HOYAとリコーは1日、HOYAのデジタルイメージング部門であるPENTAXイメージング・システム事業のリコーによる買収について合意にいたり、契約を締結したと発表した。買収は10月1日付の予定で、リコーはデジタルカメラなどの製品の一部において、HOYAは内視鏡などの製品でお互いにPENTAXブランドを共有する形になり、両社でPENTAXブランドの継続・拡大を目指していく考えだ。リコーはデジカメ事業に加えて、同社のネットワーク事業や複写機・複合機、写真のアーカイブ事業など、「コンシューマ向けの付加価値事業を充実させていきたい」(リコー・近藤史朗社長)意向で、3年後には1,000億円規模に拡大させたい考えだ。

PENTAXイメージング・システム事業の買収で合意したリコーの近藤史朗社長(左)とHOYAの鈴木洋代表執行役

PENTAXは、2008年3月にHOYAが吸収合併の形で取得。その後も継続して従来の製品を提供しており、デジタル一眼レフカメラの「Kシリーズ」や中判デジタルカメラ「645D」、コンパクトデジカメの「Optioシリーズ」を始め、医療分野を含む光学技術、画像処理技術、電子技術などを生かした幅広い製品を提供してきた。

そうした中、買収後すぐの2年ほど前から、HOYAの鈴木洋代表執行役と近藤社長が話し合いを進めており、今回の合意にいたったという。具体的には、新会社を設立してHOYAからPENTAXイメージング・システム事業を切り離し、それをリコーが子会社化する、という形になる。リコーのデジカメ事業も新会社に移管し、PENTAXは約3年半ぶりに新会社として復活することになる。新会社の社名や社長、規模などは現時点では未定。

今回の買収では、コンパクトデジカメのみのリコー側にとっては、長年にわたるPENTAXのレンズ交換式カメラの資産を得られることが大きなポイントで、近藤社長は「長年の課題であるコンシューマ事業を確立する」ことを目指す。リコーは特にB2B事業がビジネスの中心だったが、オフィスとホームの垣根が取り払われ、ビジネス領域とコンシューマ領域で事業が重なり合っていることから、コンシューマ事業を確立して従来のビジネスとのシナジー効果を作り上げることをもくろむ。

HOYAは、「これまでPENTAXを育ててきた」(鈴木氏)が、「そろそろバトンタッチの時期」との認識で、PENTAX買収時から「何らかの形で(HOYA)単独ではなく、別の形を模索」していくことを考えていたそうだ。デジカメ事業の長いリコーに事業を売却するとともに、同社の強い医療分野向けなどで内視鏡のような製品を共有することに加え、リコーとのさらなる協業によって事業の拡大を目指す。

イメージング・システム事業をリコーが買収、医療分野などの製品や半導体、音声合成ソフトなどはHOYAに残り、両社でPENTAXブランドを共有する

リコーはGRデジタル、GXRのような特徴的なコンパクトデジカメを発売しており、根強い人気を獲得している。近藤社長は「リコーのカメラは、カメラ好きが好きなように作っている」と話し、PENTAXも同様に「カメラ好きがいいカメラだとうなるようなカメラを作っている」との認識で、両者の融合によってビジネスとしてさらに拡大していくことが目標だ。3年後をめどに1,000億円規模に成長させたい考えで、近藤社長は「未来の事業を作っていきたい」と意気込む。

PENTAX、リコーとも、デジカメでは一定のブランドを確立しているが、お互いの製品はバッティングしないと近藤社長は指摘。それぞれの製品群は継続させていく考え。PENTAXが持つKシリーズのKマウント、645用マウント、発表されたばかりの「PENTAX Q」用のQマウントの3種類も存続させる。

HOYAはこの3年でPENTAX事業を黒字化まで引き上げ、十分なリストラも行われていると評価。それに対してリコーのデジカメ事業に関しては「キチンと見直すことをやるべき」(近藤社長)という判断で、海外のPENTAXの生産拠点を活用するなどの対策を検討しているそうだ。

今後、継続してデジカメの新製品を開発していくほか、オンラインストレージの「quanp」のようなネットワーク事業、複合機・複写機、デジタルサイネージなど、さまざまな事業と組み合わせることで「新しい価値を提供する」(近藤社長)ビジネスに拡大していくことを目指している。

鈴木氏は、約3年のPENTAX事業の経験から、今後業界は「2分化していく」と見る。写真を撮影するカメラとしての領域と、映像を取り込む入力装置としてのカメラの2つの分野で、写真を撮影するカメラの領域はリコーが育て、映像入力装置としてそれを処理、伝達、加工するビジネスに注力していきたい考えで、リコーのリソースなども活用しながら、「(リコーとHOYA)お互いにWin-Winの展開を考えていきたい」と話す。

近藤社長は、「決算説明の度にカメラ事業売却について問われたきた」としつつ、今回の買収でデジカメ事業をさらに強化し、大きく育てていく意気込みを強調し、「今後は(売却について)もう問われないだろう」と笑う。「レンズ、絵作り、メカ設計の技術など、世界に誇れると確信している」というPENTAXを得たことで、短期的な利益ではなく、長期的な視点でリコーのデジカメとともに育てていきたいという考えを示している。

台数ベースではコンパクトデジカメが圧倒的だが、金額ペースでは現在の26%から50%(2015年)まで拡大するとの予測で、レンズ交換式カメラのないリコーは、今回の買収でこの分野で拡大を狙う