季節は初夏。例年ならば、そろそろエアコンが稼働し始める季節なのだが、未曾有の電力不足が叫ばれている今年は状況が異なるようだ。話は空調だけに留まらない。(産業界だけでなく)我々個人も、節電には協力したいところだ。とはいえ、太陽光発電システムを装備した家に住み替えといったことができる人は限られているわけで(筆者には当然無理だ)、ここはあくまでも可能な範囲で、ということになる。このコーナーでは、これから夏に向けての節電と、万が一停電が起こった際の対策について、手軽にできる範囲での情報をお届けしていきたい。もちろん、ここでお届けする内容には、既に分かりきっている、といったありきたりの方法が多く含まれているだろうが、その辺りは、ご容赦いただきたい。また、各社から発売されている、あるいは発売が予定されている、こういった事態に役立ちそうなグッズも、折に触れて紹介していきたいと考えている。

第1回目は、待機電力についてお届けしたい。待機電力とは、その家電製品が使用されていない状態で消費している電力ということになる。テレビを例に考えてみよう。現在のテレビの多くは、主電源ボタンがあり、それがオンになっている状態で、リモコンの電源ボタンを押すと起動する(本体にも電源ボタンは付いているが、あまり使いやすい場所にはないのが普通だ)。オフの状態でも、少なくとも、赤外線リモコンの受信部分や、それを動かすための電源部分などは通電していることになる。これが待機電力を生む。待機電力のもうひとつの大きな要因は、タイマー動作だ。こちらも、リモコンと同様に、電子的なタイマーで電源のオン/オフを行えるようにしている機器では、やはりそこで待機電力が発生する。

待機電力を無くすには、主電源ボタンをオフにするか、あるいはコンセントを抜くかということになる。確かに、それによって待機電力は無くすことができるが、それは果たして意味のあることなのだろうか。待機電力の削減は、最近の家電製品の大きなテーマにもなっており、ここ1~2年、驚くほど待機電力が少ない製品も投入されている。例として、テレビの待機電力を見てみよう。東芝が2006年に発売したスタンダードクラスの26V型液晶テレビ26C2000では、待機電力が0.5Wあった。それに対して、2011年に発売された26A2では、0.17Wと、大幅に待機電力が減少している。これは他のメーカーの製品も同様で、同じサイズで見てみると、パナソニックのTH-L26X3は0.2W、ソニーのKDL-26EX2400は0.25W、シャープのLC-26DZ3は0.1Wといった具合で、26V型の現行モデルでは、待機電力は0.1~0.25W程度に抑えられている。同じテレビの消費電力を見てみると、26C2000では121W、26A2では62W、TH-L26X3では46W、KDL-226EX240では54W、LC-26DZ3では57Wとなっている。ここでは、計算を簡単にするために、消費電力を60W、待機電力を0.2Wとして考えてみよう。すると、1時間テレビを見るのに消費する電力と、300時間分の待機電力が等しいということになる。12日分以上だ。5分間テレビを見ていただけでも、1日分以上の待機電力に匹敵する電力を消費する。つまり、何を言いたいのかというと、テレビの場合、こまめにコンセントを抜いて待機電力を減らそうと努力するよりも、見ていないときにスイッチをオフにしたほうが、圧倒的に電力消費を抑えることが可能ということだ(これは最新のモデルに限った話ではない。26C2000でも、1時間のテレビ視聴の消費電力は、242時間分の待機電力に匹敵する)。

最新のテレビでは、使用しているときの消費電力だけでなく、待機電力も省電力化。写真は東芝のREGZA「26A2」

テレビとセットで使われれうことが多いレコーダーでは、状況が異なる。レコーダーは、タイマーで録画予約を行う関係から、完全にコンセントを抜いてしまうことはしにくい製品だ。しかし、最近のレコーダーでは、いくつかの起動モードを備えている製品が少なくない。起動モードはメーカーによって呼び名は違うが、だいたい省電力モード、通常モード、高速モードといった感じになる。省電力モードは、リモコンの受光部やタイマー関連など最低限必要な部分以外は通電させないモードで、通常モードは、省エネモードに加えて、HDMI連動関連の機能に必要な部分などを通電させておくモード、高速モードは、レコーダーの起動を速くするために、スタンバイ状態にしておくモードだ。例として、シャープのBDレコーダー「BD-HDW75」の消費電力を見てみよう。消費電力は約35W、省電力モード時の待機電力は約0.2W、通常モードでの待機電力は約0.7W、高速モードでの待機電力は約25Wだ。メーカーによっては、高速モードよりも速く(0.5秒~1秒)起動するためのモードを備えている製品もあるが、その場合の待機電力は、動作しているときの消費電力に限りなく近いものとなっている。省電力モードや通常モードの待機電力は十分に少なく、テレビの待機電力と同じように考えて問題ないだろう。しかし、高速モードの待機電力は、便利さのためとは言え、多すぎる。節電のためには、通常モードか、省電力モードでの運用を心がけたいところだ(なかにはこういった製品のように、通常モードでの高速起動を実現しているモデルも有るのだが)。

約12秒で起動できる「標準モード」を装備するソニーのBDレコーダー「BDZ-AT900」

待機電力の中には、止めてしまった方がよいものと、そうでないものとがある。次回はAV機器ではなくて生活家電の待機電力について考えてみたい。