凄惨な被害状況に感動的な救出シーン、福島第一原発の危機的状況に計画停電……。11日の東北地方太平洋沖地震発生以来、テレビの前から離れられない人は多いはず。延々と流れるニュースを聞いていると『予備自衛官』とか『原子力安全・保安院』とか普段耳にしない組織や人の名前も多い。一体どんな人たちなのだろうか。今後のニュースをよりよく理解するためにもここで整理しておこう。
1.安全・保安行政のエキスパートが集まる『原子力安全・保安院』(NISA)
危機的状況が続く福島第一原発。東京電力の会見に前後して行われているのが『原子力安全・保安院』の会見。今回の報道で初めてその存在を知った人も多いはずだ。
『原子力安全・保安院』は、原子力や電力、都市ガスなど、各分野のエネルギー施設や産業活動の安全確保を図るための経済産業省の組織。東京・霞が関に本院があり、全国の原子力発電設備、核燃料サイクル施設の近くに「原子力保安検査官事務所」を設置。同院の「原子力保安検査官」や「原子力防災専門官」が、施設に対する安全規制と防災対策を的確かつ迅速に行うために常駐している。
ホームページ上には「NISAの行動規範」として「安全・保安行政の専門家として現場の実態を正確に把握し、『科学的・合理的判断』のもとに行動します」とある。いまこそその力量が問われている時といえそうだ。
2.「年間停電時間3分」だった『東京電力』
問題が次々に起こっている福島第1原発は東京電力の設備。そして計画停電を行っているのもまた東京電力。いま日本でもっとも注視されている企業といっていいだろう。
ホームページによると、東京電力は日本全体の販売電力量の約3分の1を担っている。サービス区域は栃木、群馬、茨城、埼玉、千葉、神奈川、山梨の各県と東京都、さらに静岡県の富士川以東。「お客様一軒あたりの停電時間年間3分で、世界トップクラス安定性」とある。関係会社は258社で、従業員数は3万8,227人。2012年度卒マイコミ大学生就職企業人気ランキングでは、文系で91位、理系で24位。
原子力発電所は福島第一・第二と柏崎刈羽(新潟県)の3設備あり、東通原子力発電所(青森県)は建設中。福島第一発電所の東京電力社員数は1,056人、協力企業社員数は4,230人(2009年12月1日現在)。
3.ふだんは会社員だったりする『即応予備自衛官』『予備自衛官』
防衛省では今回の大震災で派遣する自衛隊の規模を10万人に拡大するとともに、即応予備自衛官・予備自衛官も投入するそうだ。予備自衛官ってどういう人たちなのだろう。
"いざ"というときに必要となる防衛力を「急速かつ計画的に確保するため」にあるのが陸上自衛隊の予備自衛官制度。自衛隊を退職した民間人を中心に、即応予備自衛官あるいは予備自衛官として任用され、防衛招集や災害招集があった場合に自衛官として活動する。即応予備自衛官は特に即応性の高い予備要員で、有事には常備自衛官とともに第一線部隊とともに勤務する。
自衛官としての勤務経験がない人にも予備自衛官への道は開かれている。試験等で予備自衛官補として採用し、所定の教育訓練後に予備自衛官として任用される。2011年度の予備自衛官補採用予定数は1400人(一般)。
予備自衛官の招集には、首相の承認と防衛相の命令が必要。15日夕方の会見で防衛大臣は「予備自衛官、即応予備自衛官の投入もここ一両日中に命令を発するようになっている」と話している。新聞等の報道によると、即応予備自衛官と予備自衛官合わせて6,500人が参加の意向を示しているそうだ。予備自衛官が実際に任務につくのはこの制度ができて初だという。
4.あさイチの柳澤さんも……エキスパート集団『NHK解説委員』
地震のメカニズムから原子力発電所の構造まで、今回の災害関連ニュースには専門性の高い内容のものが多い。次々と新しいニュースが入ってくるなか、原稿も用意せずに状況を説明する『解説委員』の存在が気になる人もいるだろう。いったいどんな人たちなのだろう。
解説委員が所属する解説委員室のホームぺージがある。これによると、解説委員は「政治・経済・社会・科学文化・国際の各部の記者や番組のディレクター、アナウンサーとして一線で活躍し、それぞれの分野で専門性を培ってきたスペシャリスト」とのこと。「解説委員紹介」のページをみると46人の解説委員の似顔絵と専門分野、出身地、趣味などが。ちなみに「あさイチ」で有働由美子アナウンサー、V6の井ノ原快彦とともにキャスターを務める柳澤秀夫氏も解説委員。担当は「中東・アフリカ」、趣味には「無線・天体観測」とある。
一方、今回の災害関連ニュースでよく見かけるのが水野倫之解説委員。科学技術が専門で、出身地は名古屋、趣味はパラグライダーやゴルフとある。地震が起こる前の8日には昼の番組『スタジオパークからこんにちは』で忠犬ハチ公の死因をテーマに解説していたようだ。
5.首相より存在感大きい?『枝野幸男内閣官房長官』
結局今どんな状況なのか―。国民が一番知りたい原発の状況だが「東電の会見ではどうもらちが明かない」と感じている人も多い。一方の官房長官の会見。ゆっくりと落ち着いた声で話す枝野幸男氏の評価は上がり、いまや菅直人首相より存在感の大きい枝野氏と官房長官の仕事についてもまとめておく。
まずは内閣官房長官の仕事。内閣官房では閣議事項の整理や内閣の庶務、行政各部の施策の総合調整などを行っている。その事務を統括し、内閣の重要な決定事項について調整を行う役職が内閣官房長官だ。「政府報道官」として政府の見解について会見することも多い。
枝野氏は今年1月、第二次菅内閣で内閣官房長官に就任。栃木県出身で東北大学法学部卒。被災地の仙台で大学時代を過ごしている。24歳で司法試験に合格し26歳に弁護士登録。29歳で日本新党の候補者公募に合格し、旧埼玉5区から衆議院議員初当選。当選6回。趣味はカラオケ。自身のホームページで趣味を「カラオケ」と紹介。「中学・高校と合唱団で活躍、中学では全国コンクールで優勝した本格派」としている。