KDDIは25日、2011年第1四半期の決算を発表した。営業収益は8,649億6,400万円で前年同期比0.1%減、営業利益は1,400億9,600万円で同8.4%増となり、減収増益。携帯電話事業のマイナスを固定通信事業がカバーする形となり、増益となった。同期では、東日本大震災の影響もあったとしており、同社では通期予想は変更しない。
携帯電話事業では、営業収益は6,621億4,800万円で、同0.2%減、営業利益は1,216億9,100万円で同8.7%減の減収減益。固定通信事業は、営業収益は2,202億900万円で同2.8%増、営業利益は165億3,700万円で、前年同期比の54億円の赤字から黒字転換し、219億円の改善となった。携帯事業のマイナス分を固定事業の黒字がまかなった形で、全体の増益につながっている。
田中孝司社長は、「業績面では順調で、今年は基盤事業の立て直しを目標としており、着実に進捗しているので、非常に満足している」と述べ、営業利益の通期目標4,750億円に対して、進捗率は29.5%に達していると順調な決算をアピールする。
同社では現在、基盤事業の立て直しを最重要視しており、移動通信のau事業では、4つの指標である「解約率」「MNP」「純増シェア」「データARPU(ユーザー一人当たりの平均収入)」のいずれも「着実に改善している」という。
解約率では、同期は0.66%で同0.09ポイント改善。遅れが指摘されていたスマートフォンのラインナップが充実したことが改善につながったとしている。MNPでは、流入に対して流出が多く、6.7万の流出となっているが、前期比では2.8万の改善となっており、下げ止まっているとの認識だ。純増シェアは、モバイルWiMAX事業のUQコミュニケーションズとの合算で29.8%となり、前期比2.5ポイント増と「いい結果になった」(田中社長)。契約数は3,438万2,000契約となり、前期から57万7,000件増。内訳は、auが35万3,000件増、WiMAXが22万4,000件増だった。ARPUでは、音声ARPUが2,240円、データARPUが2,400円で、同620円減、100円増の4,640円。データARPUの増分のうち、70円はスマートフォンによる効果だったという。同社では、今年度のARPUは音声2,000円、データ2,540円の4,540円まで増やす計画だ。
また、端末の販売台数は331万台で、そのうち66万台がスマートフォンだった。販売手数料の平均単価は24,000円で、ここ3期連続変化はないが、これを今年度は22,000円に下げる予定だ。
田中社長は、au事業の取り組みで「スマートフォンシフトを本格化させる」と強調。スマートフォンの販売数増加にともないデータARPUの上昇を見込む。実際、昨年度の第2四半期では、前年同期比で40~60円で2.3%程度の伸び率だったデータARPUの上昇が、同期は4.3%の上昇率になった。
スマートフォンでは、今春のWiMAX内蔵スマートフォン「htc EVO WiMAX」の登場、今夏モデルでスマートフォンを充実させたことに加え、9月以降にシンプルスマートフォンとして新機種を投入することで、「幅広い年齢層に使ってもらい、利用層を拡大した」(同)。
下半期では、田中社長は「WiMAX搭載スマートフォンが数機種出る」と明言。EVO WiMAXは、新規比率、WiMAX利用率、満足度がそれぞれ高く、3G、WiMAX、無線LANと通信方式を選択できることで「高い差別化要素になっている。下半期はさらに期待していいのではないか」(同)との認識だ。
今夏モデルでも特に「INFOBAR A01」は独自UIとデザインを採用し、当初の女性比率が55%に達したという。「従来、スマートフォンは男性側に(利用者が)シフトしているが、au独自のUIで女性に高い訴求力」があると指摘、こうしたau独自のモデルに期待を寄せる。
サービス面では、競争力のあるアプリを導入するため、Facebookとの協業をさらに強化。すでにソーシャルアドレス帳jibeとの連携やINFOBAR A01専用ウィジェットを搭載するなどしたが、「今後さらに期待して欲しい」(同)と、さらなる連携強化を図る。
6月にスタートした定額制の音楽配信サービス「LISMO unlimited」も好調だということで、こうしたストリーミング型の定額制音楽配信が「スマートフォンでは主流になる」(同)との認識だ。また、アプリ開発者へのサポートプログラム「KDDI ∞ Labo」もスタートし、スマートフォンのアプリの差別化を狙う。
「3M戦略」に向けた施策では、「本格展開は来年になる」(同)ものの、その準備段階として、公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」をスタート。接続を簡単にし、さらに電波の強さで無線LANと3G通信を切り替えを自動で行う専用アプリの投入で「無線LANの使いにくさをカバー」(同)したほか、定額制利用者なら無料、年末までに業界最大の10万スポットまで広げるといった施策で利用者増を狙う。
決済プラットフォームの拡充も重要との認識で、同社はすでにウェブマネーを連結子会社化。今期には197億円で完全子会社化する予定で、オンラインゲームやSNSの支払いで高いシェアを確保。楽天と業務提携し、電子マネーのエディとの連携もすることで、楽天市場でのauかんたん決済を導入、Edyチャージでもauかんたん決済をサポートする。今後、さらにNFCなどの新規事業への拡大も検討する方針だ。
au事業の懸案である、800MHz帯の周波数再編にともなう新周波数非対応機種の移行では、同期は128万台を巻き取り、全体では323万台まで減少。そのうち117万台が優遇措置により新周波数対応機種に移行しており、今年度末までには60万台まで減らしたい考えだ。
固定事業では、FTTHで8万7,000契約の純増となり、進捗率は17%になった。同期では、東日本大震災の影響から、営業自粛や開通工事がストップした影響があったものの、6月移行は回復基調となり、今後販売体制のさらなる強化や、「auひかりホーム」のエリア拡大で、さらに拡大を目指す。固定事業の黒字化では、コスト削減効果が最も大きかったという。
auひかりホームでは、上下最大1Gbpsの高速通信プラン「ギガ得プラン」を積極的に販売していく計画で、7月以降は戸建て向けを全国24都道県までエリア拡大する。
田中社長は、携帯事業の減収減益は、シンプルプラン導入によるインパクトへの対応が他社より遅れており、ARPUが減少していることが原因としつつ、第1四半期の結果としては「織り込み済み」と述べる。データARPUの上昇が計画よりも「いくぶん少ない」ものの、スマートフォンの発売が当初より後ろ倒しになったことが要因で、今後は上昇が期待できると判断。第1四半期の結果は「総合的に判断して満足できる結果」としている。
スマートフォンの販売台数の計画についても、第1四半期の66万台は「計画よりは少なめ」であることは認めつつ、当初の予定である400万台は十分達成可能という見込みで、田中社長はさらに「気持ちとしては上ブレさせたい」と意気込んでいる。