2011年の「Electronic Entertainment Expo (E3)」を振り返ると、ゲーム業界の次の方向性を模索して各社が奮闘する様子が伝わってきたのが印象的だった。専用ゲーム機がスマートフォンやソーシャルゲームに押されるなか、ネットワーク対応を強化しつつ従来機の路線をそのまま貫いたのがソニーの「PlayStation Vita」だったと思う。一方でWiiで打ち出したインタフェースの新基軸をそのまま発展させ、新しいゲームの可能性を模索したのが任天堂の「Wii U」だと言えるだろう。

そのほかにも、プラットフォームの概念そのものを変える可能性のある「On Live」のようなサービスもあった。ここではゲーム機向け周辺機器としては空前のヒットとなったMicrosoftの「Kinect for Xbox 360」を通して、遊びの新しい可能性を追求してみよう。

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本稿で紹介するのはE3に先駆ける形で開催されたMicrosoftの「Xbox 360 E311 Media Briefing」での内容を基にしている。日本のユーザーにとって目立った新作やサービス等の発表がなかった(『Halo 4』や「Xbox Live TV」などの発表はあったが……)同メディアブリーフィングだが、ここでは昨年のE3で衝撃的なデビューを果たしたKinectを使った新ゲームや新サービスについていくつか紹介が行われている。基本的にはモーションセンサーを使ってプレイヤー自身が動き、画面のキャラクターを操作するのだが、今回紹介されたゲームやデモの数々は、音声入力のいわゆる「ボイスコマンド」が強化されているのが特徴だ。まずは写真だけではわかりづらいこれらサービスを、実際に動画で見てもらいたい。

米Microsoftのインタラクティブエンターテイメントビジネス部門プレジデントのDon Mattrick氏

動画
昨年のE3でも登場したダンスゲームの続編『Dance Central 2』。Kinectの特徴を理解するのに最適だろう
ここからが本稿の主題。ゴルフショットを手のモーションで行うのは従来どおりだが、ボイスコマンドでクラブをチェンジしたり、メニューを呼び出したりと、いちいち手を動かしてクラブを選択する手間がない
動画
こちらもボイスコマンドでメニュー操作が可能な『Tom Clancy's Ghost Recon』。いわゆるFPSのシューティングゲームなのだが、武器のカスタマイズ画面がやたら凝っているのが特徴。ハンドジェスチャーとボイスコマンドで自分好みの武器をカスタマイズできる。練習モードでのプレイヤーの射撃風景にも注目
こちらもFPSの『Mass Effect 3』。ゲーム中の選択肢が出現する場面で、実際にそのセリフをしゃべって好きなメッセージを選択できる機能がある。単にそれだけの話なのだが、ゲームに感情移入という意味では面白い試みだろう

このように、ボイスコマンドをゲーム中に組み込むことで操作の手間を軽減したり、より雰囲気を出すことができるのがわかるだろう。もともとKinectにはマイクが搭載されており、Xbox 360本体はボイスコマンドによる操作が可能だった。今後はこのような形でボイスコマンドを積極的に取り入れる対応タイトルが増えてくるのかもしれない。

また、このXbox 360本体のボイスコマンド機能も大幅に強化されている。従来まではメニューをボイスコマンドで呼び出しつつ、画面のスクロールや項目選択はハンドジェスチャーを使うといった形だったのだが、新サービスではより自然な形でボイスコマンドを取り入れているようだ。例えばXbox Liveの新サービスでは検索サイト「Bing」の機能が取り込まれており、ボイスコマンドで検索クエリーを入力できるようになっている。

動画
Xbox Liveの各サービスをボイスコマンドで呼び出している様子
新サービスではBingの統合も行われている。検索クエリーの入力もキーボードを使わず、ボイスコマンドで行うことができる

またXbox Liveの開発チームでは「Fun Labs」という名称でいくつかの実験的なサービスを開発してサイト内でベータ公開を行っている。これらは実験的だが、Kinectセンサーの新しい使い方という意味で非常に将来性を感じさせる。

動画
プレイヤーの顔をKinectのカメラで撮影して、その特徴を備えたパーツを拾い集めてXbox Liveのアバターを自動的に作成する。認識処理しているのはXbox Liveのサーバ側だが、いろいろ応用がききそうだ
背景と人物の2つのパーツを別々に撮影して、その写真空間上に立体的な"らくがき"を行う仕掛け。作成した"らくがき"は立体物の正面や裏側にもまわり込んで表現されるほか、画面全体を回転させて回り込んで様子をうかがうこともできる
動画
オブジェクトを立体的に認識させ、その立体モデルを生成する仕掛け。オブジェクトはKinectを使ってプレイヤー自身が操作できる。先ほどの1つめのFun Labsの仕組みに近いが、立体物を認識させるという点で異なる

ここまでを総括して、まだまだ実験段階といった印象も強いが、今後数年先でこれら仕組みを利用したゲームやサービスが多数登場するかもしれないと考えれば面白い。ちょっぴり未来の世界を、ぜひ体験してみてはいかがだろうか。