日本航空が9月1日から開始した新サービス「JAL CAFE LINES」。国内線・国際線の全路線、しかもクラスを問わず無料で高品質なコーヒーを提供するといったものだ。世界中のコーヒー農園での開発に携わってきたコーヒーハンター・川島良彰氏やコーヒーの焙煎・抽出に関する研究をしている石脇智広氏をアドバイザーとして迎え、新サービスを実現した。
国際線ファーストクラスはフレンチプレスで
提供するコーヒーはクラスによって異なる。まず国際線ファーストクラスは、なんとフレンチプレスで提供。川島氏が厳選した最高農園の特級畑で収穫する完熟豆のみに限定。希少なコーヒーを季節ごとにかえ、豆の味わいがストレートに楽しめるフレンチプレスで抽出する。9月はエル・サルバドル産「セルバ・ネグラ」を使用する。
国際線エグゼクティブクラスと国内線ファーストクラスでは、市場に出回っていない希少性の高いコーヒー豆や独自の取り組みでコーヒー栽培をしている生産者のコーヒーといったユニークな豆を扱う。9月はエル・サルバドル産「ブルボン・スペシャル」となる。
プレミアムエコノミーとエコノミークラスではアラビカ種100%のコーヒーを、クラスJと普通席では、アラビカ種100%のインスタントコーヒーを提供する。また、ハワイ線ではマウイ産のアラビカ種モカコーヒーに決定。
さらに9月末までは、国内線全クラスでアラビカ種100%のアイスコーヒーを提供する。
機内ドリンク有償化の話も
コーヒー通ならわかると思うが、これらの高品質なコーヒーを無料で提供するとは大変驚きである。実際、国内線におけるドリンクの有償化に付いては日本航空社内においても議論の遡上に上がっていたという。
「今年4月から新生JALとしてスタートするに際し、プレミアムエアラインとして最高のサービスお客様に提供することを方針として打ち出しました。そういったエアラインとなることを約束させていただいている中、『お客様をもてなすサービスが有償であってよいはずがない』という結論に至り、JALの機内ドリンクサービスはすべて無償としています」(日本航空マーケティング本部商品・サービス開発部マネージャー 田中誠二氏)。
"おいしいコーヒー"を提供するためのハードル
とはいえ、機内でのコーヒー提供には様々な障害があった。まずは抽出に使用する湯の温度。ギャレーで用意できる湯は85℃。「抽出に最適な湯の温度は85℃~90℃です。問題クリアのように思われますが、給湯器からの湯もずっと85℃をキープできるわけではありません。そのため、温度が低い出はじめの湯は使わないなど、85℃の湯を使えるよう工夫をしています」と商品開発に携わった川島氏。
また、適温での提供ができるよう「抽出後30分で廃棄」という基本ルールも新たに設けた。国際線ファーストクラスで使用するフレンチプレスは、前もって湯煎で温めておくといった手間もかけている。
厳選されたコーヒー豆も、最適な手法の抽出がなされてこそ「おいしい最高の一杯」となるわけである。
「言い訳をせず、とにかくお客様の満足度を満たすため、世界最高のサービスを」。そんな全社員の想いがあってこそ誕生した、今回の新サービスなのだろう。