「ヒートテックは世界中の人々の生活を変えていきます。ヒートテックは本当に良い商品です。インナー1枚で、こんなに暖かくて気持ちいい服が、いままであったでしょうか」。25日の「ヒートテック」共同記者会見の冒頭、ユニクロ代表取締役会長兼社長、柳井正氏はこのように述べた。

今冬の節電にも貢献する「ヒートテック」

ユニクロ・東レ「ヒートテック」共同記者会見に出席した柳井正氏。同商品を手にフォトセッションにのぞんだ

ユニクロと東レが共同開発した機能性ウェア「ヒートテック」は、2003年の発売以降、累計販売枚数はなんと約2億枚! 昨年は8,000万枚を販売し、いまやユニクロの冬の代名詞的存在となった。「ヒートテックは日本の冬、世界の冬を快適にしたと思います」と柳内氏が語ったのもうなずける。

今年は夏以降も引き続き節電を余儀なくされると見込まれ、"ウォームビズ"の観点からも「ヒートテック」に注目が集まる。ユニクロによれば、同商品を着て暖房の温度を1度下げることで、削減される消費電力は1世帯あたり58ワット、1,000万世帯に換算すると58万キロワットとなり、今冬のピーク時の電力不足として見込まれる113万キロワットの約半分に相当するという。

柳井氏も会見の中で、「ヒートテック」を着ることにより、「冬でも薄着でスマートな着こなしができますし、寒い場所でも安心して過ごせます。光熱費も削減できるのではないか」とコメント。「ボーイングがカーボンで飛行機を変えるように、あるいはアップルがスマートフォンで人々の生活を変えたように、ユニクロはヒートテックで生活をより豊かにしたい」と、同商品への思いを語った。

「ヒートテック」着用のコーディネートスタイル(メンズ)

9分袖のヒートテックVネックTに、長袖のVネックカーディガン、ウールノータックパンツのスタイル

9分袖のヒートテッククルーネックTに、長袖のVネックカーディガン、スリムフィットジーンズのスタイル

ヒートテックワッフルクルーネックTの上にフランネルチェックシャツ、ダウンジャケットを着込んだスタイル

「ヒートテック」着用のコーディネートスタイル(ウィメンズ)

ドットのヒートテックブラUネックTに、フリースプルジップジャケット、スキニーフィットのジーンズのスタイル

ヒートテックタートルネックTにプレミアムダウンウルトラライトジャケット、レギンスパンツのスタイル

ボーダーのヒートテッククルーTに、ストレッチテーラードジャケット、スリムフィットチノのスタイル

会場では、「ヒートテック」を着用したコーディネートスタイルもステージに展示。メンズの商品では、今シーズンより発熱・保温といった機能に加えて消臭機能も追加されており、その効果を試すコーナーも設置された。

「ヒートテック」の消臭効果については、東レ繊維加工技術部東京技術室室長、鈴木英俊氏が説明を行った。

臭いの成分に色を付けた液を、「ヒートテック」消臭品と従来品の両方に落とす。「ヒートテック」消臭品のほうは、みるみるうちに無色化していった

「繊維の表面に加工したナノレベルの吸着口によって、汗などの臭いの元を吸着し、中和して消臭します。臭いの成分に着色した液をヒートテックに落としても、液体が付着した直後から無色化していくのがわかります」の言葉通り、「ヒートテック」に付着したピンク色の液は1分と経たずに色落ちしていった。

一方、従来品のほうは数分経ってもピンク色が残ったまま。「ヒートテック」の消臭機能の高さは一目瞭然だった。

東レ代表取締役社長、日覺昭廣氏

ウィメンズの商品では、生地の保湿性を高めるため、天然アミノ酸を多く含むホエイ(乳清)に着目。「この乳清を、独自の製法でレーヨン繊維に練り込むことに成功しました。その結果、従来よりもさらに生地をしっとりと、優しい風合いに仕上げることができました」と鈴木氏は説明した。

記者会見には東レ代表取締役社長、日覺(にっかく)昭廣氏も出席。「機能の追加や風合いの改良などで、ヒートテックはシーズンごとに価値の高い商品へ進化してきました。継続的に商品開発ができるのも、両社の戦略的パートナーシップの下、一体となって取り組んできた成果だと思います」と述べた。

メンズのヒートテッククルーネックT(写真左)と、ウィメンズのヒートテックUネックT(同右)

「ヒートテック」販売店舗の取材会も行われた

同じ創業者として、ジョブズ氏には「ぜひ復帰してもらいたい」

この共同記者会見にて、2011年の「ヒートテック」の目標販売枚数を「1億枚」と発表したのは既報の通り。報道陣との質疑応答では、この販売目標が話題の中心となった。報道陣の中からは、「ここ数年の伸びから見ると、(1億枚という販売目標は)保守的すぎるのでは?」といった声も。

「ヒートテック」販売店舗にてインタビューに応じる柳井氏。会見の後も、柳井氏の周囲には報道陣が殺到した

これに対し、柳井氏は、「日本では多数の店舗を持っていますが、海外ではまだまだ。決して保守的な数字ではないと思います」と返した。

ただし、海外戦略において、「ヒートテックは非常に大きな力になる」と柳井氏は語る。「未来の服として、生活を変える服として、これだけのものは世界の大手を含むどこのSPAも持っていない。表面だけまねることはできても、本質的にはヒートテックに追従することは不可能だと思います」と自信を見せた。

その後の囲み会見では、25日にApple(アップル)のCEO退任を明らかにしたスティーブ・ジョブズ氏に関して、同じ創業者としてコメントを求められる場面も。

「彼は本当の変革者。私が若い頃、『指先にコンピュータを』と言っていて、それを実現できた人だし、産業界を変えたんじゃないかと思います」と柳井氏は語り、「非常に残念。ぜひ復帰してもらいたいですね」とジョブズ氏の退任を惜しんでいた。