来たるべきモバイルペイメント時代の到来に向けて、ここ英国でもベンダー同士が技術とサービス普及に向けた動きを活発化させている。Everything Everywhere、Telefonica UK、Vodafone UKの英国携帯キャリア3社は6月16日(現地時間)、モバイルマーケティングやモバイルペイメントの普及を目指したジョイントベンチャー設立を発表した。

Vodafoneは英国を拠点とする世界的な携帯ブランドとして著名な企業。スペインのTelefonicaは傘下に「O2」ブランドを抱えている。O2はiPhoneの英国ローンチ時に同製品を扱った唯一のキャリアとして知られている。Everything Everywhereは2010年に誕生した新しい英国の携帯ブランドで最大の顧客数を誇る。元はフランスのOrange UKとドイツのT-Mobile UKが対等合併の形で誕生したものだ。

今回の3社によるジョイントベンチャーの目的の1つには、広告主やリテーラー、銀行などが携帯電話を通じてユーザーと対話できるモバイルコマースのための単一のエコシステムを作ることが挙げられている。ベンダーが別個にエコシステムを構築するのではなく、あえて3社共同で進めることでスピードアップと拡大を図る狙いがあるとみられる。そしてモバイルペイメントだ。通信方式にはNFC(Near Field Communications)を使い、セキュアなモバイルペイメントシステムを構築する計画だという。これらは商品購入やサービスへの支払いだけでなく、各種クーポンなど情報システムやネットワークとの連動を想定している。ジョイントベンチャーが単一の窓口を用意し、この2つの仕組みを組み合わせることで、ユーザーと事業主の双方にとって役立つサービスを横断的に素早く構築することが可能となる。

なお、投資額やジョイントベンチャーの正式名は現時点で不明だ。3社によれば、必要な審査をクリアして年内にも正式に設立する意向だという。同種のサービスとしては、米携帯3社によるモバイルペイメント実証実験のほか、GoogleがMasterCardやCitiなど大手金融会社と組んでスタートする「Google Wallet」などが挙げられる。前者がカード会社を間に挟まない携帯キャリア同士のサービスなのに対し、Googleのケースでは決済に大手金融会社が絡んでおり、将来的に大きな市場に成長することを見越した綱引きをベンダー間で行っている様子がうかがえる。今回の英国でのジョイントベンチャーもまた、将来をにらんだ動きの1つといえるだろう。