調講演で、次期WindowsであるWindows 8(仮称)が正式に公開された。(開幕前日イベントの記事はこちら)

基調講演を行ったのは、開発を担当するスティーブン・シノフスキー氏(Windows & Windows Live担当社長)。まずは、Windows 7の状況説明から講演を始めた。Windows 7は、4億5千万コピーが販売され、5億4千2百万人がWindows Liveを利用しているという。

WindowsやWindows Liveの開発を担当しているスティーブン・シノフスキー氏

マイクロソフトの開発ツールであるExpression Blend 5では、HTML+CSSもXAMLと同じようにビジュアル編集することが可能になった。また、Metro Styleに対応しており、Metro Styleのメニューなども追加することが可能だ

そしてWindows 8とは、Windowsを「チップセット」から離れ「新しい可能性、シナリオ、フォームファクター」に「再考」(Reimagines)するものだとした。Windows 8は、x86とx64そして、ARMプロセッサに対応する。これが「チップセットから」という意味だろう。そして、Metro Styleのような新しいアプリケーション環境、タブレットというフォームファクターに対応したものにWindowsを作り替えるという意味だと思われる。「再考」(Reimagines)と表現が控えめなのは、従来からのWindowsとの互換性などを保ちつつ行うもので、ゼロから作り替えるわけではないからだろう。

Windows 8では、Windows 7で動作していたものがすべて動く。また、チップセットから離れ、新しい機能やシナリオ、形を再びイメージするとしている

Windowsの「Regimagining」とは、新しい経験、Metro Styleプラットフォームとツール、ハードウェア、そしてクラウドサービスだという

そして、次にシノフスキー氏が見せたのは、タスクマネージャだ。同じ2台のマシンにWindows 7とWindows 8を乗せ、起動直後のタスクマネージャを見せる。Windows 8は、この時点で、メモリを281メガバイトしか占有していない。システム内部の改良や起動するサービスを修正したことにより、起動するプロセスがウィンドウズ7の32から29へと減っている。タブレット対応などの目を引く部分が取りざたされるが、地道に内部などの改良も進んでいるようだ。

Windows 8では、内部的な改良によりシステム自体のメモリフットプリントが小さくなった

Windows 8の「オフ」とは、Connected Stund-byという状態で、スタンバイ状態になりながら、ときどきネットワークのアクセスだけをチェックするものになる。写真は、消費電力のグラフで、左側で短時間上昇しているのがネットワークアクセス。右側は電源をオンにしてすぐオフにしたもの。スタンバイであるため、短時間での立ち上がりが可能だ

そして、Windows 8のGUIのデモが行われた。デモに使われたのは、配布されているDeveloper Previewよりもバージョンが進んだもので、おそらく、β版の初期バージョンではないかと思われる。Windowsの開発は、

マイルストーン1~3 6カ月単位
β版 約3カ月
ベータテストおよびRC版開発

というスケジュールで進み、現在マイルストーン3の開発が終了した段階だと思われる。今回配布が開始されたDeveloper Previewは、マイルストーン3版であり、基調講演でデモされたものとはちがっている部分がある。たとえば、スタートスクリーンの「セマンティックズーム」と呼ばれる2本指を使った拡大、縮小操作は、Developer Previewでは動作しない。

なお、このマイルストーン3は、今年6月に公開されたビデオのものともやはりちがっている。6月の時点では、WindowsデスクトップのスタートボタンがWindows 7同様のものになっていたが、Developer Preview版では、デザインが変わり、機能もホームスクリーンへ移動のみの単純なボタンとなっている。

スタートボタンの機能がかわったため、アプリケーションの起動はスタート画面から検索機能を呼び出し、そこからアプリのリストを表示させて行う。ただし、デスクトップを含むすべてのアプリケーションは、スタート画面にタイルとしてピン留めが可能であり、利用頻度の高いアプリケーションの呼び出しが手間になるようなことはない。

スタート画面は、そういう意味では、従来のスタートボタンで表示されるメニューに相当し、ユーザーが自由に配置でき、グループ化も可能なタイルにより、アプリケーションを起動するという役割を果たす。スタートメニューのように履歴による登録はないが、タイルは、ガジェット的な機能を持ち、アプリケーション側から更新が可能であるため、最新情報や要約などを表示させることが可能だ。

さて、前のレポートにも書いたようにWindows 8のアプリケーションは、Windowsデスクトップ上で動く従来からのアプリケーションである「Desktopアプリケーション」と、全画面を占有して動作する新しい「Metro Styleアプリケーション」の大きく2種類がある。

また、Windows 8は、マウスとキーボードという従来の操作方法でも利用できるがタッチ操作が第一となっており、基本的にすべての操作がタッチで行えるようになっていて、同じことはすべてマウスとキーボードでも行える。このため、タッチパネルのないデスクトップマシンでも、基本的な操作はすべて可能だ。

Windows 8のタッチインターフェースでは、タッチパネル自体に上下左右に段差のないものが要求される。各辺の最初のドットを犬種することでタスク切り替えなどのジェスチャーを認識するという

しかし、起動直後の画面がスタート画面になるなど、これまでとは大きくちがって「見える」部分がある。

また、逆に従来のデスクトップで動作するアプリケーションは、従来のスタイルのままであり、小さなボタンやボーダーをタッチでのみ操作することには、少し困難があり、マウス、キーボードがまったく不要というわけでもない。

そして、シノフスキー氏は、Windows 8とクラウドの解説に入った。Windows 8では、Windows Liveをクラウドサービスとして大きく利用する。たとえば、アプリケーションは、基本的な設定などをWindows Live側に保存することができ、同じWindows Live IDを使えば、どのPCでも同じ設定に従って動作できる。たとえば、ゲームならば、クリアしたレベルの情報が共有されてどのマシンでも続きを始めることができるなどだ。Windows 8自体もこれを利用しており、ユーザータイルとよばれるユーザー自身を表す画像は、Windows Live側に保存されて、どのマシンでも同じ画像が利用できる。

Windows 8では、ファイルの選択は、従来型のようにフォルダをブラウズしていくのではなく、ファイルタイプを指定した検索などで、対象ファイルの一覧を作り、その中で目的のファイルを選択する。このとき、Skydriveのようなインターネット側のストレージや、同じWindows 8が動き、同じWindows Live IDが設定されている他のマシンなどもローカルハードディスク上のファイルと同じように扱うことが可能だ。さすがに1つのリストでは表示しないが、フォルダのような扱いで、インターネット上のストレージサービスや他のマシンのファイルなどを一覧表示させることが可能だ。

ファイルタイプを指定した検索などで、対象ファイルの一覧を作り、その中で目的のファイルを選択する

マイクロソフトは、このためにSkydriveのAPIを整備し、おそらくは、他のストレージサービスのためのインターフェースを用意することになると思われる。

また、Windows Live側は、メール、カレンダー、フォト、ピープルというMetro Styleアプリケーションを提供する予定で、これらは、すべてデータをWindows Live側に配置するもので、やはりどのマシンで利用しても同じLive IDであれば、データの同期などの心配をすることなく利用可能だ。

そして、このWindows Liveの機能は、Windows Phone 7からも利用できるわけで、Windows 8が登場することで、PCとクラウド、携帯の連携がすべてマイクロソフトで一括して行えるようになる。さらにいえば、Windows Azureを使えば、開発者は、クラウドサービスを独自に構築し、アプリケーションをWindows 8とWindows Phone 7に提供することが可能だ。実際、Sliverlightのアプリケーションは、そのままでもWindows 8のIE10の上で動作するが、簡単な書き換えでMetro Style環境上で動作させることが可能だ。これにより、Windows 8とWindows Phone 7間でのアプリケーションのコード共有が簡単に行える。

Googleのサービスが、すべてGoogleで完結することをめざしているものの、プラットフォームとしてはAndroidが普及しつつあるに過ぎず、マイクロソフトは、同じようなクラウドによる一括サービスの提供をWinows8で完成させることになる。