全米をカバーするモバイルコマースシステム構築を目指すジョイントベンチャーのIsisは7月19日(現地時間)、Visa、MasterCard、Discover、American Expressらカード会社大手4社との提携を発表した。これにより、今後Isisのシステムに対応した携帯電話を使うことにより、これら4社の決済ネットワークを介して対応店舗でのモバイルペイメントが可能になる。現在米国ではGoogleをはじめ、大手各社連合によるNFC (Near Field Communication)を使ったモバイル決済システム構築に向けた動きが活発化しているが、今回の発表は主に携帯キャリア連合を中心とした最新の動きの1つとなる。
Isisの設立は昨年2010年夏ごろにアナウンスが行われている。Isisを設立したのは米AT&T Mobility、T-Mobile USA、Verizon Wirelessの米携帯電話大手3社で、いわゆる携帯キャリア連合と呼ばれるものだ。NFCなどを使ったモバイルペイメントシステムの構築に向けては、今回のIsisをはじめ、前述のGoogleやPayPal、そしてVisaやMasterCardといったクレジットカード会社や銀行、決済ネットワーク会社などがそれぞれにシステム構築に名乗りを上げており、数年後にも到来しようとしているモバイル決済分野での覇権を賭けたつばぜり合いが始まっている。だがIsisのケースでいえば、携帯キャリアだけではバックエンドの決済部分のピースが足りず、これを補完するのが大手4社との提携となる。Isisによれば、同社のシステムを使って「自由と選択を伴った」決済手段を提供することが可能になるとのことで、サービスが特定のカード会社の決済システムに縛られずに広く利用できるようになる。また、実際のサービス展開に向けたビジョンがより具体的になったというメリットもある。
今回の発表は米コロラド州アスペンで行われたFortune Brainstorm TECH Conferenceで公表されたものだが、現在のところ具体的なサービス展開プランは発表されていない。Isisによれば、まず米国を中心に2012年中にもサービス展開をスタートし、そのパイロットプログラムを同年前半に米テキサス州オースチンで立ち上げる予定だという。日本のおサイフケータイなどに比べれば出足はかなり遅いといえるが、NFCを使った本格的なモバイルペイメントサービスの米国での展開は、今後ほかの国へ大きな影響を与えることになるだろう。Isisより先行してスタートしているGoogle Walletについては、来月8月中にもニューヨークやサンフランシスコなど一部都市でパイロットプログラムが開始される。こちらはMasterCardのほか、CitiやFirst Dataなどがバックアップしており、サービス提供キャリアとしてIsisに参加していない米第3位のキャリアのSprint Nextelが名乗りを挙げている。今年から来年にかけて、こうした米国での動きに注目が集まることになるだろう。