米Appleのモバイル広告担当バイスプレジデントであるAndy Miller氏が同社を離れる計画だという。Miller氏はAppleが2010年初頭に2億7500万ドルで買収を行った米Quattro Wirelessの創業者の1人であり、現在はiOS向けの広告プラットフォーム「iAd」の責任者となっている。現在Appleは顧客獲得のためにiAdの出稿価格を2度にわたり値下げするなどしており、iAdがビジネス上の岐路に差し掛かったなかでの今回の動きとなる。
本件を報じているのはAll Things DigitalのKara Swisher氏で、複数の関係者からの話で判明したという。2006年にQuattro Wirelessを創業したMiller氏は、2010年初頭に2億7,500万ドルでAppleに同社を売却し、同社モバイル広告部門の責任者となった。当時、QuattroのライバルにあたるAdMob買収に意欲を燃やしていたAppleだったが、この取引はGoogleが横入りする形でAdMob買収を成立させたためにご破算となり、結果としてAppleはQuattro買収の道を選んだということになる。なお、このAppleによるQuattro買収を最初にスクープしたのも、今回の件を報じているSwisher氏である。
Swisher氏によれば、Apple退職後のMiller氏は投資顧問会社の米Highland Capitalに移籍する予定だという。Highland Capitalはベンチャー時代のQuattroに投資を行った会社であり、その縁での移籍というわけだ。
責任者を失う形となったiAdだが、デビューから約1年が経過してそのおおよその評価が定まりつつある。最低出稿価格が100万ドルというモバイル広告としては破格の設定でデビューしたiAdだが、単にバナーをクリックするという形態にとどまらない広告スタイルや広告効果の高さを評価する声がある反面、デビュー時の熱狂が薄れるなかで広告主らの利用が伸び悩むという問題に直面した。またApple側のクリエイティブに対する干渉が強いとの意見もあり、これが理由で広告出稿を取りやめたクライアントが複数あることが伝えられている。
最終的には広告単価の高さが利用の伸び悩みにつながっていることが取りざたされるようになり、1年の間に2回の値下げが行われ、現在の広告単価は30万ドルにまで下がっている。とはいえ、デビューの時点で業界他社に比べて「1~2桁は広告単価が異なる」といわれていたiAdであり、この価格でもまだまだ高いという意見は根強い。現状の独自路線を貫くのか、広告単価をさらに引き下げてライバルに対抗するのか、岐路にあることは間違いない。今後Appleが指名するMiller氏に代わる同部門のトップにその采配が委ねられている。