「敵の敵は味方」という話はよく聞くが、ここスマートフォン業界ではその勢力図がはっきりとしてきたようだ。米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏は現在米フロリダ州オーランドで開催されているBlackBerry Worldの基調講演のステージに登場し、BlackBerryで知られるカナダのResearch In Motion(RIM)との提携を発表した。これにより、今後BlackBerryデバイスではGoogleの検索や地図サービスに代わり、Bingがデフォルトのサービスプラットフォームとして採用されることになる。これはMicrosoftにとって今年2月のNokiaとの提携に続くもので、AppleのiOS、GoogleのAndroidら2社を追撃するための同盟戦略の一環となる。

Ballmer氏の同イベントでの登場は、RIM共同CEOのMike Lazaridis氏の基調講演でのスペシャルゲストとして紹介されたもの。この発表の内容は米Bloombergなど複数のメディアの報道で確認できる。同件における金銭供与や条件等の詳細は不明だが、現在BlackBerryが採用しているGoogle検索やGoogle Mapsに代わり、今年秋のホリデーシーズン商戦前までにBingでの置き換えが実施されることになるという。InformationWeekでの報道によれば、このBingの機能統合は地図アプリの提供といった表層的なものではなく、OSのより深い範囲で統合が進められることになるようだ。なお以前のNokiaとの提携でMicrosoftは、Windows Phone 7とBing採用の見返りとして同社に対して10億ドルの資金供与を行ったことが関係者の話として知られている。NokiaのケースではソフトウェアやサービスでMicrosoftの製品を全面採用する見返りとしての資金提供だったため今回の条件とは異なるが、検索エンジン経由の広告収入の売上分配や、OSへの機能統合にかかる開発資金の供与など、RIMにおいても何らかの金銭的条件見返りが発生している可能性が高い。

スマートフォン市場では先行していたMicrosoft、Nokia、RIMだが、ここ最近のユーザー数急増の波に乗っていた後発組のAppleやGoogleに比べて求心力に乏しく、シェアをじりじりと削る状況が続いている。特にGoogleはAndroidの端末への膨大なインストールベースを利用してモバイル市場における検索シェアを拡大し続けており、同分野で競合するMicrosoftにとって戦略上の大きな課題となっている。今回のNokiaに次ぐRIMとの提携は、こうしたトレンドに一定の歯止めをかける狙いがあるとみられる。Nokiaとは異なり、RIMは今後もBlackBerry OSの採用を続けるため、あくまでサービス分野での提携という位置付けになりそうだ。まさに「敵の敵は味方」といった提携スタイルとなる。また同様の話でいえば、米Hewlett-Packard(HP)のPalmと「webOS」が同じ立場におり、Microsoftが同様に何らかの提携を持ちかけている可能性がある。