6月初旬に、米カリフォルニア州ランチョパロベルデで開催された「All Things D Conference」(D9)と台湾の台北市で開催された「Microsoft Partner Preview COMPUTEX 2011」の2ヶ所で一般向けに初披露されたWindows 8の新UIと搭載タブレット。これに関して"面倒な制約"があると台湾Acerトップが発言していたことは記憶に新しい。その後の報道によれば、こうした規制はUI改変や本体デザインのみならず、提供ベンダーの絞り込みにまで及ぶ可能性があるようだ。
この件を報じているのは米Bloombergと米Wall Street Journalで、それによればWindows 8タブレット関連でMicrosoftと契約したチップメーカーとハードウェアメーカーは対の関係となり、その対となったチップメーカーとハードウェアメーカーの組み合わせでしか製品を製造出荷できなくなるようだ。これは製品の品質を高めることが目的で、契約に同意したメーカーはMicrosoftからインセンティブを受けることが可能になるという。
現在、ARM SoCのチップメーカーとしてはTexas Instruments (TI)、Qualcomm、NVIDIAの3社、同チップを使ったハードウェアの開発製造にはWistron、Foxconn、Quanta Computerの3社が挙げられており、この報道を参考にすればそれぞれが対の関係になるとみられる。なお、こうした制約は製品提供初期だけのもので、実際に製品が市場に多く流れるようになった段階で縛りが解除され、新規ベンダーの参入や既存ベンダーの他社への提供も可能になるという。Wall Street Journalでは、GoogleがAndroid 3.0 "Honeycomb"で採っていた、OSソースコードを公開するベンダーを当初限定する方針にならったものだと指摘している。
現時点で判明しているそのほかの制約としては、デザイン上の制限が挙げられる。Windows 8のUIでは画面端をタッチすることでシステムメニューを呼び出す仕組みを採用しているため、タッチスクリーンのパネルを表示面のぎりぎりまで枠で囲い込む構造だと機能しない。そのため、Microsoftではベンダー各社に凹凸のない全面フラットなガラス面のタッチスクリーンを採用するよう呼びかけている。このほかWindows Phone 7の前例にならえば、Windows 8においてベンダー各社によるUIカスタマイズは認められない可能性が高く、ソフトウェア的な変更も行いづらい。このため、Windows 8搭載マシンはベンダー各社間で製品デザイン上の差異が少ない比較的画一的なものになると予測される。
これに今回の制約が加わることで、よりいっそうその傾向が強まるものとみられる。まず最初にリファレンスデザインを契約ベンダーに作らせ、後から続くベンダーもそれにならわせようとするためだ。これ自体は悪いことではないし、むしろ先行するAppleやGoogleに対抗するために必要な措置だが、これまでハードウェアや最終的な製品デザインにあまり深く関与しなかったMicrosoftにとっては大きな方針転換となる。