OS X LionがMac App Store経由で正式リリースされたが、Macユーザーの皆さんはすでにインストールされただろうか? 筆者は多少の操作の違いにとまどったものの、思ったほどトラブルが少なかったこともあり、Mac OS Xが完成形に近付いているといった印象を受けた。
さてLionのインストールと既存アプリケーションとの互換性については、1週間を経ずにいくつか問題が指摘されている。今回はこの互換性や各種問題についていくつか話題を紹介しよう。
AdobeのLion対応状況報告はAppleに批判的?
Lionにおける既知の互換性問題としては、Rosetta非搭載によるPowerPCアプリケーションのサポート終了、Javaランタイムの非搭載などが挙げられる。前者については現状で対応策がないが、後者については現時点で同梱提供が行われていないだけなので、AppleのダウンロードページからLion対応版Javaランタイムをダウンロードすればよいようになっている。
また、2010年秋に新型MacBook Airが発売になったときにも話題になったが、LionでもデフォルトではFlashプラグインがインストールされておらず、必要に応じてユーザーが個別にインストールする必要がある。このほか、OSの仕様変更などにより、システムの深いレベルの機能を利用するアプリケーションの多くで動作しない、あるいは障害が発生するといった事態が報告されている。この一部を皮肉混じりに報告しているのがAdobe Systems公式のJody Rodgers氏によるBlog投稿だ。
同氏のBlogは「Lion Tamers」(ライオン調教師)のタイトルで始まっており、「Mac OS X 10.7 (別名、Lion)が世界に放たれたが、勇敢なMac IT管理者のあなたは世間一般からは(少なくとも私からは)ライオンの調教師として認識されていることだろう」と述べ、アップグレードを急ぐユーザーをなだめ、互換性問題に対処しなければならないと説明している。同社のCreative Suiteの互換性情報やAdobe製品の既知の問題をまとめたリンクを紹介している親切なBlogではあるのだが、タイトルから始まった一連の記述スタイルに加え、「Flash Playerはインストールされていない」とまとめの部分で改めて強調するなど、その内容は皮肉を交えたやや毒のあるものとなっている(コメント欄では実際に同氏に噛みついているユーザーがいる)。他愛もない紹介文ではあるのだが、なんとなく書いているときの本人の気持ちが伝わってくるようだ。興味ある方は読んでみていただきたい。
AdobeがLionに対して批判的なのは何もRodgers氏のBlogだけではないようで、先ほどの既知の問題のリンク先にあるFlash Playerの項目にも若干その傾向が出ている。例えばFlash Playerのセクションには下記のような記述がある。
Flash Player may cause higher CPU activity when playing a YouTube video. Possibly related to disabled hardware acceleration.
(YouTubeビデオを再生したとき、Flash PlayerがCPUの高い使用率を引き起こす。これはハードウェアアクセラレーションが無効化されていることに起因する可能性がある)
最新のFlash PlayerではGPUハードウェアアクセラレーションによるCPU負荷の低減機能が盛り込まれているが、Windowsの多くの機種でこの機能が有効な一方で、Mac (Safari)ではFlashのハードウェアアクセラレーションが無効化されているといった指摘は以前からある。Adobeのこのナレッジベース(KB)における既知の問題情報を見る限り、Lionでこの傾向が出ていることになる。
だがAdobeでは後に、この情報を下記の追加情報で修正している。
UPDATE: The final release of Mac OS X Lion (10.7) provides the same support for Flash hardware video acceleration as Mac OS X Snow Leopard (10.6). The previous “Known Issue” suggesting that video hardware acceleration was disabled in Lion was incorrect and based on tests with a pre-release version of Mac OS X Lion that related to only one particular Mac GPU configuration. We continue to work closely with Apple to provide Flash Player users with a high quality experience on Mac computers.
要約すれば、Mac OS Xの10.6と10.7でハードウェアアクセラレーションに関する仕様は変わらず、依然としてLionでもハードウェアアクセアラレーションを利用できるということだ。ここでは、先の問題はLionのプレリリース版を使って限定的なハードウェア条件で使用したために出てきた問題だとして、最後にAdobeとAppleは堅固な協力関係にあることを強調して締めくくっている。実際にOS X Lionの製品版でFlash Playerに関する同種の問題が存在しているかは筆者の環境では確かめられていないが、問題報告の経緯からみてAdobe側にある程度Appleへの批判的なスタンスが存在し、この情報を出したことでApple側(あるいは内部)からクレームがきたのではないかと想像する。Flash問題やPackager for iPhoneの問題以降、両者の間に依然としてわだかまりが存在すると思うのは考えすぎだろうか。
Adobe製品の他の既知の問題としては、Creative Suiteの3や4といった旧バージョンはLionでは動作せず、CS5や5.5といった新バージョンのみの対応となることが報告されている。関連ユーザーはすでに把握していると思われるが、インストール前にRodgers氏のいうように事前チェックだけはきちんと済ませておこう。
Microsoft、NAS製品、セキュリティ対応でもいくつか報告が
Adobe製品以外にも、メジャー製品のいくつかでLion対応について大きな問題が報告されている。例えばMicrosoftは先週、Office for Mac 2011でいくつか大きな問題があることを報告している。一連の報告の中で最も深刻なのがCommunicator for Macに関するもので、アプリケーションを利用しようとするといきなりクラッシュするというものだ。これについては次期アップデートで対応する意向だという。2つめはOutlookに関するもので、LionではApple謹製のMail.appからのインポートが行えなくなっているという。こちらについてはメールの仕様変更によるものとみられ、現時点でMicrosoftでは修正計画は未定だという。ただ既存のOutlookユーザーは問題なくメールを引き継げるとのことなので、Lionへのアップデート前にインポートを完了しておけばいいだろう。
このほか大きな問題としては、LionからNASへとアクセスできなくなる現象が報告されている。PC Magazineによれば、これはNetatalk 2.2内のDHX2認証システムに変更が加えられたことによるもので、バックアップ時またはTime Machineでのファイルアクセス時に問題が発生するようだ。Western DigitalがLionリリース直後に問題を報告しているほか、NASをリリースする他の多くのベンダーも同種の問題を報告しているという。Apple系のプロトコルをサポートするNASやファイルサービスでは同種の問題が発生する可能性が高いため、ネットワークストレージを利用するユーザーは一度製品のサポート情報をチェックしたほうがいいかもしれない。 またセキュリティベンダーのSophosは、AppleがLionリリース直後に公開したSafari 5.0.6と5.1向けのアップデートについて簡単に触れている。Safariの2バージョンは旧バージョンOS (10.6と10.5)に向けて用意されているもので、Lionはインストール時にSafari 5.1へと自動アップデートされる。Sophosによれば、このSafariアップデートには57のバグフィックスが含まれているとのことだが、これがSafari 5.1 for Lionに対応するものかどうかは不明と説明していた。だがSophosの後の更新情報によれば、現時点でのSafari 5.1 for Lionは最新版であり、アップデートの適用は必要ないとしている。