ワコムとゲッティ イメージズ ジャパンは都内にて、フォトレタッチセミナー「写真を撮ったアトに知らないと損する10の常識」を開催した。セミナーでは、プロフォトレタッチャー 北岡弘至氏(GARABATO代表)が、「あなたの写真が作品になるフォトレタッチテクニック」というテーマで講演を行なった。
北岡氏はデザイン事務所で印刷や製版の仕事に就き、2005年にGARABATOを設立。現在はANAや日本コカ・コーラ、NTTドコモ、キリンビール、久光製薬など、大手企業の広告用グラフィックを制作している。いまでこそ一般に知られるようになったフォトレタッチだが、ひと昔前はネガティブなイメージがつきまとう仕事だったそうだ。その理由は、人に見せたくない部分を隠すために行われる作業だったから。それが現在では、広告や宣伝のイメージアップのために使われることが多くなった。「ここ数年で表舞台に出られる職業になった」と北岡氏は語った。
ちなみに北岡氏は、「Photoshop」を学校で学んだ経験はない。常に「どうしたらうまくいくのか?」と考え続けてきたから、人に聞いたり本を読んだりしながら、独学でPhotoshopを学んできたとのこと。
レタッチのスタートは「目的」を決めること
セミナーの冒頭、北岡氏は、「何のためにレタッチをするのか?」という事に関して語った。フォトレタッチを駆使すれば、1枚の写真をどのようにでも加工できる。だからこそ、目的/ゴールをどこに置くか事前に考えていないと、作業の出口が見つからなくなってしまうという。北岡氏が考えるフォトレタッチャーに必要なスキルとは、「素材をどのように表現するかを決める力」とのこと。このゴールを決めておかないと、レタッチし過ぎてしまい、逆に悪い結果となる事もある。特に注意すべき点は、徹夜での作業。目が疲れた状態で作業に没頭するとテンションも高まり、色がどんどん派手になってしまうそうだ。そんなときは一度休息して、翌朝冷静になって確認したほうが効率的だと、北岡氏は語った。
複数の素材を合成するテクニック
フォトレタッチの心得を説明した北岡氏は、キジの合成写真を例に、この作品の作り方を紹介した。使われた素材は、キジの剥製の写真と神社の境内の写真。キジはパスとクイックマスクによって切り抜かれている。このときに活躍した機能がPhotoshopの「指先ツール」。まず初めにパスで大まかな輪郭を描き、クイックマスクモードに変更してからキジの羽根の毛先をペンタブレットで丁寧に描く。ペンタブレットと指先ツールの相性はとてもよく、自動的に周囲と馴染むようにボカシを入れられる。これは動物や人の毛先をマスクするときには重宝する技とのこと。
次にマスクで切り抜かれたキジを、背景の神社に合成する。このときに注意すべきは、カメラの被写界深度。合成写真を作るときには、「配置する位置の被写体は、はたしてどれくらいボケているか?」を把握するのが重要だという。北岡氏は、配置した周囲の物体を確認しながら、それに合わせてキジの写真にもボカシをかけていく。
合成が終わったら、最後の味付けとしてスキャナーで取り込んだ和紙のテクスチャーを薄く合成。これだけで作品のイメージが和風になった。