前回は、「地震保険」の意外に知られていない仕組みや補償の内容などについて整理してみました。今回は、気になる地震保険の保険料や地震保険料控除、どんな人が地震保険に入ったほうかいいかなどについて、説明します。
気になる地震保険の保険料
地震保険で気になるのは保険料です。これは、建物のある都道府県と建物の構造によって決まります。構造については、木造と鉄筋コンクリート造・鉄骨造等の2区分です。木造であっても耐火構造の場合は、鉄筋コンクリート造り等の保険料が適用されます。また、保険料は建物も家財も同じです。
地震保険料(契約金額100万円当たりの年額)建物のある都道府県 | 建物の構造 | |
---|---|---|
鉄骨・ コンクリート |
木造 | |
岩手・秋田・山形・福島・栃木・群馬・富山・石川・福井・鳥取・ 島根・山口・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島 |
500円 | 1000円 |
北海道・青森・宮城・新潟・長野・岐阜・滋賀・京都・奈良・ 兵庫・岡山・広島・大分・宮崎・沖縄 |
650円 | 1270円 |
香川 | 650円 | 1560円 |
茨城・山梨・愛媛 | 910円 | 1880円 |
埼玉・大阪 | 1050円 | 1880円 |
徳島・高知 | 910円 | 2150円 |
千葉・愛知・三重・和歌山 | 1690円 | 3060円 |
東京・神奈川・静岡 | 1690円 | 3130円 |
都道府県別では、地震の発生率が高く、想定される被害額が大きいところほど保険料が高くなります。東京、神奈川、静岡が高いのは、東海地震の発生確率が高く、人口が密集していて被害額が大きくなると見込まれるからです。建物別では、コンクリート造の建物より損害を受けやすい木造のほうが、保険料が高くなります。
耐震性の高い建物は割引も
耐震性の高い建物は、その程度に応じて、次のような割引があります。
建築年割引:1981年6月1日以降に建てられた建物は10%引き
耐震等級割引:国土交通省などが定める耐震等級を持つ建物は、その等級によって10%、20%、30%引き
免震建築物割引:法律に基づく免震建築物は30%引き
耐震診断割引:自治体による耐震診断または耐震改修によって改正建築基準法の耐震基準を満たす建物は10%引き
ただし、割引を重複して受けることはできません。
保険料が実際にいくらくらいになるかを見てみましょう。
東京都内の木造住宅で、火災保険の保険金額が建物1,500万円、家財1,000万円だとすると、地震保険の契約額は建物750万円、家財500万円が上限となり、この金額で契約すると、建物・家財を合わせて1年分の保険料は約4万円です。建築年割引が適用されれば、約3万5,000円で、火災保険と合わせると7.5~9万円程度となります。
(※地震保険はどこの損害保険会社で加入しても補償内容や保険料は同じですが、火災保険は保険会社によって補償範囲が異なることがあり、保険料にも違いがあります)
「地震保険料控除」とは?
自分の住まいや家財を対象にした地震保険に加入して保険料を払っている場合、地震保険料控除が受けられます。1年間に払った地震保険料が所得税・住民税の対象となる金額から控除され(差し引かれ)て、税金の負担が軽減される仕組みです。
控除額は、所得税の場合、払った保険料が5万円以下ならその金額、5万円超なら一律5万円です。住民税は、払った保険料が5万円以下ならその金額の2分の1、5万円超なら一律2万5,000円です。 地震保険に加入していると、毎年11月ごろに保険会社から「地震保険料控除証明書」が送られてきます。会社員や公務員の場合は、これを勤務先に提出して年末調整で地震保険料控除を受けます。自営業の人などは確定申告のときに手続きします。
「地震保険に入ったほうがいい人」って?
家計にゆとりがあるなら、地震保険に入っておけば安心なのはいうまでもありませんが、東京などの木造住宅だと火災保険と合わせた保険料がかなり高くなるうえ、前回述べたように、地震保険の保険金には上限があって、受けた損害すべてをカバーすることができません。そのため、加入しようかどうしようか迷う人も多いのではないでしょうか。
地震保険の必要性が高いのは、住宅ローンの残高が多い人です。地震で建物が失われ、住まいを新たに建てたり購入したりした場合、二重にローンを抱えることになるからです。
貯蓄の少ない人も、地震保険に入っておけば、万一の場合、保険金を当面の支出や生活再建に充てることができます。
逆に、賃貸住まいの人や、地震で被災しても帰れる実家などがある人は、地震保険の必要性は低いといえます。
まとめ払いや耐震改修もオススメ
地震保険に加入する場合は、保険料を抑える工夫をするとよいでしょう。
上記の割引制度のほか、まとめ払いも有効です。これは、地震保険料を年払いしている場合、2~5年分まとめて払うと保険料が割り引かれる仕組み。例えば、年間保険料が3万円だとすると、3年まとめて払うと1年当たり2,500円、5年まとめると3,300円安くなります。また、火災保険の補償を必要なものに絞ることで保険料を下げ、その分を地震保険の保険料に回すという方法もあります。
地震に備えるなら、保険だけに頼らず、住まいを地震に強くすることも考えましょう。耐震診断を受けて、必要があれば耐震改修工事をしておくと安心です。耐震診断や耐震改修工事に対して補助金を出してくれる自治体もあるので、ぜひ調べてみてください。
執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。