財団法人都市緑化機構とNPO法人緑のカーテン応援団主催(国土交通省共催)の、「今からできる、誰でもできる緑化~緑のカーテンで夏を乗り切ろう~」が16日、緑と水の市民カレッジ(日比谷公園日比谷グリーンサロン3階)で開催された。

節電が大きな課題となる今年、会場には60名の定員を上回る参加者が集まり満席状態。皆、熱心に講師の話に聞き入っていた。本稿では、緑のカーテンの作り方と楽しみ方について紹介する。

体感温度は周囲との関係性で決まる

最初に講演した株式会社チームネット代表取締役の甲斐徹郎氏は、冷房に頼らない生活術を紹介した。まず行ったのは、体感実験。会場の参加者に、机の金属部分と資料の紙に触れたときの感覚を尋ねた。参加者は鉄の方が冷たいと実感したが、実際に温度を測ってみるとどちらも26度。同じだった。会場に小さなどよめきが広がる。

どちらも同じ温度だったのは、会場の気温が26度であるため。体感温度は、自分の体の熱が外へ逃げていく速さで異なる。体感温度と実際の温度は違うわけだ。体感温度は、周囲の放射熱と気温の和の平均値で表される。甲斐氏は体感温度を下げる大切さをアピールした。

家を涼しくするためには、家の表面温度を下げればいい。すだれは有効な手段のひとつだ。電球を太陽熱に見立てた実験で、すだれの効果が体感されたが、さらにすだれに水をかけるとみるみるうちに温度が下がることが立証された。その急速な下がり方には驚きの声があがった。

植物の葉が温度を下げる「蒸散(じょうさん)作用」の効果がこうして実感することができ、「緑のカーテン」の重要性が改めて伝えられた。

同じ28度の家でも、環境によって感じ方は変わってくると話す甲斐氏

アスファルトの道路に反射した日光は、体感温度を高くしてしまう

すだれに霧吹きで水をかけると、さっと温度は下がっていった

緑のカーテンに遮られた室内の様子。クーラーのいらない贅沢な涼しさが感じられる

大事なのは、緑を楽しむこと

これまで実際に「緑のカーテン」づくりに取り組んできた団体等の活動が紹介された後、NPO法人緑のカーテン応援団理事の三ツ口拓也氏が、「失敗しない緑のカーテン育成技術」というテーマで講演した。

プランターの大きさ、土や堆肥について、ネットの張り方、苗の見分け方、水やり、病虫害対策などについて具体的な話が進められた。「緑のカーテン」に利用できる植物はさまざまだが、ゴーヤやヘチマ、朝顔などが初心者には向いているようだ。

これらのポイントについては、同法人のホームページ等に詳しく紹介されている。5月に始めればまだ間に合うというので、興味がある方は早速取り掛かってみることをおすすめする。

会場で配られたハンドブック。緑のカーテン応援団のサイトにも同様な解説がある

ホワイトボードを使ってゴーヤの育成について紹介する三ツ口氏

ぶどうで緑のカーテンをつくることもできるという

ある学校の緑のカーテンの成長写真。育っていく様子を観察するのも楽しみだ

植物を育てるというのは、いろいろとたいへんな面があるのも事実。興味深かったのは、とある小学校でクラスによって生育の違いがあったという話だった。植物の様子をより多く見に行っていたクラスの方が、明らかに高く伸びていたという。やはり愛情(?)が植物を育てるようだ。

緑のカーテンづくりにはマナーも大切。特にマンションなどでは気をつけたい

今年、特に「緑のカーテン」が注目されているのは、震災による節電対策ということは確かだが、同氏は「まず何よりも緑を育てることを楽しむ」ことが大切だと話した。「節電のためだから」と必死になっていると、おそらく途中で疲れてしまうはず。

ここは小学校の頃に戻った気分で、毎日、植物の成長に一喜一憂してみてはどうだろう。初心者にとっては知らないことばかりの連続かもしれないが、試行錯誤しながら取り組めば、それ自体が大きな楽しみとなるに違いない。

失敗をおそれず、そして、失敗しても「仕方ない、また来年トライだ!!」と考えるくらいで、気軽に真摯にチャレンジを、ぜひ。