2011年5月7日に公開され、全国でロングランヒットを続ける新海誠監督の最新作『星を追う子ども』だが、このたび都内での再々上映がスタート。8月20日(土)には東京・吉祥寺バウスシアターにて、再々上映御礼イベントとして新海監督による舞台挨拶が行われた。

今回の舞台挨拶には、新海監督のほか、ゲストとして『星を追う子ども』の主題歌「Hello Goodbye & Hello」を手掛けたシンガーソングライターの熊木杏里が登場した。現在、10月5日発売予定のミニアルバム「and...Life」を制作中という熊木だが、アルバムに「Hello Goodbye & Hello」も収録されると聞いた新海監督は、「入れていただいてありがとうございます」とまずは礼を述べる。

舞台挨拶に登場した新海誠監督(左)と熊木杏里(右)

舞台挨拶のため韓国を訪問していた新海監督は、当日の夕方に羽田に戻ったばかりという強行スケジュール。しかも、翌日からはトルコ、さらにそのあと香港で舞台挨拶を行い、9月3日に東京・大森でふたたび舞台挨拶を行うという日程を聞き、熊木をはじめ、会場全体から驚きの声が上がる。

そして、韓国での舞台挨拶の様子を紹介する新海監督。非常に観客の反応が良かったとのことだが、「舞台挨拶の後にお客さんと話しをしていたら、得意気にスマートフォンを出してきて、『Hello Goodbye & Hello』を入れていますよって言って聴かせてくれるんですよ。まだ韓国では売っていないのにどうやって手に入れたんだろう(笑)」とのエピソードを披露。これには熊木も「たくさんの人に聴いていただけるのはすごく嬉しいんですけど……」と苦笑いを浮かべる。

今回の舞台挨拶には、当日初めて作品を観たという観客が多かったこともあって、まずは新海監督によって、作品の概要や作ろうと思ったきっかけなどが語られ、「自分の内面と、その周りを囲んでいる世界とのバランスをどう描くか」ということに苦労したという新海監督は、「このことは『ほしのこえ』というデビュー作からずっと自分のテーマになっていて、この先も考え続けていかなければいけないこと」とまとめる。

主題歌である「Hello Goodbye & Hello」について、映画を作っていたときよりも、今になってプライベートで聴くようになったという新海監督。当時を振り返り、「今は聴きたくないようなことをおっしゃっていましたね」という熊木に、そのころは熊木の別の曲を聴いていたという新海監督は、「映画の中にいろいろと詰めこまれていたテーマを、熊木さんの『Hello Goodbye & Hello』というその一行が自然に包み込んでくれていて、それを聴いているだけで、映画を観た後のいろいろな気持ちが、こんな風にくるまれて、整理されていくんだということを、最近になってようやく実感を伴って感じることができた」と説明する。

その説明に「作品と少し離れて、お客さんとしても観られるようになったのでは?」という熊木に、「そうなのかもしれません」と同意する新海監督。ただし、映画を観た人からの「曲だけを聴いても泣ける」という感想に対しては、「うれしいですね」と喜びを見せつつも、「本当は、映画も一緒に観てくれよと思うんですけど(笑)」と複雑な表情を浮かべた。

熊木が手にしているのは、韓国で配られたという『星を追う子ども』のうちわ

ここでは、舞台挨拶の最後に語られた2人からのメッセージを紹介しておこう。

熊木杏里「まだ映画をご覧になったばかりで、きっとこの曲に対しても、いろいろな気持ちが渦巻いていると思うのですが、(『星を追う子ども』の)DVDが11月25日に発売されますし、その前に私のアルバムも出ますので(笑)、良かったら、そこでもう一度『Hello Goodbye & Hello』を吟味して聴いていただいて、これからも応援してください。ありがとうございました」

新海監督「(公開から)3カ月半が経ち、いろいろな気持ちもあるのですが、今日初めて観てくださったという方で、もし気に入ってくださった方がいらっしゃれば、本当にもう幸せです。映画には合う合わないといった好みもありますから、あまり自分の好きな映画じゃなかったなという方がいらっしゃったら、『次、もっと頑張りますので』という風に言うしかないのですが、どちらにしても今日来ていただけたことをすごく嬉しく思います。これまで、たぶん何千人もの人に直接お会いしてきて感じるのは、今日も2回以上観たという方がたくさんいらっしゃいますが、僕は個人的に、映画館に2回同じ作品を観にいったことは一度もないんですね(笑)。ですから、本当に信じられないぐらいうれしくて、メールをいただく中でも、5回観ました、10回観ました、20回観ましたという方がいらっしゃって、それだけで本当に制作者としてはこれ以上望むべくもない幸せな作品になったと思います。商売的にはまだまだこれからこの先も続きますし、制作費をきちんと回収していかなければいけないのですが(笑)、本当のこのような気持ちにしていただけただけで、この作品を作った甲斐があると思いました。ですから、今日も本当に来ていただけて、とてもうれしいです。ありがとうございました」


再々上映御礼イベントとして行われた今回の舞台挨拶だが、9月3日(土)にも、東京・キネカ大森にて、18時00分の回上映終了後に開催される予定となっている。詳細については、『星を追う子ども』の公式サイトならびに劇場HPをチェックしてみよう。

(C)Makoto Shinkai/CMMMY