講談社は7日、写真集『高野山 Koyasan』を発売する。価格は3,465円。
日本仏教界の巨人・空海が高野山を開創してから1200年。この聖地には濃密な祈りの気があふれ、訪れる人々をやすらぎとやさしさに満ちた異空間へと誘う。
それだけに、高野山を題材とした著作物は山とある。そんな中においてこの本が傑出しているのは、高野山という町の日常が収められているという点にあろう。ふと、バス停で一緒になる修行僧と観光客、寺院の炊事場ではたらくご婦人方、お経を読む練習をする若い僧の姿など、特別ではない高野山の姿がそこにある。「ページを開くだけで、高野山に旅をして、人々とふれあったような、やさしい気持ちになれる作品集を目指しました」と担当編集者は語る。
もちろん、高野山をとらえる際に欠かせない、荘厳な寺宝や歴史をまとう建築物も、フォトグラファー半沢克夫の手により見事な写真となって我々を圧倒する。儀式にのぞむ僧侶の姿、咲きほこるシャクナゲや雪に粧(よそお)われた寺院など、光あふれる数々の写真には精選された空海の名文が添えられている。
また、高野山は2004年に世界遺産に登録されたこともあり、海外から多くの観光客が足を運ぶ。そこで、これまでにあまり充実していなかった「バイリンガルガイド」を巻末に収録。Q&A形式で、宿坊の泊まり方や拝観の仕方、修行体験などを、簡潔に説明してある。高野山で海外からの観光客をガイドしているKCCNという組織に、特別に依頼したという本格的でわかりやすい英訳付きのガイドとなっている。必要箇所を英語訳したマップも付く。
文および解説は高野山真言宗 総本山金剛峯寺の薮 邦彦宗務総長公室課長。
撮影者紹介
半沢克夫
フリーフォトグラファーとして、ポートレートやCDカバー、テレビCMなどで活躍中。永瀬正敏や藤井フミヤなどのアーティスト写真集のほか、『Son Of The Sun』(ロッキングオン)、『Human Spice』(講談社)など、"場の空気"を巧みに捉える独創的な作品で高く評価されている日本屈指のカメラマン