プログラマーから文筆家まで幅広い層に愛用されているキーボード「Happy Hacking Keyboard」。今回新たに3モデルが追加、6月29日からPFUダイレクト限定で販売される。今回、そのうち「Happy Hacking Keyboard Professional JP Type-S」を試す機会を得られたため、その使用感などをご報告したい。
主な仕様 [型名] PD-KB420WS [キー数] JIS配列69キー [キー仕様] 静電容量無接点方式、押下圧45g、3.8mmストローク、シリンドリカルステップスカルプチャ、キーピッチ19.05mm [インタフェース] USB [接続ケーブル] 着脱式(ケーブル長1.8m)、キーボードに添付 [サイズ/重量] W294×D110×H40mm/520g [対応機種] USBポート付PC、Mac OS Xで使用の場合無償配布のドライバが必要 [直販価格] 29,800円
ふと気が付けば、ともに14年
キーボードは、プログラマーや文筆家など"(キーを)叩いてナンボ"の職業人にとって大切な仕事道具。それだけにコダワリが大きいデバイスであり、大切な相棒なのだ。
筆者にとって、Happy Hacking Keyboard(以下、HHKB)というキーボードは特別な存在だ。1996年末に発売された初代機を、当時PC-UNIX系ユーザーの多くがアキバ巡回ルートに組み入れていた有名ショップ「ぷらっとホーム」で見初めて購入、Windows NTやLinuxなど複数のOSのマルチブート環境に仕立てていたDOS/V自作機で利用していた。
それまで愛用していたNeXTキーボードの打鍵感は適度に重く"シッカリ感"があり、「Control」が「A」の左横にアサインされているというEmacs使いにとっての絶対条件も満たしていたため、可能なかぎり長く使いたかったのだが、飲み物をこぼしてしまい無念の昇天。この銘機に替わりうる数少ない選択肢のひとつが、初代HHKBだったのだ。
気に入った点は、大きめのDeleteキーとスペースキーもあるが、やはりコンパクトさだろう。これはHHKBの大きな強みで、東京大学にiMacとあわせて大量導入されている理由も、ここにあるとのことだ(1台の長机にiMacを3台並べる都合上キーボードの幅の狭さが重要だった由)。自分自身を振り返ってみても、Happy Hacking CradleとIBM WorkPad 30のセットで海外出張に連れ出したのは、ジャマにならない大きさがあったからだ。
以来、Lite版を含めHHKBを購入すること計4台。近ごろでこそ、Apple Wireless Keyboardなどワイヤレスキーボードを使う時間が増えたが、初代HHKBはいまなお書斎の定位置に鎮座している。キートップは変色してしまったが(洗剤をよく拭き取らなかったことが悔やまれる)、キー駆動部に経年劣化は感じられない。そのしっかりしたつくりが、HHKBの真骨頂なのかもしれない。
新採用の緩衝部品で打鍵音を30%低減
今回発表された新モデル「HHKB Professional Type-S」(日本語配列モデル かな無刻印/PD-KB420WS)は、これまでのProfessionalシリーズの基本設計を引き継ぎつつ、キー内部構造を見直している。試用した「HHKB Professional JP Type-S」は、発表された3モデルのうちの1台だ。
従来モデルのHHKB Professional JP(PD-KB420W)との外見上の違いは「Type-S」のロゴの違い程度。キートップの指との接触部分が緩いカーブを描くシリンドリカルステップ構造、静電容量無接点方式のキースイッチ、フルサイズ19.05mmのキーピッチ、45gの押下圧など、スペック的には従来モデルとの共通項が多い。
しかし、「Type-S」と銘打っただけの違いはある。キー内部には緩衝部品を新たに採用、打鍵音を従来モデル比30%低減(人間の可聴域)させることに成功しているのだ。
たしかに、手元にある墨モデルのタイプ音と比較すると刺激音は少ないようで、コツコツというクリッカブルな音が印象に残る。タイプ音は好みの問題もあるが、より静かなほうが周囲を気にせずタイピングに没入できるという利点はある。
キーストロークは3.8mm。従来モデルの4.0mmから0.2mm浅くすることで、軽快なタイピングを実現しているという。一般的な傾向からいうと、キーボードにこだわる層は深めのキーストロークを好むため、そこに配慮しつつ高速タイピング性を確保するという点では成功しているように思える。
キー駆動部のかみ合わせも見直されている。ここを従来モデルからさらにタイトにすることで、キー押下時に発生するブレを抑制し、入力ミスを減らすとともに安定した高速タイピングを可能にするという。一見したときの違いはわかりにくいが、確実に改良を経ているという印象だ。