トムソン・ロイターと聞くと、皆さんは何をイメージされるだろうか。多くの人は「ロイター」という名前から国際ニュースを扱う媒体をイメージするのでは、と思う。金融情報・国際ニュースなどを扱うマーケティング・ディビジョン(トムソン・ロイター・マーケッツ)がまさにそうしたイメージの事業である。が、その一方、そうした報道媒体のみならず、科学技術分野の研究開発などのサポートとして、学術文献、特許、ライフサイエンスに関する専門情報を扱うプロフェッショナル・ディビジョン(トムソン・ロイター・プロフェッショナル)という部門も存在している。

トムソン・ロイターの事業の分け方。良くニュースなどで目にするのはマーケッツの方で、プロフェッショナルの方は学術分野などで活用されているため、まさにその道のプロ向けのサービスとなっている

そうした意味では以前、同社が提供する学術文献・引用索引データベース「Web of Science」について、学術情報ソリューションビジネスユニットを統括するExective Vice President,Scientific&Scholarly,Healthcare&ScienceであるKeith MacGregor氏に話を聞いたが、同社ではそうしたデータベースの提供のみならず、企業などの知的財産(知財)の活用支援なども行っている。同社の知的財産の活用を支援する部署(IP Solution Devision:IPS)は、データベース的に各種の特許情報をクライアントに提供する「Thomson Innovation」をベースとし、コンサルティングなども行っており、2011年3月には日本の特許コンサルティング会社「ニッポンテクニカルサービス(NTS)」を買収し、日本でのコンサルティング能力の向上を図ったほか、2010年12月にはThomson Innovation」のインタフェースの日本語化なども実施し、日本へのサービス強化を図っている。

今回、知的財産データを提供するIPSビジネスの最高責任者(President)であるDavid Brown氏に話を聞く機会を得たので、なぜ、今、日本市場に向けた各種の強化を行っているのかを聞いたので、その様子をお届けしたい。

何故、今、日本なのか

Thomson ReutersのPresident,IP SolutionsであるDavid Brown氏

IPSの主なビジネスはクライアント企業のイノベーション創出のサポート、トレードマークのブランドサポート、IPの管理、そして権利などの保護で、IPへの興味は世界中で年々強まっており、「日本はその中で知財市場としては2番目の規模を持つ国だ、確かに中国などの市場が伸びているが、それでもまだまだ日本には規模としては適わない」という。

それだけの市場規模を持つ地域だが、「日本はハイクオリティかつビッグなサービスが求められている」とするほか、もう1つ、同氏は「日本メーカーのグローバルでの活躍をサポートする」必要があるとしており、Thomson Innovationを日本語化した「日本特許モジュール」を提供したことで、「コンテンツだけでなく、GUIなども日本向けとなり、真の意味で日本企業にグローバルなサービスを提供できるようになった」と同氏は説明する。

「我々は、自分達が提供するシステムそのものに価値があると思っている。それは、世界の90%以上の国の知財情報をカバーしていることのみならず、知財を提出した企業のニュースやその背景などもコンテンツとして提供することで、付加価値としてより正確な判断を可能とすることができるようになる。また、そうした情報の分析ツールやコンサルティングの提供も行っている」と、Thomson Innovationに対する自信を見せるが、「IPSがカバーするのは、すべてのテクノロジー分野だ。日本では特許庁のすべてのセクタ、商標などもカバーしている。もし、分野ごとにわければ、それは知財チェーンとして意味をなさない」という全体的な視点に立った思考を重視してサービスを届けるという姿勢がその自信を裏付けとしてあるとする。

ちなみに、これまで特許庁の情報は英語に変換したものが提供されていたが、日本語化サービスの開始により、現在は日本語で見ることが可能となっている。