ますます熱いシュタゲ! 松原プロデューサーに聞く本家制作秘話

2009年10月に発売され、コアなSFファンをも唸らせるシナリオの完成度と、個性豊かなキャラクター、そして斬新なゲームシステムが大きな話題を呼んだXbox 360用アドベンチャーゲーム『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』。

今年4月からはアニメがスタートし、6月にはPSP版『STEINS;GATE』(23日)、Xbox360用ファンディスク『STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん』(16日)の発売も控えるなど、ここへきて次々と新展開を見せているシュタインズ・ゲート。このいまなお熱い人気タイトルのプロデューサーである5pb.(現MAGES.)松原達也氏に今だからこそ明かせる裏話を伺うことができた。

5pb. 科学ADVシリーズ プロデューサー 松原達也氏

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※株式会社5pb.は2011年6月1日より株式会社AG-ONEと合併し、株式会社MAGES.(メージス)として発足しています。本記事は両社の合併前に行なったインタビューをもとにしています。

──さっそくですが、シュタインズ・ゲートの開発の発端と経緯についてお話を聞かせてください

松原 発端はまだ前作の『CHAOS;HEAD(カオスヘッド)』をリリースするだいぶ前のタイミングだったのですが、「次の面白いテーマを考えている」と志倉(千代丸氏、5pb.社長)から言われたんです。でも「いま教えると『CHAOS;HEAD』の開発に集中できなくなるから教えない」って(笑)。その時点では初期のアイデアとして、携帯電話を使って過去にメールを送れるという構想はあったみたいですね。

『STEINS;GATE』の舞台は東京・秋葉原。このSF的要素が満載の作品はどうやって構築されていったのだろうか

──実際に形としてプロジェクトが動き始めたのは?

松原 2008年末くらいから、志倉と林(直孝氏、脚本)と僕で打ち合わせをしながらプロットを決めていきました。科学シリーズではいつもこのやり方なんですが、志倉のほうからタイムマシン関係の書籍とか、志倉自身が作成した20~30以上はある膨大な設定資料や大筋が渡されるんですよ。そこにゲームの設定をかみ砕いた内容と、大まかなキャラ設定などが書かれてあって、3人でそれをもとに長い時間をかけて会議をするわけです。で、あるていど形になってきたら、林が全部あずかって大まかな話の流れを作って、その間に僕のほうではキャラデザの選定だとかラフの発注などをします。

──そのキャラクターデザインをされたのはイラストレーターのhukeさんですが、今回が初めての依頼ですよね

松原 最初の設定資料を見た段階で、陰謀が関わってくるタイムトラベル物ということで、これは普通のギャルゲーじゃないぞという感じを受けたんです。前作『CHAOS;HEAD』では、ホラーなんだけどあえてギャルゲーな見た目にすることでギャップを狙ったんですが、そことも差をつけたかったですし、なにより今回は絵柄を普通のギャルゲーにしちゃうとつまらないなと思いました。それで面白い絵を描く人はいないかなとネットやコミケで足を使って探していたんですが、その頃ちょうど『ブラック★ロックシューター』に火がつき始めた頃で、志倉にこの人の絵柄が面白いから頼んでみようという話をしてコンタクトしたわけです。今ではもうhukeさんの絵柄なしでは考えられないですね。

──次にシナリオについてお話を伺いたいのですが、シュタインズ・ゲートにはこれまでのタイムトラベル物とは違う新しさを感じました

松原 シュタインズ・ゲートが他のタイムトラベル物と唯一違うのは、タイムマシンを作るところから始めるっていうことなんです。それが物語の切り口として新しいし、そこに今までにあったのとはちょっと違う世界線の理論を用いているのがよかったのかなと。その理論は最初の志倉メモの段階からあって、志倉が僕や林、ニトロプラスさんに対してがホワイトボードで講義したんですよ。でも、最初ぜんぜん理解できなくて、この人は何をしゃべってるんだろうって。ただ、「こうなるとこうなって、だからタイムトラベルできるんだよ!」って何度も説明を受けるうちに説得されて、「なるほど、たしかにタイムトラベルできますね」って(笑)

スクリプタがやって来るのがコワイ! シナリオ修正作業


──あれほどに膨大な設定があると、そこで生じる矛盾を消していくというのも大変なのでは?

松原 シナリオが完成した後は、林とも何度も詰めた後なので、その時は矛盾はないと思っているんですよ。ところが実際にゲームとしてプログラムに落とし込んでいく段階で、細かい矛盾がどんどん出てくるんです。僕たちが気づかなくても、ゲームにシナリオを組み込んでいくプログラマや演出をつけていくスクリプタから指摘がくるんですよね。「この時点で世界線が変わっているってことは、このメールの履歴が残っているのはおかしい」とか。それで僕と林が頭を抱えて、どうしよう……ってなるんです。本当にその作業はシナリオが上がってからも延々とやってましたね。スクリプタの席は僕らの席からは遠いところにあるんですけど、その人がスクッと立ってこっちに向かってくると、「あ、ヤバイ」って身構えたりして(笑)。マスターアップの1週間前くらいまで矛盾が出てきて、本当にぎりぎりまでいじっていましたね。

──気が遠くなりそうな作業量ですね。開発期間はどれくらいだったのでしょう

松原 開発期間はそれほど長くはなくて、シナリオが完成した後の実作業に入ってからは半年くらいですね。アドベンチャーゲームを作る中ではほぼ最短といってもいいくらいの期間で作れました。これは『CHAOS;HEAD』よりも圧倒的に短いですね。一度組んだチームだったので、最終的な物量をどのくらいにすれば、スケジュールの中で回るかとか、その指示の出し方だとか、そういう指示系統含めてやりやすかったです。効率重視でベストなやり方ができたと思います。

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