Jeff Zabel氏

スマートフォンによるモバイルインターネットの起爆は、自動車内の情報やエンターテインメントのニーズにつながっており、自動車業界にも影響を与えつつある。先にトヨタ自動車がLinux Foundationに加入したが、トヨタはこの背景として車載システムの重要性を挙げている。

自動車大手の独BMWはスマートフォンブームを受け、顧客の利便性改善のために車載システムと連携させるサービスを一部機種で提供している。6月中旬、独ベルリンで開催された「Navigation Strategies Europe 2011」において、BMWで製品マネージャを務めるJeff Zabel氏が、サイクルの長い自動車業界が進化の早いITを利用するための取り組みについて語った。

BMWは2010年にMINIの車載エンターテインメントシステム「MINI Connected」を、2011年初めにBMW用の「BMW Apps」を発表。両製品は、米Apple「iPhone」を接続して車載システムと連携できるもので、Twitter、Facebook、Googleのローカル検索、インターネットラジオなどのアプリが利用できるというもの。たとえばFacebookでは、ジョイスティックを利用し、用意されているテンプレートを利用してステータスをアップデートしたり、友人の投稿をスキャンできる。音楽では、「iPod OUT」に対応、iPodと同じルック&フィールで操作ができる。また、インターネットラジオや運転のスタイルに合わせて楽曲が動的に選択されるDynamic Musicもある。2010年8月のMINI Connectedローンチ以来、アプリの種類は11種類に及ぶ。BMWが開発したアプリに加え、2011年1月には米Pandoraをサードパーティアプリとして初めて統合した。

MINI Connectedの提供イメージ

BMW AppsとMINI Connectedが共通して利用するインタフェースが、「BMW ConnectedDrive」だ。BMWが1994年に初めて搭載したナビゲーションシステムで開発した。ITでは1994年というと古く感じるが、「運転手に安全に情報を提供することにフォーカスしている」とZabel氏、そのような理由から当初から大幅な変更を行っていないと説明する。

最初のBMW ConnectedDriveは1994年に登場した

フレームワークとインタフェースによる分離アプローチにより、機能を拡張できる

最新のConnectedDriveは、モバイル端末を接続することで最新機能を利用できる。これをBMWは分離アプローチとする。「IT側の進化は早い」とZabel氏、「車の開発・製品サイクルは長く、開発に3~5年、製造期間が7年、その後サポートが7年。長い視野に立って、開発する段階で機能を統合する必要がある」と述べる。そこで同社が取ったのが分離アプローチとなる。「いまコンシューマーが望んでいることを提供するためには、(どのサービスを提供するのか、そのサービスが数年後も存在するか、ではなく)次々に出てくるサービスを車に統合するインタフェースを考える必要がある」と続ける。ここで重要なこととして、標準技術の利用を挙げた。

BMW ConnectedDriveでは現在11種類のアプリが利用できる

もう1つの特徴が、アプリ形式での機能配信だ。「2010年に購入した車の機能を継続して利用し、アプリを追加して価値を加えることができる」とZabel氏。今後、アプリの数を増加し、サードパーティのアプリ認定も進める予定だ。この市場は今後大きな成長が見込めるとZabel氏は見る。

アプリ形式で配信することは、顧客のニーズでもある。「スマートフォンとアプリの急増が実証したことは、消費者がアプリとその配信メカニズムを望んでいたということだ」(Zabel氏)。機能をアプリとして配信することで、継続的に価値を加えられるだけでなく、顧客は自分がのぞむ機能を選択して入手できる。

「スマートフォンとの連携により機能統合の形が変わった」とZabel氏。各社が車載システムを工夫した結果、今後自動車購入の判断基準の1つとして車載システムを重視する消費者が増えるかもしれない。