Adobe Digital Publishing Suiteのふたつの料金体系
本ツールを導入したいと考えている出版社や制作会社は多いが、「Photoshop」や「Illustrator」などのパッケージソフトウェアと異なり、本ツールはソリューションとして提供されている。そのため、利用する際の料金体系も少々わかりにくい。
Adobe Digital Publishing Suiteは「InDesign CS5」を基幹とした生産ツール群であり、これで作成した電子マガジンは主にAppStoreで販売される。そのため、一部売れるごとにアドビに本ツールの使用料を支払う必要がある。これは雑誌業界における印刷所のような役割を果たしている。紙の雑誌は一部印刷するごとにコストがかかるが、本ツールの場合は紙の代金ではなく、サーバー使用料などが発生するわけだ。
肝心な料金体系は「プロフェッショナルエディション」と「エンタープライズエディション」の2種類。これは、出版社の規模や刊行物の種類に応じて選ぶことができる。プロフェッショナルエディションは、発行部数が比較的低い出版社向けの料金体系。月額699ドルに加え、一冊売れるごとに30セントずつアドビに支払う。売れた分だけ支払うので、電子マガジンの売れ行きに応じてアドビへの支払金額は変動する。
もうひとつのエンタープライズエディションは、年間発行部数が500万部クラスの大手出版社向けの料金体系。こちらの場合はビューワーのカスタマイズや定期購読システム、Eコマースエンジンの実装など、さまざまなカスタマイズが行なわれる場合が多いため、基本料金は設定されていない。これは、同社がこれから新たに開発しなければならない要素も多く、スタンダードな料金を設定しにくいためだ。
リバーシッジ氏は、「ふたつの料金体系があるので、多くの出版社に喜んでもらっています。我々としては出版社が電子書籍をマーケットに投入するのを妨害したくありません。もっとも柔軟なプライスモデルができたのではないかと自負しています」と語る。