流通ジャーナリストの金子哲雄氏

震災後初のボーナス消費に関する意識調査に関するメディアセミナーが8日、都内某所で開催され、監修した流通ジャーナリストの金子哲雄氏が意識調査から伺える消費者意識について解説した。主催はシタシオンジャパン。

震災当日から調査当日まで避難などせず、通常の生活をしている20~50代男性1,000名(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県・茨城県・群馬県・栃木県)を対象に実施。期間は5月21日~22日。インターネット調査会社のモニターを利用して行われた。

夏のボーナス受け取り額予想を聞くと、「とても増えそう」「やや増えそう」と答えた人は12.0%にとどまり、「とても減りそう」「やや減りそう」は43.1%だった。夏のボーナス使いみちについては、「貯蓄」(48.9%)が約半数に上り、以下「生活費の補填」(29.3%)、「旅行・レジャー」(24.6%)、「保健全般の支払い、ローン返済」(21.6%)、「趣味」(15.0%)、「飲食・グルメ」(10.2%)、「高額商品の購入」(5.2%)と続いた。例年に比べてどれくらい貯蓄・消費するか聞いたところ、「例年通りのバランスで貯蓄・消費する」が62.3%と最多。「貯蓄を優先する」は28.5%にとどまり、「消費を優先する」(7.9%)と答えた人の3倍以上だった。「例年以上に貯蓄を優先する」と回答した人を年代別に見ると、年代が高くなるにつれて貯蓄意識が低くなる傾向が明らかになった。

消費意識を分析したところ、震災前に比べて省エネや環境性といった要素を選ぶ傾向が震災前より強まっていることが明らかになった。年代別でみると、40~50代男性は他の世代に比べてそれらの意識が高い傾向になる。金子氏は「当初、私の予想では年代が上がるにつれて貯蓄志向高まると予想していた」と意外な結果に驚いたという。

省エネ・環境性を重視する人が震災前に比べて増加。一方、ブランド力や流行を重視する人は減少傾向にある

省エネ・環境への配慮意識が高まっていることを受け、メーカーや量販店にヒアリング調査を行ったところ、バルミューダの新型扇風機「GreenFan2」やトヨタ自動車の新型ハイブリッドカー「プリウスα」、ブリジストンサイクルの「アンカーシリーズ」、シーリングファンといった、高額ながらもデザイン性や省エネ・環境性能といった機能性を備えている商品の人気が高いことが窺える。これらの商品は全て、省エネ・環境性能といった機能性と優れたデザイン性を備えており、金子氏は「購入時の価格より購入後のランニングコストが抑えられる商品を選ぶ傾向にある」とした。なお、金子氏によると「私が調査したところ、家電量販店は扇風機が6倍の売れ行き、省エネタイプのエアコンは20万円前後の高額商品ながら、販売が1カ月前倒しで動いているなど、省エネ環境配慮製品の人気の高まりを実感している」と語った。

元来は商業施設の利用が多いが、ここ1カ月ほど、一般からの問い合わせが増えているという。金子氏は「エアコン+αで温度むらをなくし、6割ぐらい消費電力を抑えると人気を集めている」と説明

総括として金子氏は「他世代に比べても省エネ・環境意識の高い40、50代の消費行動が市場活性化につながる。彼らは見た目の判断と商品の機能性をバランスよく捉えた『二目惚れ買い』をしており、高額な商品でも社会性に優れれば購入に踏み切る傾向が強い」と話した。

金子氏は「省エネ・環境意識の高い40、50代の消費行動が市場活性化につながる」と強調した

震災前に40~50代男性を対象に同社が行った消費意識・行動の変遷調査によると、バブル期を経験した40~50代男性の51.3%が「20代のときに、100万円以上の製品を購入したことがある」と回答。一方、「見た目やデザインの良さに加えて、商品の性能・品質を見極めて購入する」と44.0%が回答。買い物経験の多さから、自分なりの価値基準を身につけた消費傾向が窺え、さらに社会意識が他世代より高いことが明らかになった。

金子氏は今回の調査とあわせて「見た目だけではなく機能性として社会的であるか、買ったことでどう世の中に役立てるかなど、直感+α本質のバランスがよい世代。買い物経験から自分なりの価値基準が備わり、選び方のポリシーがはっきりしてきたのではないか」と指摘した。