2月から3月初旬にかけて、国産時計メーカーの春夏モデルの新作発表会が、都内で相次いで開催された。3社合同の内覧会を開催したセイコー、シチズン、オリエント。さらに単独で新作発表会を実施したカシオ。今年の時計業界のシーンを占う各展示会の内容をレポートする。

セイコー展示会の会場には、創業130周年記念のロゴが

セイコー ブライツに勢いあり!

セイコーは2011年12月を以って、創業130周年を迎える。節目のメモリアルイヤーであり、飛躍の年にと決意も新たにしている。そこで「130」をあしらった130周年記念のロゴを社内のデザイナーからの公募によって制定。「Re-Start」(再出発)をコンセプトに、1881年以来の発展に次ぐ発展の歴史を振り返ると共に、飛躍への新たな決意の気持ちをこのロゴに託すという。そんな祝賀ムードの中で発表された時計は、非常にバランスの取れたラインナップとなった。

セイコー・ブランドにおいて、近年、上り調子にあるのがセイコー ブライツ。ラインナップが盛りだくさんで、アクティブに使いこなせ、価格帯もこなれているなど、若者を中心に人気も高い。今回の注目作も、まずはブライツからだ。

セイコー ブライツのソーラー電波クロノグラフ「SAGA065」(写真左)、「SAGA067」(同中央)、「SAGA069」(同右)

今期のブライツは、外装に力点を置いた「ソーラー電波クロノグラフ」を3種類、リリースした。大きなポイントは、無反射コーティングの使い方だ。

無反射コーティングは、風防ガラスによる光の乱反射を抑制するコートだが、通常はキズが付かないように、ガラスの風防裏側にのみに施される。セイコーは風防の表側にも無反射コーティングを配し表面に防汚膜を施したスーパークリア コーティングを開発。これによって乱反射は約99%も抑制され、一段と文字盤がクリアに見える。

非常に使い易いクロノグラフも搭載し、自動針位置補正などの機能性に富んだ正確無比を誇るソーラー電波腕時計。実用性の高さという点でも注目作だ。

クラシカル回帰が顕著なGSメカニカル

グランドセイコー メカニカル ハイビート 36000 クラシック「SBGH013」

セイコーの最高峰ブランドのひとつは、独自の制度検査GS規格によって正確無比を誇るグランドセイコー(以下、GS)だ。

注目の一本はやはり、GSの機械式(メカニカル)。このラインで今期リリースされるのは、「メカニカル ハイビート 36000 クラシック」。「ハイビート36000」は、セイコー独自の素材や加工技術を駆使することで、機械式時計の精度の決め手となるテンプというパーツの往復運動を、量産されている腕時計では世界最高クラスの毎時3万6,000振動まで高めたもの。

この最先端のメカニズムに、古き良き時代のGSを彷彿とさせるシンプルデザイン、さらにレトロシックなイメージをかき立てる薄クリーム色の文字盤が組み合わさり、まさに「クラシック」の名を冠するに相応しい仕上がりとなっている。

GSスプリングドライブは素材で進化

グランドセイコー スプリングドライブ GMT ブライトチタンモデル「SBGH015」

GSにはもうひとつの注目作がある。機械式時計と同様、ゼンマイで歯車を駆動させて動力とし、クォーツによって精度を正確に制御するスプリングドライブ搭載モデルである。

このスプリングドライブは、セイコー独自の駆動方式であり、世界的にも類例がない。年々ラインナップが強化されているところだが、今回は既に発売されているGMTモデルから、素材違いの新作「スプリングドライブGMTブライトチタンモデル」が登場した。

これまでは、ステンレススチールをケース素材としていたが、新モデルには非アレルギー性で、軽量・強靭、かつ美しい鏡面仕上げのブライトチタン製ケースを初めて採用。同時にインデックスや針にゴールドカラーを配し、ラグジュアリー感もアップした。

レディスウオッチも堅実に前進

レディスモデルに関しては、バラエティやCMで大活躍中の佐々木希さんがプロデュースする「セイコー ティセ×佐々木希」シリーズが目を引いた。

セイコー ティセ×佐々木希「SWFA071」(左)、「SWFA067」(右)

今回はナチュラル・ガーデンをテーマとし、癒しや安らぎ、自然の可愛らしさをコンセプトにしている。

また、「セイコー ルキア」はインデックスに幸運のクローバーをあしらった新作を発表するとともに、黒木メイサさんを新イメージキャラクターに起用するとアナウンスされ、会場を沸かせていた。

130周年を迎えたセイコーがお披露目した時計は、アクティブな男性用から、たおやかな女性用までと、非常に堅実な進化を狙った製品が多いように感じられた。3月末に開催される、時計宝飾の世界的な祭典「バーゼルワールド」では、130周年記念用のとんでもない"隠し玉"が用意されているかもしれない。まだまだセイコーの動向からは目が離せそうにない。