Internet Explorer (IE) 9の提供開始 (2011年3月15日)から1カ月を待たずに、米Microsoftは「Internet Explorer 10 Platform Preview」を開発者向けにリリースした。MIX11のオープニングとなる初日基調講演で発表したもので、集まったWeb開発者/Webデザイナーに対して同社は、IE9から取り組み始めた"ネイティブHTML5"を伸ばしていく姿勢を強くアピールした。
IE10は3週間前に開発がスタートしたばかりだという。まだ極めて初期の段階であり、初のPlatform Previewには、CSS3 Multi-column Layout、CSS3 Grid Layout、CSS3 Flexible Box Layout、CSS3 Gradients、ECMAScript 5 Strict Modeなどのサポートが組み込まれているのみ。今回はWeb開発者/ WebデザイナーにIE10の開発方針を示すためのリリースと言えそうだ。
IE開発を率いるDean Hachamovitch氏は「1年前にIE9の初のプレビューで手がけ始めたことを、IE10プレビューでも継続する」と語った。高速かつ表現力豊かで、インタラクティブに動作するHTML5アプリケーションを追求すれば、従来のブラウザのランタイムに少なからず負担がかかる。そこに着目して、IE9ではHTML5アプリの実行におけるハードウエアの活用に乗り出した。
基調講演ではIE9における成果として、Foursquareの「Playground」、カヤックの「SVG女子」、Sparkart Groupの「Director's Cut」、Namco Bandai Gamesの「The World’s Biggest Pac-Man」などが紹介された。
ロケーションSNS、Foursquareのデータを視覚的に表示する「Playground」。写真はラスベガスの中心で、ホテルの高さや、Foursquareメンバーによる混雑ぶりなどをひと目で確認できる |
アングルを変えたり、ドラムソロを追加するなど、Webページ上でカスタムミュージックビデオを作成できる「Director's Cut」 |
パックマン誕生30周年に作られた「The World’s Biggest Pac-Man (世界最大のパックマン)」、左右または上下のトンネルを抜けると次々に違う面が現れるパックマンの迷宮 |
WindowsにおけるフルハードウエアアクセラレーションのネイティブHTML5が武器になるのは、Web標準に準拠したブラウザ互換の実現があってこそだ。すべてのブラウザで同じように機能するマークアップが、Windowsではより快適に動作する。「最も優れたHTML5は、OSにネイティブであり、Webサイトはトランスレーションレイヤーを最小限にとどめられる。そして最も優れたHTML5では、サイトが同じマークアップを使用できる。同じHTML、同じCSS、同じスクリプトがブラウザを通じて正しく機能する」とHachamovitch氏。
昨年後半からGoogleがChromeのリリースサイクルを加速させている。デベロッパーやデザイナーに新しいWeb技術をすばやく提供できるようにするためだ。こうした安易な新機能の実装にMicrosoftは否定的である。安定した技術の提供につながるとは限らないからだ。「新しい技術に開発者が求めるのは持続性だ」という。IE9もWOFFやNavigation Timing、Tracking Protectionなど新興技術を数多くサポートしているが、これらは主要なWebブラウザを通じて同じマークアップを使用できるものばかりだ。一方でIndexedDBやWebSocketsなど、同じマークアップを使えない可能性がある技術はHTML5 Labsを通じた実験的な提供になる。Internet Explorer Test Driveで配布するIE10 Platform Previewについても頻度より具体的な進展を重視し、従来よりも長い8~12週間の間隔でアップデートを提供するという。