「第35回モントリオール世界映画祭」で審査員特別グランプリを受賞した『わが母の記』(2012年公開)の受賞報告会見が1日、京都・大江能楽堂で行われ、原田眞人監督と主演の役所広司が出席した。
『わが母の記』の受賞報告会見に出席した原田眞人監督(右)と役所広司 拡大画像を見る |
映画祭の授賞式に出席していた、同作の編集を担当した長男の原田遊人からメールで報を受けたという原田監督は「『審査員特別賞ゲット』と書いてあるのですが、ピンとこなかったんです。そうしたら、樹木さんから電話が入って『喜びなさいよ! 大きい賞ですよ。(紹介されたのが)最後から2番目ですよ』と言われて」と受賞を知った時を振り返り、「一番気になっていたのが観客の反応だったのですが、素晴らしかったという話を聞いた時点で、涙が出てきました」と万感の思いを語った。
同作は、小説家の伊上が父の死をきっかけに、幼少期において共に暮らさなかった母・八重(樹木)の面倒を見ることになり、家族に支えられながら向き合っていく物語。伊上を演じた役所は「世界中どこの国に行っても、母親に対する思いというのは、きっと同じだろうと思います。言葉は通じなくても母親を思う気持ちと、母親と心が通じ合う喜びというのは、きっと世界的に共感していただけるところだと思っていました」と受賞を喜んだ。
また、役所は「最近大人も楽しめる映画が少なくなっていると思います。映画はビジネスですから、たくさんの人にきてもらって、ヒットして、ビジネスとして成功しなければならないのですが、やはりインスタントものですぐおいしいものといったものではなくて、しっかり噛みしめてじんわり深いもの、50年後に見ても楽しめる映画も作り続けなくては」と持論を展開。「この映画は、監督が5年前から企画をされていて、ご自身の出身地・沼津を舞台にしているのでさらに思い入れも深いと思います。こんな作品をつくっていかなくてはならないと思います」と力を込めていた。