不動産投資信託(REIT)を複数組み込んで運用する投信「REITファンド」が、人気を集めている。楽天証券の4月の投信ランキングでは、1位~4位までを、REITファンドが独占。なぜREITファンドが人気を集めるのか、どのようなREITファンドが人気なのか、楽天証券 投信債券事業部長の佐藤澄子氏に聞いた。

楽天証券 投信債券事業部長の佐藤澄子氏

――「REIT」とはどういったものなのでしょうか?

不動産投資というと、個人の方が普通にイメージされるのは、マンションに投資したりとか、土地を買ったりとか、一般にはそういうイメージだと思いますが、実際に不動産と買うとなると、小さな金額ではないですし、またいろんな手続き関係とか面倒ですよね。

そこで登場したのが「REIT(Real Estate Investment Trust、リート)」です。「REIT」とは、不動産に投資するファンドのこと。簡単にいうと、不動産のプロが、不動産を複数購入し証券化して、小さな金額にわけることで売買をしやすくしたり、個人の方でも気軽に投資できるようにしたものです。証券投資信託は、ファンドマネージャーが中に入って、プロの目で株式や債券などのなかから投資するものを選び、パッケージ化して、個人の方が投資しやすくしたものですが、そういう意味では、REITは不動産版の投資信託ともいえます。

――「REIT」はどんな仕組みになっていますか?

不動産投資法人が資金を集めて、対象となる複数の事業用不動産などを購入し、その不動産から生じる家賃収入などから経費を除いた分を、出資した人に出資額に応じて分配するのが「REIT」の基本的な仕組みです。もちろん、所有している不動産の一部を売却して、得た売却益も、分配の対象になります。出資者にとっては、登記や家賃回収などの手間がかからないので、不動産に直接投資するよりも面倒がなく、かつ、少ない金額で不動産に投資できるというのがREITの大きなメリットといえます。

出資金を集める不動産投資法人が上場している場合、「上場REIT」といいますが、通常の株と同様にそれを売買することもできますし、運用会社が、複数の上場REITなどをパッケージにした「REITファンド」を売買する方法もあります。例えば、ある特定の投資法人をリアルタイムで取引したい人は、上場REITに投資すればいいですし、例えば、日本と海外両方の「REIT」に投資したいという場合、「REITファンド」という選択肢もあります。

――「上場REIT」そのものにも投資できるし、それらを組み込んだ「REITファンド」に投資することもできるわけですね。では、最近の「REIT」市場の動向はいかがでしょうか?

海外のREIT市場は、リーマン・ショック後にかなり落ち込みましたが、一番市場の多い米国では、かなり値を戻してきていて、ゆるやかに値上がりしてきているかな、という感じです。一方で、日本のREIT市場も意外と震災の影響はないようで、割と安定した傾向といえます。

上場リートの一般的な仕組み

――「REITファンド」は、「上場REIT」のみに投資するものなのでしょうか?

日本の場合はSPC法(資産流動化法)があって、不動産投資法人が上場できるように法律が整備されていて、ほとんどのREITが上場しています。そのため、国内不動産型の投資信託の投資先は上場REITの場合が多いといえます。ただ外国不動産型の場合は、そうとは限りません。

――「REITファンド」の投資対象となる国は、どのような国が多いのですか?

主に、日本や米国、欧州、豪州などの先進国が中心で、新興国というのはほとんどないですね。

――なるほど。楽天証券の投資信託ランキングでも、このところ、「REITファンド」が上位を占めていますが、人気の秘密は何でしょうか?

いわゆる「分配金利回りが高い」、という点が第一に挙げられます。「分配金利回り」は正式な用語ではないですが、最近注目を集めています。投資した金額に対して、将来の運用実績を示すものではありませんが、過去どのくらい分配金が支払われていたかを表したものです。投資信託の中には、高いもので年率20%ぐらいのものもあります。4月にランキングトップの「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」の分配金利回りが10%以上ですし、2位の「DIAM J-REITオープン(毎月決算コース)(オーナーズ・インカム)」も分配金利回りが20%くらいです。

――「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」はグローバルに分散投資する「REITファンド」ですよね。「DIAM J-REITオープン(毎月決算コース)(オーナーズ・インカム)」は、投資対象が日本のREIT「J-REIT」に投資する「REITファンド」なんですよね。

以前は、グローバル型の「REITファンド」が人気でしたが、今年の2~3月くらいから、「J-REIT」ファンドが人気が高くなってきました。為替リスクがないことが人気の理由のようです。海外に投資する場合、どうしてもREIT価格が上がっても円高に触れてしまうと損失を被ってしまうので、そのリスクをとりたくないということで、「J-REIT」ファンドが見直されてきています。投資信託ではないですが、震災による移転を見込んで、福岡の不動産に投資するREITが登場したりなど、最近はバラエティに富んだものもでてきています。

そのほかには、4位の「ラサール・グローバルREITファンド(毎月決算型)」や、14位に入った「楽天USリート・トリプルエンジン(レアル)毎月分配型」などが、人気を集めています。

楽天証券 2011年4月投資信託販売額ランキング

順位 ファンド名
1 ワールド・リート・オープン(毎月決算型)
2 DIAM J-REITオープン(毎月決算コース)(オーナーズ・インカム)
3 損保ジャパン・グローバルREITファンド(毎月分配型)
4 ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)
5 短期豪ドル債オープン(毎月分配型)
6 DIAM新興国ソブリンオープン通貨選択シリーズ(ブラジルレアルコース)
7 MHAM株式インデックスファンド225
8 フィディリティ・USハイ・イールド・ファンド
9 ピムコ・グローバル・ハイイールド・ファンド(毎月分配型)
10 eMAXIS 新興国株式インデックス
11 楽天日本株トリプル・ブル
12 楽天日本株トリプル・ベア
13 DIAM 日経225ノーロードオープン
14 楽天USリート・トリプルエンジン(レアル)毎月分配型
15 ニッセイ日経225インデックスファンド
16 エマージング・ボンド・ファンド・ブラジルレアルコース(毎月分配型)
17 ダイワ グローバルREIT・オープン(毎月分配型)(世界の街並み)
18 住信 STAM 新興国株式インデックス・オープン
19 PCAインドネシア株式オープン
20 eMAXIS 先進国株式インデックス

――分配金利回りが高いこと以外に、「REITファンド」が人気を集めている理由はありますか?

これはネット証券ならではといえますが、「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」や、3位の「損保ジャパン・グローバルREITファンド(毎月分配型)」などは、ノーロード(販売手数料がゼロ)で、費用が安くすむというメリットがあります。

ちょっと話しがそれますが、今まで対面の証券会社や銀行などで投信を購入されてきたお客様の中には、「退職後に時間ができてインターネットをさわってみると、こっちのほうが手数料が安いことがわかった」という理由で、当社で買ってくださるというパターンもあります。すでに知っている商品に限ってはネットで買うといった、商品によって賢く購入先をわける投資家も増えてきていると思います。

REITは、年金生活者の方の保有が多いのですが、そういう場合、数千万、億単位で買うといった傾向がみられます。投資信託全体に、残高別の顧客比率は、50~100万円の層が最も多いです。一方「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」を保有している場合だと、残高が1,000万円以上の方は5%もいらっしゃいます。保有年代別にみても、分配金を年金代わりにと考えている50~60代のリタイヤされた方が多いようです。ただ最近は、若い20~30代の資産形成層の方にも「REITファンド」が浸透してきました。

――販売手数料の安さが魅力なわけですね。

この他にも、日本銀行が包括的な金融緩和政策の一環として、資産買入などの基金を創設し、J-REITの購入すると報じられたことも、「REITファンド」人気の一因となっているようです。

また、REITの投資先となる不動産の価格は、常に値動きがあってリアルタイムで取引するという性格のものではないため、1日1回値段がつく公募投資信託との親和性が高いといえます。ゆっくり投資できる商品というのも、年金生活者層に「REITファンド」が人気になっている一つの理由ではないでしょうか。

さらに、テナントの状況など、需要と供給のバランスによっては、家賃収入が増え、利回りが上がるという期待もできます。

――「REITファンド」を購入する上で、注意すべき点などはあるのでしょうか。

これは、REITファンドに限りませんが、特に定期的に分配金を出すファンドの場合、基準価格が下がっているのに、分配金が毎回同じまま配当されている場合は注意する必要があるかもしれません。分配金は、ファンドの運用成績に応じて支払われるものですので、本来は、基準価額と分配金は両方上昇すると考えられます。それなのにこういった現象が起きているということは資産自体が目減りしているかもしれない。例えば、純資産を削ってまで、分配金を支払っているものは注意が必要です。そういうことを確認する意味でも、資産残高や基準価額の推移など、ファンドの中身を確認したほうがよいと思います。

――今後、「REITファンド」購入の動向は、どのようになりそうでしょうか?

「REITファンド」だけでなく、全体的にいえますが、低コスト志向はますます高まると思います。現時点では、年金生活者層による毎月分配型のREITファンドの購入がコアになっていますが、資産形成層の方にも、分散投資の観点で積立する際に、REITファンドもポートフォリオの一つとして保有する選択肢が浸透していくと思います。

そういった資産形成層に提供する商品は「低コスト」であることが要になります。ネット証券は、人件費などが抑えられる分、販売手数料無料の商品も多いです。

これはREITに限りませんが、ネットで投資信託を買えることをまだまだ知らない人もいるので、投資信託の販売自体が大きく伸びる余地があると思っています。

――ありがとうございました。