「映像は音楽からインスパイアされる部分が大きい」

――雪に包まれた稚内の映像の美しさも印象的でした。

物語の舞台は、雪に包まれた稚内

三木「毎日、マイナス10度の寒さの中で撮影したんです。撮影中は凄い雪で、予定とは違ったのですが、その雪に包まれた白い風景のおかげで、より良い映像になったと思います」

――あの映像は、キービジュアルのアートワークありきだと思っていたのですが。

三木「本当に雪は偶然なんです」

――悩みつつ生きる若者たちの姿を描くという部分では、前作『ソラニン』とも共通していますね。

三木「稚内でなくても、どこの十代でも持ちうる感情を表現したいというのはありました。外から見れば幸せな家庭環境なのに、本人は誰にも理解してもらえないとか、自分の居場所がないというような感情を持っている。誰でも、そんな時期や瞬間があると思います。それを『管制塔』では描きたかったです」

――バンドや音楽も『ソラニン』同様、重要な意味を持つ作品ですね。

三木「僕は映像を作る上で、音楽からインスパイアされる部分が大きいので、僕的には音楽が映画で重要な位置を占めるというのは自然なことです。なので、意識して音楽モノの映画を作っているという感じはないですね」

「十代のまだ何者でもない感じを描きたい」

――三木監督は、これからどのような作品を作っていきたいのでしょうか。

三木「青春モノというか十代、二十代の、まだ何者でもないという感じを描きたいですね。周囲から見たら大した問題でなくても、本人にとっては大きな悩みや問題を抱えて悩んでいる。そんな姿や、考えるエネルギーは興味深いですし、それを描いてゆきたいです」

――三木監督は、悩める十代というか、そういう若さを俯瞰で見ているのでしょうか。それとも監督自身の中に、若さというかイノセンスのようなものがあり、主観的に見ているのでしょうか。

『管制塔』では、繊細な十代の姿が描かれる

三木「どうなんでしょうね。青臭さなのか、悶々としていた十代の感じを引きずっているような感じはありますね。十代の頃の『自分はこうありたい』と思っていたことに対して、『そうあれなかった』といった過去を補完するという感じはありますね」

――今後、映画監督だけでなく、PV監督も続けていくのでしょうか。

三木「そうですね。PVも映画も自分の中では、映像を作るモチベーションに大きな違いはないんです。実作業としては、フルマラソンと短距離走くらいの違いはあるのですが(笑)」

――『管制塔』をどう楽しんで欲しいですか。

三木「この作品をGalileo Galileiのファンに楽しんで欲しいというのはもちろんですが、このバンドの楽曲を聴いた事のない人にこそ、観て欲しいというのはありますね。最後、曲が鳴った瞬間に、何というか腑に落ちるようになっていて欲しいという想いがあります。エンディングに『管制塔』が流れた瞬間、見ている人が物語を反芻して、"良い曲だな"とか、"気持ちいい"と感じてくれれば嬉しいですね」

映画『管制塔』(ソニー・ミュージックエンタテインメント/SMEレコーズ配給)は2011年4月9日~4月22日、2週間限定上映

インタビュー撮影:石井健

(C)2011 Sony Music Entertainment (Japan) Inc./ SME Records Inc.