日本マイクロソフトは12日、携帯端末向けOS「Windows Phone 7」の最新版「Windows Phone 7.5(Mango)」の報道関係者向け説明会を開催した。Mango搭載スマートフォンとして、KDDIから「IS12T」が9月以降に発売予定で、国内初のWindows Phone 7搭載端末登場を前に、マイクロソフトが詳細の解説を行った。
Windows Phone 7は、マイクロソフトの携帯端末向けOSの最新版で、従来のWindows Mobileの実質的な後継OSとして開発された。国内では2005年のWindows Mobile 5の時代に搭載スマートフォンが登場しており、スマートフォンOSとしての歴史は長い。
しかし、もともと「PDAから派生したPCのコンパニオンデバイス」(コミュニケーションズ パートナー統括本部長・横井伸好業務執行役員)だったため、iPhone以来のスマートフォンとは「位置づけが異なっていた」(同)。そのため「今の時代に求められるスマートフォンとは何か、機能やUIとは何かを見直して」(同)作られたのがWindows Phone 7だ。一からOSを見直して再設計されているため、従来のWindows Mobileとは互換性がなく、「まったく新しい潮流、新しいジェネレーション」(同)のOSとなっている。
Windows Phone 7の4つの注力ポイント
マイクロソフトがWindows Phone 7開発で注力したポイントは4点だという。1点目は「人を中心としたコミュニケーション」だ。これについて横井氏は、「スマートフォンとはなんなのか」(同)から始まり、スマートフォンは電話であり、電話はコミュニケーションのためにあると定義。1点目では、音声やメール、SNS、IMなどの電話(スマートフォン)で利用できるコミュニケーションツールを効率よく行えるかを検討したという。
昨今のスマートフォンには、スマートフォンの標準の連絡先に加えて、TwitterやFacebook、Skypeなど、アプリごとに連絡先を持っていて、誰かと連絡を取りたいとき、アプリを起動してその人を探して……というアプリ中心の使い方になりがちだ。だが、Windows Phone 7では、OS標準の連絡先としてPeopleハブと呼ばれる機能が搭載されており、これはFacebookやTwitterなどのSNSの連絡先を統合。そこからTwitterなどの投稿やアップロードされた画像を確認できるなどといった機能を搭載したことで、連絡したい人を選んで、そこからTwitterで連絡を取るか、Facebookで連絡をするか、という選択ができるようになっている。これが「人を中心とした」コミュニケーション機能だという。
2点目が常にネットワークにつながっていることを前提にして設計された「最強のクラウド端末」という点。Windows LiveやOffice 365、Xbox Live、SkyDrive、Facebook、Twitterなど、各種クラウドサービスとバックグラウンドで連携することで、オンラインとオフラインのデータを意識しないでシームレスに活用できるようにデザインした。
例えば編集したオフィスファイルの保存先にSkyDriveを選択したり、クラウドに保存した画像もローカルの画像と同様に確認できるといった具合に、「一番重要なのは、クラウドを意識させないこと」(コミニュケーションズ パートナー統括本部 エグゼクティブプロダクトマネージャ 石井大路氏)に注力した。石井氏は、「iモードが一般に普及したのも、インターネットを使っていることを意識させなかったからでは」と指摘。いったん設定してしまえば、クラウドなのか携帯に保存されているのか、意識する必要がないようにしているそうだ。
Windows Phone 7では、データの保存領域はアプリごとに分かれており、アプリ間でファイルを共有することは(画像などの一部ファイルを除いて)できない。そのため、同じファイルを異なるアプリで活用する場合は、クラウドを活用した方が扱いやすいことから、余計にクラウドを意識しないで利用できるコンセプトが重要になっている。
3点目がまったく新しい使いやすさを実現するための新しいユーザーインタフェース。メトロ・デザインと呼ばれる「従来のマイクロソフトとは一線を画すデザインで、まったく新しい、なんの模倣でもないオリジナルのUI」(横井氏)を採用した。縦方向にスクロールするUIは、ライブ・タイルで埋め尽くされており、それぞれのタイルは単にアプリのショートカットとしてだけでなく、リアルタイムに情報が更新され、アプリを起動しなくても情報を確認できるなどの機能を搭載。
独特のメトロ・デザインを採用したUI。縦方向にスライドし、タイルはショートカットだけでなく情報表示の機能も備える |
ロック画面。日本語縦書きに対応しており、この状態からカメラボタン長押しでカメラを起動できる |
Peopleハブなど、一部の機能では選択すると横方向に広がる「パノラマUI」を採用しており、広がりのある横方向に情報を広げてみられるようになっている。また、「軽く、早く、軽快に動くように気を遣った」(横井氏)ことに加え、OSの設計自体で電池寿命にも配慮したという。スマートフォンユーザーからは電池寿命の不満が多いため、軽快に動作しつつ電池寿命が長くなるようにしたそうだ。
ユーザーインタフェースとしては、Webブラウザの存在も重要で、Windows Phone 7では、PCと同じInternet Explorer 9を搭載。レンダリングなどのパフォーマンスは「業界最高峰」(石井氏)であり、HTML5などの最新技術へのサポートも充実しているため、クラウドサービスの利用がより快適に行える。
4点目は、マイクロソフトが得意とするプラットフォームエコシステム。マイクロソフトはOS(プラットフォーム)を開発し、その周辺のベンダーや開発者など、エコシステム全体で成長していくのが、同社の従来からの基本戦略だ。そのため、Windows Phone 7でもエコシステムの拡大に注力する。
その中でもマイクロソフトならではの強みとして横井氏は「開発ツール」を特に強調。「自信を持って言うが、スマートフォンの開発環境として最高のものを用意している」と胸を張る。情報提供やサポートも充実させ、パートナー企業との連携も強化していき、「スマートフォンの時代でもエコシステムを一番大切にして、市場を作り上げていきたい」(同)考えだ。
今回KDDIから発売される「IS12T」は、Windows Phone 7.5(Mango)搭載スマートフォンとしては世界で初めての正式発表となり、このままいけば初めての市場投入ともなり、マイクロソフトはKDDI、開発の富士通東芝モバイルコミュニケーションズとともにイベントなどを開催。「なるべく多くの人に触ってもらいたい。それで軽快さ、心地よさ、人を中心としたコンセプトが理解してもらいたい」(同)としている。