2011年第二四半期にリリースが予定されているアドビ システムズの電子出版開発ソリューション「Adobe Digital Publishing Suite」。現在、本ツールで開発された200冊を超える電子マガジンが、AppStoreで販売されている(2011年4月8日現在)。米アドビ システムズにて、本ツールのマーケティングを担当しているリッキー・リバーシッジ氏に電子出版の現状と本ツールの可能性について伺った。
日欧米における電子出版業界の違い
Adobe Digital Publishing Suiteは、現在「プレリリースプログラム」と呼ばれるオープンベータテストを行なっている。すでに世界中で3,000社以上が参加しており、そのなかでもコンデナストでは、『WIRED』や『The NewYorker』、『VOGUE』など、本ツールを用いた19種類の刊行物をAppStore上に展開中だ。このほか、米マーサスチュワートの『Martha Stewart Living』やスウェーデン・ボニエール(Bonnier)の『DN+』、イギリスやドイツの出版社からもたくさんの電子マガジンが発売されており、多くの読者に喜ばれているとリバーシッジ氏は語った。
このように世界中で広まりつつある電子出版だが、日本は欧米に比べると普及が遅れているというのが現状だ。AppStoreに登録されているAdobe Digital Publishing Suiteを用いた電子出版物209冊(2011年4月8日現在)のうち、日本で作成されたものはわずか3冊のみ。リバーシッジ氏によると、現在の電子出版市場は5割がヨーロッパで、3割がアメリカ、残りの2割がアジアだという。しかし「現在の数字だけ見ると日本は遅れていると思われるが、日本の出版社は電子出版に対してとても関心が深い。今後、日本のコンテンツは急激に増加するだろう」とリバーシッジ氏は予測する。
日本が欧米に比べて遅れをとっている原因はいくつかある。ひとつめは本ツールの開発キットが登場した当時、マニュアルは英語で、日本人にとって敷居が高かったこと。ふたつめの理由は、iPadの普及率の問題。そして、もっとも大きな理由は、出版社と印刷会社の問題だ。日本の出版社は欧米と異なり、印刷会社との関係性が重要視されている。そのため、すぐに紙から電子出版へ移行するという動きはない。現在は大手印刷会社も電子出版化へのインフラを整えつつあるため、出版社と共に紙から電子出版へと移行しやすい時期にきているという。