7月17日、早稲田大学 早稲田キャンパスで開催された日本最大級のAndroidイベント「Android Bazaar and Conference (ABC) 2011 Summer」では、様々な形でAndroidと関わっている多彩な登壇者による講演が行われた。
本稿では、前グーグル日本法人名誉会長で慶応義塾大学大学院 特別招聘教授の村上憲郎氏、と総務省 情報通信国際戦略局情報通信政策課長の谷脇康彦氏の講演の模様を紹介する。
村上氏「スマートグリッドで人と物、物と物のコミュニケーション」
村上憲郎氏は、「スマートグリッドが切り拓く新生スマートニッポン」と題して講演を行った。村上氏は、スマートグリッドはAndroidとは直接関係がないと前置きしたうえで、スマートグリッドについて説明。スマートグリッドは、情報網が一緒に束ねられた電力網のことで、電気製品をインターネットにつねげるもの。消費電力の見える化を実現するほか、インターネットによる電気製品の制御も可能にする。
スマートグリッドを利用する際には、スマートメーターと呼ばれる無線LANまたは有線LANのインターフェースを備えたメータを設置し、日本では今後、電力会社が各家庭に配置していく予定だが、欧米では自主的にスマートメーターを配置していることも多いと、村上氏は解説した。
スマートグリッドでは、デマンドレスポンスという方式で消費電力の削減が行われる。デマンドレスポンスは電力が供給不足のときに、たとえば100万kwの節電を行った場合は、100万kwを発電したとみなして電力会社が電力を買い取る仕組み。さらに村上氏は、スマートグリッドが新たな発電事業の参入や多様な電力事業の創設を助けると述べた。
最後に村上氏は、スマートフォンなどによる従来の人と人とのコミュニケーションに加えて、人と物、物と物のコミュニケーションを実現するのがスマートグリッドだと述べた。
谷脇氏「電子化とクラウドの重要性が明らかに」
総務省の谷脇氏は「震災復興とICT(情報通信技術)」というタイトルで講演を行った。谷脇氏は、(東日本大震災が発生した)3月11日以降も総務省のICTの方針に変更はないとしたうえで、通信ネットワークの復旧状況について説明。固定電話は震災発生後1カ月で復旧し、携帯電話も4月末には復旧したと述べた。
同時に、携帯電話は地震発生直後に90%が止まったが、パケット通信は一部に制限がかけられたものの基本的には通じたとし、災害時のパケット通信が有効であることがわかったと述べた。また、ネットワークは電気がないと使えないため、復電と並行してネットワークを復旧する必要があるとした。
谷脇氏は、津波によって紙のカルテや教科書が流された被害が多かったことを取り上げ、電子化の重要性が明らかになったとした。同時に、電子化していても機器が流されてデータが失われる可能性があることから、クラウドにバックアップすることの重要性も明らかになったと述べた。
続いて、話題を震災復興からAndroidなどのスマートフォン分野でのICTに移した谷脇氏は、これまでの携帯電話のビジネスモデルがキャリア中心の垂直モデルであったのが、スマートフォンの登場によりネットワークに依存しない新たな垂直モデルに変化したと解説。また、スマートフォンは時間が経っても価値が下がらないとし、「サプライヤーとユーザーが価値を高めている」と述べた。