2010年夏に原作コミックスとTVアニメシリーズがほぼ同時に終了してからおよそ1年。『鋼の錬金術師』(原作 / 荒川弘)が劇場アニメ『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』となって、2011年7月2日に公開初日を迎えた。
シリーズ累計5,000万部を突破する荒川弘氏の人気コミックス『鋼の錬金術師』は、禁忌をおかした錬金術師の兄弟、エドワード・エルリック(エド)とアルフォンス・エルリック(アル)が、失われた自分たちの身体を取り戻すための旅を描いた骨太のストーリーが高い人気を集め、二度にわたってのTVアニメ化や2005年の映画化、さらにはゲーム化やノベライズなど、幅広いメディアミックでも大きな話題となった。
7月2日より公開開始となった『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』では、エドとアルの2人の旅の途中に起こったある"事件"を巡って展開される完全オリジナルストーリー。監督に村田和也氏、キャラクターデザイン・総作画監督に小西賢一氏、脚本に小説家の真保裕一氏を迎えた本作では、エド役の朴璐美、アル役の釘宮理恵といったおなじみメンバーに加え、ジュリア・クライトン役として坂本真綾、メルビン・ボイジャー役として森川智之が参加するなど、豪華なキャスト陣でも注目を集める。
新宿ピカデリーで行われた初日舞台挨拶には、村田和也監督、エド役の朴璐美、アル役の釘宮理恵に加えて、ジュリア・クライトン役の坂本真綾、ロイ・マスタング役の三木眞一郎の5名が参加。ここでは、上映後の熱気に包まれた会場で行われたトークショーの様子を紹介しよう。
まずは作品のテーマについて問われ、「ひとここで言うなら『もっと』」と答える村田監督。「原作とTVアニメのシリーズが同時に終わって、ファンの皆さんも寂しい思いをされていたと思うのですが、作り手のほう、特にプロデューサーチームにも、このまま『鋼の錬金術師』とお別れなのは寂しいという気持ちがあって、今回の企画につながった』と振り返る。『鋼の錬金術師』には今作からの参加となる村田監督だが、「これまで携わってこられた方々の熱い想いが、ものすごく僕自身にも伝わってきた」と語り、「この映画には、TVアニメーションの枠組みの中では描けないようなスケール感や壮大なアクションを盛り込んだ」と作品をアピールした。
2003年の一度目のアニメ化よりエド役を務める朴は、『鋼の錬金術師』について「重たい存在」と語る。エドは自分の中に「ドカドカと土足で入ってきて、ザバザバっていろいろなものを持って、ブワーって行ってしまうので、結果私が『持っていかれたー』みたいな(笑)」と笑顔を見せつつ、「始まる前は『重たい』と思っていたのですが、始まってしまうと、『あ、この感覚、久しぶり』みたいな感じになっていた」と振り返る。以前、原作者の荒川弘氏に『私の息子、エドを託します』と言われたという朴だが、「今では、私は私は次元にいて、エドはエドの次元にいて、こういう瞬間に世界観が繋がる、もう一人の自分のような感じです」と語った。
朴同様、2003年のアニメからアル役を務める釘宮は、アルを演じるにあたって「素直に」演じることを心がけているという。「思いやりや優しさといった、アルの少年っぽさを心がけてやっています」とのことで、「本当に心がけていることはシンプルなんです。作品が重いというだけで、私は素直にそれに従って、ついていこうという気概でおります」とまとめた。
2度目のTVシリーズである『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』からロイ役を演じる三木眞一郎は、久しぶりにロイを演じてみての感想を聞かれ、「劇場版の話は聞いていたので、心の中では、彼がすぐに立ち上がれるようにスタンバイしていた」と語り、実際の収録でも、これまで同様、『鋼の錬金術師』の現場ならでは緊張感の中、特に違和感なく演じられたという。また、村田監督の発言を受けて、「寂しがり屋の大人たちが寄ってたかって作ったのかって、もうすこし健全な理由があったんじゃないのか」と会場を沸かせつつ、「熱気のこもったフィルムができあがっているのではないかと思う」と作品に対する自信を伺わせた。
ジュリア役に決定したときの感想について、「なんで私のことを呼んでくださったのか、聞いてみたいような、聞かないほうがいいような……」という坂本。朴に、今(村田監督に)聞きますか? と言われて、「いやいや、もう怖くて」と苦笑い。「すごい大作の、大きなゲストキャラクターということがわかっていたので、最初からすごいプレッシャーがありました」と振り返り、「ぶ厚い台本をいただき、その重みもあって、スタジオに行くまでは緊張してましたが、スタジオに行ったらみんな楽しそうだったので(笑)」と笑顔を見せつつ、「和やかな中にもすごい緊張感のある現場で、みんながこの作品にかける想いを熱く持ち寄っているのがわかるので、緊張するけど心地よい、すごいプロフェッショナルな集団の仲間に入れていただいたという喜びがありました」と語った。
「作品にはさまざまな仕掛けが施されており、2度、3度と観ることで、さまざまな発見があって、より深く作品を知ってもらえるのではないか」という村田監督。そして、「私自身、1回目を観てちょっと圧倒されてしまったので、スクリーンで2回、3回、4回、5回と観て、いろいろいなところを補完していきたい」という朴は、「この大きなスクリーンで、心をドカっと開いて、五感という五感をフルにまさぐられて、楽しんでいただけたらいいなと思います」と語り、最後に「この夏、『鋼』の焔がいろいろなところに燃え移りますように」ということで、「鋼の錬金術師」(朴)、「嘆きの丘(ミロス)の聖なる星」(観客)という掛け合いを行って、舞台挨拶を締めくくった。
劇場アニメ『鋼の錬金術師 嘆きの丘 (ミロス)の聖なる星』は、2011年7月2日より、東京・新宿のピカデリー新宿ほか、全国ロードショー。配給は松竹/アニプレックス。なお、公開劇場など作品についての詳細は、公式サイトをチェックしてほしい。
(C)荒川弘/HAGAREN THE MOVIE 2011 |