先日、韓国Samsungからの「(類似性検証の)公正な判断のための次世代iPad/iPhoneの提出」要求が米連邦地裁によって却下されたばかりだが、同社は次の一手として米国内でのApple製品販売阻止を目指し、国際貿易委員会(International Trade Commission: ITC)に対して申請を行った。英Reutersなど複数の報道機関が6月29日(米国時間)に報じている。
Reutersによれば、Samsungは同社の特許を侵害する製品としてiPhone/iPad/iPodなどを挙げ、これらの製品の米国での流通を阻止するべく訴えを起こしたという。両社の訴訟は5月にAppleがSamsungを「製品の類似性」について訴えた件を皮切りに、Samsungが韓国/日本/ドイツの3カ国でAppleを著作権違反で逆提訴するなど、全方位で拡大が続いている。また米国での類似性訴訟では前述のようにSamsung側の要求が棄却されており、これとほぼ同時期にAppleの韓国法人により韓国本国でSamsungへの訴訟が起こされている。今回のSamsungによるITCへの請求は、こうした一連の訴訟合戦の延長線上にある。なお、ITCは米国の貿易の仲裁管理団体であり、SamsungはAppleの特許侵害を理由に完成品のiPad/iPhoneの米国への輸入と流通を阻止する狙いがあるとみられる。
だが過去のこうしたITCの裁定を見る限り、審査には短くて1~2年程度の期間が必要となる。このため今回の申請には、どちらかといえば裁判を長引かせるための時間稼ぎの意味合いが強いとみられる。最終的に賠償金が高くなるリスクもあるが、現在急成長中のスマートフォン・タブレット市場でのシェアをこの間に拡大し、後にAppleとの和解条件を探るといった展開も考えられる。
このほか、AppleとSamsungの訴訟は今後の両社の部品供給に関する提携にどのような影響を与えるのかにも注目が集まっている。例えば、Appleが次世代iPhoneなどに採用を予定しているといわれる「A6」プロセッサでは、これまで同社が採用してきたSamsung製造のプロセッサではなく、台湾TSMCの最新製造プロセスを用いたものを採用することになるという噂がある。こうした噂は荒唐無稽なものではなく、特定部品のサプライヤ1社依存を嫌うAppleにとっては自然な流れで、なおかつ昨今のSamsungの行動を考えれば、むしろその関係が正常に続いていることが不思議に思えてくる。
だがWall Street Journalの30日(現地時間)の報道では、「Samsungとの関係が今後も続いていく」というApple幹部の言葉が紹介されている。一方でWSJはSamsung会長の李健熙(Lee Kun-hee)氏の「出る杭は叩く」という言葉を引用して、「Appleの一連の訴訟は、Samsungを排除するためのものだ」というAppleによるライバル掃討戦略の一環であるとの同氏の考えも紹介している。