――今年のMobile World Congressでは、キャリアのダムパイプ化という問題が関心を集めました。
Kolon氏 : このところ、データトラフィックが急増しています。ユーザー数の増加、1ユーザーあたりのデータ量の増加によるもので、スマートフォン人気が拍車をかけています。2014年には、スマートフォンの出荷台数は5億台に達し、1月あたりのデータ消費は合計で370万テラバイトに達すると予想されています。一方で、ARPUは伸び悩んでいます。解決策は、単純に言えば、コストを押さえ、ユーザーや利用量を増やして利ざやを拡大することです。そのためには、単にモバイルネットワークを提供するのではなく、価値を付加する必要があります。
新たに発表したJunos Pulseはその部分を支援するものです。PulseはiPhone、Android、Nokia S60、Windows Mobile、BlackBerryと主要プラットフォームに対応するモバイルアプリで、企業ユーザーと個人ユーザー向けの機能スイートです。Juniperは2010年にS-Mobileというモバイルセキュリティ企業を買収しており、Pulseのセキュリティ部分はS-Mobileの技術を利用したものです。キャリアはこれを利用して、アンチウイルス、パーソナルファイアウォール、紛失対策、モニタリングなどのサービスを提供できます。たとえば紛失時に遠隔から携帯電話にロックをかけたり、データを消去できます。また、Juniperが従来から企業顧客向けに提供しているSSL-VPNのクライアントという役割も持ちます。JuniperのSSL-VPNはすでに4000万人が利用しているサービスです。
多くのアナリストが「モバイルセキュリティが今後数年で大きな問題になる」と予言しており、必要だと思うユーザーは対価を払って利用するでしょう。
キャリアはこのような付加サービスにより収益増を図れます。Juniperはサービスの追加、品質維持など多角的に支援します。
――モバイルネットワークは高速化し多機能化しています。今後、固定とモバイルの進展をどのように見ていますか?
Kolon氏 : 世界的に見ると多くの地域でFTTHへの投資は続いており、固定がなくなるとは思えません。自宅でギガバイト級のインターネットが利用できるというエクスペリエンスは、多くのユーザーが歓迎すると思います。これを信頼できる形でモバイルで実現するのは、チャレンジを伴うことです。
わたしが担当するアジア太平洋では、日本、韓国、シンガポールのようにネットが普及した先進国もあれば、インドや中国の都市部以外のようにまだ普及していない地域もたくさんあります。このような地域では、無線技術の方が固定よりも重要性が高く、無線側の機能が発達して数百Mbpsでの通信に対応する端末が出てくれば、無線で十分でしょう。
Juniperの技術ソリューションはコアネットワークの部分なので、固定/モバイルに関係ありません。帯域への需要は高く、光ケーブルなどは今後もネットワークの一部分で必ず必要となります。ここは無線が置き換えできない部分です。モバイルは、3G、4G、Wi-Fi、WiMAXと変わりますが、根幹の部分は変わらず、MXにプラグインすることになります。われわれはMXの上にサービスを構築し、基地局側では、EricssonやNSN(Nokia Siemens Networks)などと提携します。
――一方で、Ericssonなどモバイルインフラベンダーも固定側を強化しています。
Kolon氏 : EricssonやNSNとは10年以上、協業関係にあり、2Gと3Gで重要なノードであるGGSN(Gateway GPRS Support Node)を共同で構築した経緯もあります。
業界が発展し、将来的に競合の要素も出てくるかもしれません。われわれ自身も事業計画の下に拡大しています。ですが、現時点では協業する重要なパートナーです。先のChina Mobileの契約では、Ericssonも入っています。
――モバイル分野で2011年の事業戦略のフォーカスは?
Kolon氏 : キャリアの抱える問題を解決することです。JuniperはIP、およびIPプラットフォーム上で動くサービスにフォーカスしており、モバイルではここをモバイル向けに最適化します。
たとえば、IPv4アドレス問題が話題ですが、IPアドレス問題を処理する1つの方法にNAT(ネットワーク・アドレス変換)があり、グローバルアドレスとプライベートアドレスを変換します。世界には40億のIPアドレスしかありませんが、中国だけで13億の人がいますし、最近では、モノもインターネットに接続されるようになっています。中国のような大規模ネットワークでこのような処理ができることは重要になってきます。このように数千、万単位の端末を高速処理するキャリアグレードのNATの重要性が高まっており、JuniperはMobileNextでこれを提供します。