米Juniper Networksはここ数年、フォーカスをモバイルにまで拡大し、モバイルキャリア向けIPソリューションの開発と提供を積極的に展開している。同社は2月、モバイル・コア・ネットワーク機器「MobileNext」など、モバイル分野の次世代ソリューションの中核となる製品を発表した。Juniperでアジア太平洋地区のキャリア事業を統括するMatt Kolon氏に、新製品を中心にJuniperのモバイル戦略について聞いた。

米Juniper NetworksのMatt Kolon氏

――MobileNextを発表しました。最新ソリューションの内容とその狙いについて教えてください。

Kolon氏 : 2月の「Mobile World Congress」で、MobileNext、サービス配信のための「Service Delivery Gateway(SDG)」、動画ソリューション「Media Flow」の拡大、セキュリティスイートのクライアント「Junos Plus」などを発表しました。

オペレータは大きな課題に直面しています。ユーザーは高速なモバイル通信を求めているが、予算は限定的です。コモディティ化が進行しており、少ない投資で高速なモバイル通信を提供することが必須となっています。さらには、競争に勝つには差別化が必要で、サービス品質の改善や提供するサービスを拡充することなどが考えられます。

MobileNextはこれを解決するものです。Juniperは通信事業者向けのルーターとして「MX80 Universal Edge」「MX960 Universal Edge」など、「MX 3D Universal Edge」シリーズを提供していますが、MobileNextはこの上で動くものです。SDKの「Junos SDK」とAPIを利用して、Juniperが全製品で利用するOS「Junos」上に機能を追加できます。

2010年にJuniperは「Falcon」プログラムを発表しました。Falconは基本的にはモビリティの文脈におけるMXシステムで、2G、3G、LTE(3.9G)とあらゆる"G(世代)"に対応し、オープンなアーキテクチャによりイノベーションを可能にするというものです。MobileNextはこのFalconの延長上にあります。SDGはモバイルネットワーク側のノードで、SDG上にさまざまな機能を実装します。

これまで、侵入検知や動画向けソリューションなどの機能を付加する場合、別にハードウェアを追加する必要がありましたが、MobileNextとSDGによりJunosの上にサービスを実装できます。これにより、キャリアは差別化を図ることができます。また、1つのゲートウェイに統合するため、コスト削減にもつながります。調査会社のABI Researchの試算では、8000万ユーザーを持ち、21~41%がスマートフォンを利用するキャリアの場合で消費電力は76%、モバイルブロードバンドゲートウェイで56%のコストが削減できると報告しています。概して、キャリアの規模を問わず効率的なソリューションだと評価しています。

――競合Ciscoなどもモバイル向けソリューションを拡充していますが、Juniperの差別化は?

Kolon氏 : ソフトウェア側からのアプローチです。Juniperの製品はすべてJunosが動いています。Junosはオープンなプラットフォームでもあり、開発者は革新的なスタックを容易に追加できます。

たとえば、モバイル端末での動画エクスペリエンスを改善するには、キャッシュとメディア最適化が有効です。これらは個々の技術ソリューションとして提供されていますが、Junosを利用すればネットワークを構築するのと同じプラットフォーム上で動かすことができます。

SDKとAPIを利用すれば、かなり深いレベルでの統合が可能です。ここは、Ciscoなど競合が実現していない部分で、Juniperの大きな差別化となります。

JuniperはIPからモバイルに拡大してきました。モバイルネットワークはIPに移行しており、Juniperも機能を拡大していきます。10年ほど前から、モバイル拡大に向けて技術開発や人員の補強を進めてきました。MobileNextなどの新ソリューション群により、Juniperのモバイルパケットコアや「EPC(Evolved Packet Core)」を導入すれば、実装、運用、管理、保守とフルで支援できます。また、実装オプションとしてホスティングも提供します。

ここにきてやっと、Juniperの戦略と技術が成熟してきたと実感しています。キャリアとの関係をこれまで以上に深く強められると確信しています。

われわれは、動画ソリューションのOpenwave Systems、サービスポリシー(PCRF)のBridgewaterなど、それぞれの分野ですぐれたソリューションを提供する企業と提携し、これらパートナー企業の技術をJunos上で実装できるよう支援します。パートナー企業にしてみれば、アプライアンスを別途用意することなく展開できますし、顧客にしてみれば、大きな投資なしにこれらのソリューションを利用できます。

モバイルでの実績としては、Juniperは世界のモバイルキャリア上位30社ですべて利用されています。日本でも、主要なキャリア全てで導入されており、2011年後半には新しい発表ができる見通しです。日本市場は非常に活発に動いており、Juniperの事業の8~9%を占めています。

世界では、先にChina Mobileと複数年・数十億ドル単位の大きな契約を締結しました。China Mobileは加入者数で世界最大で、ネットワークコアはすべてJunosで動かしています。