アンリミテッド・スピリット(限界のない向上心)。そんなラドーのスローガンを象徴するかのように挑戦的な、そして驚きにあふれるアイテムが、BASELWORLD 2011会場で発表された。

そのひとつは、常識を越えた薄さを持つ「ラドー トウルー シンライン」シリーズだ。ケース厚はなんと5mm、重量はわずかに41g。おそらくこれは、世界で最も薄くて軽い腕時計ではあるまいか。たしかに女性の腕なら、こんな繊細なラインの時計が似合うだろう……。などと思っていたら、なんとこれがメンズウォッチだと言うではないか! 女性用には、これよりさらに0.05mm薄いSサイズバージョンが存在するのだという。"薄い時計=女性用"という概念を覆す。それが、「シンライン」シリーズの狙いのひとつなのだ。

エレガントなメンズウォッチ「ラドー トウルー シンライン ブラック L」

「シンライン」のサイドビュー。この薄さは驚き意外の何物でもない

実際に腕に着けてみると、なるほど、驚くほど装着感が自然なことに気付く。ぴったりと肌に沿うスリムなフォルム。軽さに加えて熱伝導が良く、すぐに体温で暖まってくれるセラミックボディ。そっと腕を包み込むラバーストラップ。もはや時計としてより、"身に付けるもの"としてデザインされているのだろう。男性にとっても、「着けたい」と十分に感じさせるアイテムだ。

ムーブメントはクォーツで、その薄さは1mmに過ぎないという。このムーブメントがあればこそ、「シンライン」は実現できたのだ。高級腕時計は今や機械式全盛の時代。だが、ユーザーにとってそれは必ずしも正解なのかと、ラドーの開発陣は考えたに違いない。機械式にとらわれず、提案すべきライフスタイルを明確に見据えていたからこそ、この美しい時計が誕生したのである。

「シンライン」は、ブース展示でもイチオシの扱い

カラーバリエーションにはホワイトもあるが、男性にはブラックとR.Gの組み合わせが意外にマッチする。Lサイズの価格は17万3,500円。ここまで薄さを追求せず、またセラミックの質にもこだわらなければ、近いイメージを持ちつつ3万円前後で買える商品も市場にはあるだろう。ただし、「シンライン」を腕に巻けば、"別次元のクオリティ"をはっきり感じられると断言する。これは、セラミックに30年もこだわり続けているラドーだからこそ、実現できた作品なのだ。

"傷が付かない腕時計"を新素材で体現する「ラドー D-STAR」

メンズウォッチという視点からは、「D-STAR」もオススメの新作。これは、ラドーの歴史に深く根付いたもので、1962年に発売された世界初のスクラッチプルーフウォッチ「ダイアスター」の後継モデルだ。それは、その名からも容易に想像できるだろう。「ダイアスター」は、ハードメタルといわれるタングステンカーバイトとジルコニウム合金によるケースを用いていたが、「傷が付かず、長く使えるオートマティック」というラドーの王道的コンセプトを受け継ぎ、再びフルラインで発売される。発売時期は10月を予定している。

1986年からラドーが時計分野で使用しているハイテクセラミックスと、独自の新素材で登録商標を取得した「セラモス」を使用しているのが大きな特長。「セラモス」は、チタニウムカーバイトに金属合金を合わせたもので、モールディングインジェクション方式により高圧で素材を射出、エッジの利いたシェイプが成型できるようになった。現在、これができるのはラドーのベンダーだけとのこと。

「D-STAR」は、1962年のデザインを再解釈して、世界で初めてのバレルシェイプとエッジの流れるラインを力強く再現している。実は昨年すでに発表されていたのだが、ラドーは材質のクオリティに満足できず、新作の発売に至らなかった。そして今年、満を持して再度の発表となったのである。素材のパイオニアとしての自負が、いささかの妥協も許さなかったのだ。

ムーブメントは「ETA2824-2」。これは汎用ながら非常に丈夫なムーブメントだ。いくらケースに新素材を使い、傷が付かない耐久性を現実のものとしたところで、中身が壊れてしまっては元も子もない。そこで、あえて壊れにくい、メンテしやすい汎用ムーブメントが選ばれた。もっとも硬度が高い、かつ量産の利く素材「セラモス」と、熟成されたETAのムーブメント。この組み合わせが、ラドーの今後の50年を支えていけるモデル「D-STAR」を生んだのだ。

シンプルかつラグジュアリーな「ラドー r5.5 XL クロノグラフ」

そして最後に、XLサイズでありながらユニセックスモデルという興味深い新作「ラドー r5.5 XL クロノグラフ」を紹介する。これはインダストリアルデザイナーであるジャスパー・モリソンとのパートナーシッププロダクツ「r5.5」を大型化したモデル。女性が腕に置けばクロノグラフという意外性を持ち(しかし、これが違和感なく決まる!)、男性にとっては、XLサイズが普通備えがたいソフィスティケート(洗練)された感覚を味わえる。これらは、いずれも従来の腕時計が無意識に避けてきた要素だ。しかし、それを「ラドー r5.5 XL クロノグラフ」はいとも簡単に飛び越えてしまった。その点で、これもまたアンリミテッド・スピリットに満ちた一本といえるだろう。価格は36万7,500円で、5月発売。その他、XXLも3型新しく発売される。

また、ラドーは中国の女優レネ・リウ(劉若英)をアンバサダーに迎えているが、本作は彼女のデディケーションアイテムとしてシリアルナンバーが刻印される予定。「想像できるなら達成できる。達成できるなら行動する」という思想のもと、傷の付かない時計を作るという夢を実現したラドーには、マーケットで無理と言われることをする人をサポートしていこうという強い気概がある。レネ・リウは、中国で初めて、女優であり、作家であり、シンガーであり、また、自らの音楽レーベルをセルフプロデュースするなど多才かつ行動力を持つ人物。伝統的な男性社会の中に身一つで切り込んでいく、後の人が続くべき価値観を切り拓く姿は、ラドーのもの作りの姿勢と見事に重なる。

セラミックケースの製造過程もディスプレイされていた

今年のラドーのテーマカラーである「白」をアピール

自分の夢に制限を付けないこと。その大切さを、母国を遠く離れたBASELWORLD 2011の会場で、あらためて実感することができた。