Microsoftは、COMPUTEX TAIPEI 2011の会場で「Microsoft Forum」を開催。台湾ベンダーに向けて同社の取り組みについて説明した。登壇したのは同社のOriginal Equipment Manufacturer(OEM) DivisionコーポレートバイスプレジデントのSteven Guggenheimer氏。

Steven "Guggs" Guggenheimer氏

今回の講演でGuggenheimer氏は、今年から来年に焦点を当てて、Windowsの将来、そしてMicrosoftが何を目指しているのかを説明した。

まずGuggenheimer氏は、PC業界の変遷を説明し、80年代初頭のPCとアプリが使われていた時代から、80年代中盤のクライアント/サーバ、そして90年代半ばからのインターネットの時代を経て、2000年代以降はクラウドやソーシャルネットワーク、Software+Serviceの時代になっていると説明。そして今後は、「組み込み、電話、PC、サーバ、そしてクラウドのそれぞれのエコシステムが接続し、ユーザーにとっても業界にとっても、大きな機会をもたらす」と説明する。

そして今、同社ではクラウドへ注力している。Guggenheimer氏は、電話、PC、サーバ、組み込みデバイス、クラウドなど、さまざまなエコシステムに対して投資を継続していき、多くのパートナーの革新的な成長につながるような投資も行っていくと強調する。

PC業界の変遷。DOS、Word Processor、GUI、Windowsという80年代初頭から、インターネットが登場し、無線LANやWeb 2.0が生まれた09年代半ば、そして2000年代に入り、クラウドコンピューティングなどの時代になった

クラウドの時代では、タブレットやPC、テレビ、モバイルがシームレスに連携することになる

クラウドとさまざまなデバイスの接続でキーとなるのはWebブラウザのInternet Explorerで、さらにXbox Live、Office、検索といったサービスへの投資も継続する。この業界のエコシステム、IE、サービスという3つの分野での投資を行い、クラウドへの展開を強化していく考えだ。

Guggenheimer氏は、OEM/ODMベンダーの多い台湾メーカーに向けて「製造業の進歩」も重要だと話す。「幸運なことに、我々はここ台湾に、革新を続けているすばらしいパートナーを持っている」とGuggenheimer氏。そうしたODMパートナーとして紹介されたのはCompal、Foxconn、Pegatron、Quanta、Wistronといったメーカー。

そしてさらに「別のパズルのピース」としてGuggenheimer氏が紹介するのが入力インタフェースだ。通常はキーボードとマウスに親しんでいるが、この進化も続いており、言語認識、タッチ操作、手書き入力と手書き認識、ジェスチャーといったインタフェースを紹介する。

WindowsなどのOSを搭載したデバイス、WebブラウザのIE9、サーバ・クラウド用OS、XboxやZuneなどのエンターテインメント製品、Officeなどのソフトウェアやサービス、Windows LiveやBingなどのSNS、検索サービスなど、Microsoftが提供する製品を活用し、パートナー企業がさらなるビジネス機会を構築できる

さらに、Windows Embedded for Automotiveについても紹介し、音声や画面タッチで操作できるような機能は、PC業界の技術を車内という環境にも適用したものだと説明する。

Natural User Interface(NUI)のひとつとして、自動車のUIを紹介。音声とタッチパネルで操作する。各自動車メーカーがMicrosoftの製品のパートナーとなっている

そして第2世代のSurfaceを紹介。テーブル型のデバイスで、指や手などを使って操作できるデバイスだが、テーブルの底面にカメラがあって表面に置かれたものを認識。テーブルに指を置いたらそれを検出し、紙を置くとそこに書かれていることを読み取れる。それぞれのピクセルがカメラになる「Pixel Sense」技術が使われており、テーブルに置いた名刺を読み込んだり、タグなどを読み取ったり、いろいろな応用ができる。

紙と指を認識するSurface。左の写真は底面から見たもので、文字と10指をそれぞれ認識している

タブレット向けの手書き認識機能もWindowsはサポートしているが、最近登場してきたインタフェースのジェスチャーでは、ゲーム機向けに使われているKinectがある。デモビデオでは、Windows Phone端末とKinectを組み合わせたゲームを紹介し、新しいゲームの操作感を示していた。

タブレットの手書き文字認識で中国語を披露するGuggenheimer氏

こうしたさまざまなインタフェースによって、よりリッチなプラットフォームに、もしくはより仕事がしやすい環境作りが実現できる、とGuggenheimer氏は語る。

端末に関してGuggenheimer氏は、携帯電話向けとして発表されたばかりのWindows Phone 7の新バージョン「Mango」を紹介。コミュニケーションやゲーム、写真など、携帯電話を使った機能でよりリッチな体験を実現できる、としており、500以上の新機能を追加したという。

Mangoでは、新たなパートナーとして富士通の名前も挙がっている

iPhone 4のブラウザとの比較。より滑らかに動作する

Mangoでは、Internet Explorer 9を搭載しており、iPhone 4のブラウザよりも高性能である点を紹介し、Webサービスを快適に利用できる点を強調。PCで再生中の楽曲のジャケット写真を携帯のカメラに写すとその曲を検索してくれるという機能をデモしてみせるなど、Mangoの利便性をアピールする。

PCの画面を撮影して楽曲を検索、その場で購入できる

Mangoは今年後半に登場予定で、新たに台湾Acer、中国のZTE、日本の富士通からも端末が出ることになるそうだ。

Guggenheimer氏は、「(携帯)電話のエコシステムとPCのエコシステムは、さらに接続し始めている」と話す。これまでのエコシステムだけで完結するのではなく、デバイス同士がつながることでエコシステムがさらに拡大していくというわけだ。

Windows 7のエコシステムもさらに拡大している。現在、PCユーザーは12億を超え、Windows 7は18カ月で3億5,000万ユーザーに達しているそうだ。インターネットユーザーの20~25%はWindows 7を使っているという。

「良いニュースがある」とGuggenheimer氏。まだ75%は古いPCを使っており、こうしたユーザーがよりよい体験のために、さらにWindows 7へ移行していくことで、よりエコシステムが拡大してくると期待する。

PCもさらにさまざまな製品が登場しており、2つの液晶画面を持つAcer W500、Core i7を搭載しながら薄く、スリープなら10日間電池が持つASUS UX21などを紹介しながら、さまざまなPCメーカーからさまざまなタイプのPCが存在し、幅広い選択肢がある点を強調する。

クラウドのプラットフォームとしてのInternet Explorer 9も重要な要素となる。IE9はGPUのハードウェアアクセラレーターを活用して高速動作が可能になっており、Windows Phone 7にも搭載され、クラウドサービスのクライアントとしてIEの位置づけをさらに強化していく。

Microsoftのクラウドソリューション

こうしたサービスを、さまざまなデバイスで利用することができるようにIE9が重要な役割を果たす

PC、モバイル、テレビでエンターテインメントやゲームサービスを利用できる

コミュニケーションや検索も提供。検索機能では各種ソーシャルサービスとの連携も実現している

PCではソフトウェア、外出先などではOffice Web Apps、企業はOffice 365といったように、状況に応じて使い分けられる

大企業では自社でサーバを構築してプライベートクラウドとしての活用もサポートする

クラウドサービスとしては、Live、Bing、Zune、Office、CRM、LyncなどのWebアプリケーションを用意している。そしてこうしたサービスでは、さまざまなデバイス同士が連携して動作することができる。

例えばWindows Phone 7で写真を撮ると、顔検出機能で人物の顔を抽出できる。その写真をWindows Liveサービスに投稿するとすぐにWindows PCに保存され、さらにDLNA機能を使ってPCからテレビに出力できる。音楽やゲームでも同様に機器やサービスをまたがって連携させることができるようになるという。

Officeも同様で、PC上でのリッチクライアントとしての利用に加え、Office Web Appsを活用すれば、ブラウザ経由でどのPCからでもOfficeファイルにアクセスできる。携帯電話からの利用も可能だ。ビジネスユーザーでも、Exchange、SharePoint、Lyncといったサーバ製品をクラウド化したOffice 365を用意し、中小企業がサービスとして利用できるようになっている。

PCのソフトとしてだけでなく、WebブラウザやWindows Phone 7からでもOfficeが利用できる

Guggenheimer氏は、端末からソフトウェア、サービスにいたるWindowsエコシステムは成長し続け、Microsoftは「革新し続けることにコミットしている」(Guggenheimer氏)。さらにGuggenheimer氏は、「台湾を始め、世界のパートナーと協力していくことで、すばらしい成長を遂げられる」と強調し、集まったベンダーの人々に、さらなる協力を要請して講演を終えた。

講演前には現地のDJによるデモ演奏が行われていた。Windowsタブレットにアプリを入れ、それをプロジェクタに投影して指で操作する、というもので、DJ自身は2日間で操作をマスターしたそうだ

COMPUTEX会場のMicrosoftブースでは、パートナーの製品が一堂に会し、そのエコシステムをアピールする形になっていた

ずらりと並べられたPC群

その中で特に目を引いたのが、マウスコンピューターのロゴが入った見慣れないマシン。未発表製品のサンプルモデルだろうか? CPUにCore i3、メモリ4GB、HDD 1TB、AMD Radeon HD 5450を搭載していた