8月29日、ダイソンは同社独自のラジアルルートサイクロンテクノロジーを搭載した掃除機の新モデル『DC36』を発表した。同日行われた発表会では東京国立博物館 法隆寺宝物館を会場に、開発者であるジェームズ・ダイソン氏によるプレゼンテーションが行われた。
急な方向転換でも"転ばない"、滑らかな動きを実現
登壇したダイソン氏が始めに掲げたのは、大小の円筒形の部品。大きい方は他社製の最新型掃除機に使用されているもの。小さい方は同社が開発したもので、氏は「小さいけれども性能は抜群」と説明。非常に効率が高く軽量で、回転数は1分間に11万回転にもなるという。
しかし今回発表される新機種の最も大きな特徴は別にある。氏が次に取り上げたのは、黒っぽい球のようなもの。これにはモーターや排気口、電源コードの収納部など、掃除機を構成する主要な部分が全て収められている。この機種のために新たに開発された「Ballテクノロジー」によるモジュールだ。
これにより、従来の車輪付きの掃除機ではできなかった、なめらかな動きを実現。本体を持ち上げなくても、ハンドルで引いた方へ思い通りにコントロールすることが可能だ。回転半径が小さいため、角を曲がったり、急な方向転換をしたりするときもスムーズに動く。ここが同機種の大きなポイントのひとつだ。
サイクロン技術もパワーアップ
同社の掃除機といえばサイクロンテクノロジーだが、その技術は絶え間なく改善されている。ダイソン氏は「きちんとホコリを分離できないと、目詰まりをおこしてし、それによって吸引力が低下してしまう」と述べ、その分離性能の他社比較をグラフで示した。グラフは0.54ミクロンの微細なチリを対象にしたもの。アレルギーの原因となるカビ胞子の約1/10ほどの大きさだ。他社製品が約26~60%であるのに対し、ダイソンは99.9%の性能を示している
新しいラジアルルートサイクロン技術では、12の小さなサイクロンを搭載。空気の経路を再設計し、気流の効率を改善することで微細なチリの分離性能をより強化しているという。
微細なホコリを床に残さないヘッド
最後に氏が取り上げたのは、掃除機のヘッド部分。一般的に掃除機のヘッドは床面との摩擦により静電気が発生することで、細かなホコリを吸い取りきれず床に残してしまう場合がある。そのため、同機種のヘッドには、カーペットなどから効率よくホコリを吸い取るためのナイロン製ブラシと、静電気を押さえるために導電性のカーボンファイバー製ブラシの2種類を搭載した。
今回発売されるのはこのヘッド部分の違いによる3モデル。サイクロンの部分がオレンジ色の「タービンヘッドタイプ」は、ヘッドが空気の力で回転することで高い集塵性能を発揮。同じく紫色の「モーターヘッドタイプ」は専用のモーターで回転することでカーペットに入り込んだホコリも強力に掻き出すことができる。青いものはこれにペット用のグルーミングモードの付いた「モーターヘッド ペットケア」となっている。
日本のユーザーは「エキサイティング」
26年前から度々来日しているというダイソン氏は、「日本のお客様に対してモノをデザインするのは私にとって大きな喜びであります」と言う。「日本のお客様は技術を高く評価し、ひとつの製品にたくさんの最先端の技術を集約することを喜んでくれます。私にとって(日本のユーザーは)デザインする上で最もエキサイティングな人々と言えます」と述べ、今後もさらに技術を生み出していきたい意向を示した。
写真で見る『DC36』
Ballテクノロジーにより、パワフルながらコンパクトなサイズを実現。また、全てをここに集約したことで重さが集中し、重心のバランスが良いため、本体が転ぶことがない |
本体の中心を軸にしたステアリング構造により、小さい回転半径でも動かしたい方向にスムーズに追従する |
【動画1】本体重量は約4kgだが、ボール型筐体による低い重心とスムーズな操作性で、重さを感じさせない動き。動きの"軽さ"は軽量化によってのみもたらされるのではない
【動画2】ヘッド部分は球形の「V-Ballテクノロジー」で広い角度に対応。ハンドルを向けた方向に滑らかに進む