去る8月4日、東京の恵比寿にて、カシオ計算機のフリースタイルデジカメ"EXILIM EX-TR100"の発売記念パーティーが催された。多方面の報道関係者やブロガーなどに向けたイベントで、来場者が会場に入りきれないほどの大盛況ぶりだった。

会場内はすごい人!

会場に着いて受付から会場内を見た瞬間、少し固まってしまった。「中に入れるだろうか…」と思ったくらい、多くの来場者が詰めかけている。「いま一歩、中へお詰め下さい」とアナウンスされるほどだ。会場内には、いろいろなテーマに沿ったEX-TR100の展示スペースがあり、すでに多くの人に囲まれている。

EX-TR100は、液晶部分とレンズ部分、フレーム部分が柔軟に回転し、さまざまな形状と持ち方、設置が行えるコンパクトデジタルカメラ。1,210万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載し、35mm換算で21mmという広角レンズを備える。1,920×1,080ドットのフルHD動画や、240fpsのハイスピードムービーも撮影可能だ。

EX-TR100は東日本大震災の影響で発売を延期していたが、7月22日に発売された

さて、何とか会場の中央付近まで行ったところでパーティーが始まり、最初にカシオ計算機の田中秀和氏(戦略統轄部 SP戦略部 部長)がスピーチ。コンパクトデジカメの市場動向や、コンパクトデジカメに注力するカシオが目指すところ、その中で生まれたEX-TR100について述べた。

カシオ計算機 戦略統轄部 SP戦略部 部長、田中秀和氏

デジカメ業界は単価の下落が大きく、厳しさを増しているという。好転も見込めない中で、ユーザーが価値を感じてくれる、今までにないEXILIMらしい製品を作っていくとした。

ハイスピードEXILIMの系譜

そのベースとなるのが、カシオのハイスピード(HS)技術だ。当初のHS技術は、EXILIMシリーズのEX-F1というモデルに搭載され、毎秒60コマという超高速連写が大きな話題となった。覚えている人、実際にEX-F1を購入した人も多いだろう。ただ、一般ユーザーの声としては、「"今"見えているものをキレイに、失敗せず、速く簡単に撮りたい」、「目に見えるものを忠実に再現してほしい」といった要望が多かったそうだ。

こうした一般ユーザーの要望に応えることは、EXILIMとして大きなこだわりを見せており、現在のHS技術は単純な高速連写というよりも、高速連写を生かした高画質化に向かっている。具体的には、高速連写した複数の画像を合成して1枚の写真として出力することで、夜景をきれいに写したり、画質の劣化を抑えるプレミアムズーム(デジタルズームの一種)、多彩な撮影シーンを自動的に解析して画質を最適化するプレミアムオートといった機能を実現した。ユーザーが1回のシャッターを切ったときに、カメラ内部では高速連写と合成が行われているわけだ。

EX-TR100はフレームと液晶を柔軟に回転させられる

「EXILIMのポリシーはスタイリッシュ&スピーディー。EXILIMがEXILIMであるために、HS技術にはこだわっている。サクサクときれいに撮れる新次元のストレスフリーを目指すだけでなく、ユーザーの想像を超えた驚きや感動を与えられる機能を魅力的に、そして写真を撮ることで生まれるエンターテインメントをしっかり提供していきたい。それが存在価値になるのではないか。

今回のEX-TR100では、動画も静止画も自由自在に撮れるフレキシブルな撮影スタイルと、デザインからも機能的な価値を提供できた。それを実現しているのが、"EXILIMエンジンHS"。既存のデジカメの枠を超えて、コミュニケーションの新しいツールとなるステージを目指したい。コンパクトデジカメとHS技術にこだわったカシオだからこそ、"ハイスピードEXILIMが提供する新しい価値"を提案できる」(田中氏)。

これからは"仲間撮り"

カシオ計算機 戦略統轄部 SP戦略部 QVSP室 室長、鈴木俊之氏

デジカメの"基本パーツ"を再構成したEX-TR100のラフスケッチ

田中氏に続き、カシオ計算機の鈴木俊之氏(戦略統轄部 SP戦略部 QVSP室 室長)が、EX-TR100の機能や特徴を語った。EX-TR100の発想として、カメラを「レンズ」と「液晶」、「フレーム」に分解し、シンプルに再構築したという開発の話には、非常に説得力があった。また、フリースタイルのEX-TR100が実現するさまざまな撮影スタイルと、それらを実際に体験できる会場内の展示コーナーを紹介。どの展示コーナーも多くの来場者で賑わい、EX-TR100のフレームや液晶をあれこれと動かしながら、自由に撮影を楽しんでいた。

EX-TR100のアピールポイントとしては、自分撮り……ではなく"仲間撮り"と、フリーアングルの撮影スタイルが見た目にも分かりやすい。自分撮りできるカメラは多いが、ほとんどは画面内に2~3人を収めるのが精一杯だ。しかし、35mm換算で21mmという広角レンズのEX-TR100なら、自分撮りのスタイルで3~4人を画面に収めることができる。よって、自分撮りではなく仲間撮りなのだ。

身近なものを利用してEX-TR100を固定し、三脚いらずの撮影が可能

35mm換算で21mmという広角レンズによって、自分撮りから仲間撮りへ

フリーアングルの撮影スタイルも、回転する液晶とフレームで実現された機能。ハイアングルでもローアングルでも撮影しやすく、バリアングル液晶のデジカメと似たようなものと考えればよいだろう。さらに、EX-TR100を立てた状態で設置できる三脚いらずのスタンドアップスタイル、フレームを開いて高いところに引っかけておけるハンギングスタイルなどは、今までのデジカメにはなかった斬新な撮影スタイルだ。

フリーアングルの撮影スタイル。ペット目線で写真や動画を撮影してみた。また、ローアングルでスポーツシーンを撮影すると、ぐっと迫力が増す

こうした柔軟な撮影スタイルは、モーションシャッターによって一層便利になっている。モーションシャッターは、EX-TR100のレンズに向かって手を振ったりすると、EX-TR100側で画角内の動きを自動検知して、タイマーでシャッターを切る機能だ。つまり、EX-TR100をどんな風に設置していても、リモコンでセルフタイマーを設定するようなイメージで撮影できる。

「モーションシャッターは撮影をゲーム感覚で楽める機能。液晶モニタを自分側に向けておけばシャッターのタイミングも分かるので、例えばパーティーで大勢が集まった写真を撮るときなど、よい表情で撮影できると思う」(鈴木氏)。

HDRアート展示と、HDRアート撮影の一例。誰でも簡単にアーティスティックな作品が作れ、やみつきになりそう

そのほか、アーティスティックな写真に仕上げるHDRアート、逆光下でもきれいに撮れるデモコーナー、夜景コーナー、スマートフォンなどとの連携コーナーなどが設けられていた。

EX-TR100の楽しさや便利さ、使いやすさは、実際に触れてみればすぐに分かる。逆にいえば、実機を使わないとなかなか実感できない。ぜひ一度、量販店などに足を運んで、EX-TR100を試用してみてはいかがだろうか。

会場内にはEX-TR100の巨大な模型が。液晶部分は大画面モニタになっており、多彩なデモムービーが流れていた