11日、東日本大震災が発生して1カ月が経過した。被災地では、避難所生活を余儀なくされている被災者は多く、仮設住居への入居も始まったばかり。避難所での生活が長期化することでの心身への影響は計り知れない。
日本ヘルスケアニュートリケア研究所のアドバイザーで、稲毛病院 整形外科・健康支援課部長・昭和大学医学部統合医学科兼任講師の佐藤務先生は、栄養不足による心身への影響に警鐘を鳴らす。特に佐藤先生が指摘するのは、ビタミン・ミネラルの不足だ。
佐藤先生は「生命及び健康維持には、栄養学的にはまず必須栄養素(糖質・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)の補給を意識しなければなりません。なかでも、被災地での食生活に特に不足しがちなのはビタミン、ミネラルです」と指摘する。
ビタミンやミネラルの欠乏は、うつ傾向や感染症、血栓症、心臓や腎臓などのさまざまな臓器の機能低下を招く可能性があるとのこと。また、ビタミンB1が欠乏すると脚気を発症し、心不全を起こして死に至る危険もあるという。佐藤先生はビタミンB1以外に、ビタミンB3の不足が慢性化することでうつを引き起こすことを懸念する。ビタミンB3は軽い活動から重労働までエネルギー代謝の際に消費されるが、B3不足が慢性化すると、セロトニン不足を招き、うつや不眠を招くこともあるそうだ。佐藤先生は「心のビタミンであるビタミンB群をまんべんなく摂取するようにしましょう」と呼びかける。
とはいえ、避難所でバランスのよい食生活をすることは難しいのが現状。「できればご飯と大豆製品をセットで最低2食は摂取してほしいが、総合栄養補助食品であるカロリーメイトなどを一時的に利用したり、マルチビタミンやミネラルが含まれたサプリメントなどの補助食品を補給するのも手」と話す。こうした中、ファンケルがビタミン類のサプリメント約3,000点を被災地に提供したほか、日本ケロッグが、ビタミン・ミネラルが含まれているシリアルスナック22万800食を寄付するといった企業支援も行われている。
佐藤先生は「今回の震災で、食事および栄養摂取が不安定な状況が長く続くことが予測されます。また、あまりのショックや衣食住等が満たされない劣悪な環境下にさらされて食事も喉を通らない方、寒さや不安で眠れない方、心身の極度の疲労感で身体を動かせない方、うつ状態で何も考えることができなくなっている方が大勢います」とした上で「うまく補助食品も利用し、さまざまな心と体の栄養失調や栄養の欠乏症、それに伴うさまざまな心身の疾病という二次被害を防ぐことが重要です」と強調した。