東日本大震災からそろそろ3カ月が経過しようとしている。余震は一時期より減ったもののまだあり、不安が完全に払拭されたとは言いがたい。
今回は、さくら事務所の管理組合向けサービス責任者 マンション防災コンサルタントの土屋輝之さんが「災害に強いマンションと管理組合の備え "本当に必要なことは何か"」と題したプレスセミナーから、よく言われている防災常識の「誤解」を紹介する。
地震だ火を消せ
1923年の関東大震災の教訓から生まれた標語だが、無理して消そうとしてやけどする事故が多いと土屋さん。「現在、東京消防庁では『その時10のポイント』として『グラッときたら身の安全』『落ち着いて火の元確認初期消火』を啓蒙しています。揺れがおさまってから、あわてずに火の始末をしようと改められているのです」。
地震、机やテーブルの下に隠れる
避難訓練では定番となっている行動パターンだが、これも誤り。「地震が来たら落下物や転倒の恐れのある家具などのない安全な場所へ移動します。食器などがあるダイニングからはすみやかに離れましょう。ただし、逃げ遅れた場合や安全な場所が近くにない時は机やテーブルの下に身を隠すのは最後の手段として有効です」。
集団で広域避難場所に避難
こちらも避難訓練で定番となっている行動パターンだ。「地震直後に身の安全を確保できた人が全員で避難してしまうと、物の下敷きになった人や自力で行動できない高齢者などを救助、援護する人がいなくなってしまいます」。また、下敷き被害は救助までの時間が生死を分けるとのこと。「救助に時間がかかり、エコノミー症候群のように血栓ができて結果、死に至ったケースもあります」。
自家発電があれば停電しない!?
これは新築マンションの販売センターで営業マンが誤って伝えていたケースがあったという。「規模の大きなマンションでは消防用設備の非常用電源として自家発電設備が設置されていることがありますが、各住戸に電源が供給されることはありません」。
地震発生! 断水に向けてバスタブに注水
地震の発生後、生活用水確保のため多くの住戸でバスタブに注水すると貯水構内の水はあっという間になくなってしまう。土屋さんは「これはモラルの問題ですが」と前置きした上で、「入浴後の残り湯を流さずにおくか、使用する前にあらかじめ貯めておく方法がベスト」と強調した。
水があれば住戸数のトイレは使える!?
汚水の排水設備に折損の発生がなく、生活用水に十分な備蓄があることが前提での話。「1回の利用(大の場合)、約10~12Lの水で流す必要があります。また、パッと見は破損がなくても、汚水管が壊れていれば汚物は流れません、あっという間に詰まってしまいます」。簡易トイレや便袋の備蓄があれば安心だ。