7月17日、早稲田大学 早稲田キャンパスで日本最大級のAndroidイベント「Android Bazaar and Conference(ABC) 2011 Summer」が開催された。
早稲田大学で開催された「Android Bazaar and Conference(ABC) 2011 Summer」 |
主催は、「日本Androidの会」。携帯キャリアや携帯メーカー、Android開発者らによる講演と展示が行われたほか、特別に震災関連の講演と展示も行われた。本稿では、日本Androidの会 会長で早稲田大学客員教授の丸山不二夫氏による基調講演の模様を紹介する。
丸山氏の講演タイトルは「がんばれ日本。がんばれAndroid。」。2011年3月に発生した東日本大震災とAndroidやクラウドサービスの関わりについて多く語る内容となった。丸山氏は冒頭で、今回の震災時のコミュニケーションと情報共有では、従来と比べて大きな変化があったと指摘。東京では携帯電話による通話は途絶したが、Twitterやメールによるコミュニケーションは有効であり、交通機関の不通による数百人規模の帰宅困難者が発生したにもかかわらずパニックに陥ることはなかったと述べた。
また、丸山氏は震災時にネット上で行われた様々な試みについて紹介。Googleが自発的に立ち上げた安否情報サイトの「Google Person Finder」では、登録された何十万件の安否情報が検索可能となったと述べた。NHK教育テレビでも安否情報が放送されていたものの、今回のような規模の大きい震災では、一日中流され続ける放送から自分が求める情報を見つけるのは困難だと指摘。安否情報の確認では、テレビよりもネットが役に立つことが明らかになったと述べた。
そのほか、Microsoftが被災した自治体や企業などのアクセスが集中したWebサイトのミラーサイトを自発的に立ち上げ、後からコンセンサスを得た事例や、地震発生直後に個人がNHKの放送をUstreamで勝手に配信したものの、UstreamとNHKの判断により特別に許可され、その後の各テレビ局による公式のライブストリーミングの開始につながった事例などが紹介された。
丸山氏は、Androidのコミュニティが様々な震災支援活動に取り組んだことも紹介。Android開発者が震災支援に取り組んだきっかけとして、自分たちの共同体(コミュニティ)が危機にあるという意識や、電気や電話、インターネットといったインフラの重要性を再認識したこと、Androidなどのオープンソースの潮流とも共通する相互互恵や贈与の精神が影響したのではないかと述べた。
いっぽうで丸山氏は、震災支援を通じて浮かび上がった問題点のひとつとして、日本では本来は共有すべき重要な情報がオープンになっていないことを挙げた。福島第一原発付近の風向きの気象データはネットでは公開されているものの、再配布が認められていないことや、災害時の避難所マップは市町村が別々に作成していて、一元化されていないことがあり、震災支援の足かせになっていると指摘。
気象庁のホームページでは、気象情報を著作権保護の対象として再利用を禁止しているのに対し、米国の海洋大気圏局では政府情報は国民の財産だとしてオープンになっていることを紹介。「情報は誰のものなのか?」と問いかけた。
続いて丸山氏は、Androidの爆発的な広がりについて話題を移した。2011年2月の全世界のスマートフォン出荷台数におけるOS別シェアで1位となったAndroidは、2012年にはスマートフォン出荷台数の50%に迫るという予測を紹介。日本ではすでに2010年度のスマートフォン出荷台数でAndroidが1位になっており、2011年度以降はOS別シェアでAndroidが70%以上で推移するという予測を紹介した。
日本市場は世界の動きよりも2年早く進んでおり、韓国などと並んで世界有数のAndroid大国となっていると指摘。丸山氏は、「トップシェアのOSの開発者であるという自覚を持とう」と述べた。
次に丸山氏は、世界的なIT企業の世代交代について触れ、1970年代に創業されたMicrosoft/Apple/Oracleの次に台頭してきたAmazon/Yahoo!/Googleは1990年代創業と、約20年後の創業となっているのに対し、Facebook/Twitter/Zyngaは2000年代創業であり、世代交代のサイクルは早まっていると指摘した。そして、Google、Facebookに次ぐ「次の世代」の会社が日本から出てきてほしいと述べた。
そして日本は、Androidをはじめとするクラウドデバイスが広範に普及しているほか、Googleが2011年夏に開始する「Google Wallet」のような電子マネーについても世界一の利用実績があり、高速ネットワークのインフラも整っているとした。さらに、優秀な開発者も存在し、新たなビジネスモデルやサービスを創出するうえで、日本は有利な環境にあり、日本の若い世代がこれらの課題に果敢に挑戦することを希望すると述べて、講演を締めくくった。