AppleからiPad 2が正式発表され、あとは発売を待つだけとなった。ライバルとなるAndroidタブレットも多数発表されており、iPad 2に前後して市場へ投入される。だがiPad 2発表とともに改めてライバル製品の価格の高さがクローズアップされ、本当にユーザーに対する訴求力を持っているのかが議論されるようになった。こうした中、ある調査会社がまとめた「ユーザーがタブレットに求める製品価格帯」の最新データが話題となっている。
この件をレポートしているのはGigaOMだ。例えば、iPad 2に先行する形で2月24日に全米での販売が開始されたAndroid 3.0 "Honeycomb"搭載のMotorola Xoomだが、3G通信可能な標準モデルの価格が799ドル、通信キャリアの米Verizon Wirelessとの2年契約時の割引き価格が599ドルとなっている。これと同程度の製品ラインに位置するのがiPad 2の3G+Wi-Fi版32GBモデルで、こちらの価格は729ドル。iPad 2は年契約縛りのないプリペイド型契約が前提となっており、これは年契約縛りのないXoomの799ドルモデルと同様の扱いだ。つまり、価格だけみればiPad 2のほうが70ドル安い。しかもiPad 2はiPadからのアプリ・コンテンツ資産が豊富にあるので、性能も同程度のXoomはこの時点で競争力を持たないというわけだ。
だが今回の話題はiPad 2がライバルに対して価格競争力に秀でているという部分ではなく、「そもそもタブレットは価格が高すぎるのではないか?」という点に主眼がある。今年1月のCES、2月のMobile World Congress (MWC)と2つの大イベントで立て続けに多くの新製品が発表されたタブレット製品群だが、ここでは新製品のお披露目もさることながら、価格帯が高く設定されがちにある中で本当にユーザーに受け入れられるのかという話題が持ち上がっており、現地の発表会でもたびたびそうしたテーマの議論が行われていた。
今回、Institute for Mobile Markets Research (IMMR)が814人を対象に行ったアンケート調査によれば、ユーザーが求めるタブレットの価格帯は351~524ドルの範囲であり、350ドル程度なら「買い」、525ドルを超えるような価格の製品であれば購入をためらうという。回答者の38%がタブレット購入に興味を示すなど、ジャンルとしての潜在的な需要が高いことはわかるが、一方で上記の価格レンジに入る製品は市場にほとんど存在せず(iPadの16GB Wi-Fi版などに限られる)、今後登場するAndroidタブレットの多くも、600~800ドル以上の値札がついており、ターゲットから外れている。かといってユーザーは200ドルなど安価なタブレットは「安すぎる」と考えており、その理由は「品質」にあるという。
ユーザーは自身のタブレット利用スタイルを計算しつつ、価格も選択基準にしていることは、もう1つの調査からもわかる。その調査というのは現在IMMRがアンケートを行っているもので、その調査の途中データを入手したGigaOMによれば、タブレット購入予定者に「Wi-Fiのみのモデル」「3G対応で年契約縛りなし」「3G対応で2年契約あり」のどれを選ぶかを尋ねたとき、Wi-Fiのみのモデルを選択したのが全体の40%弱と圧倒的で、利用は主に自宅または職場、そして一番安価な製品を選ぶ傾向であったとのこと。
そしてより興味深いのが3Gの「契約縛りなし」「2年契約あり」のいずれかを選ぶときで、2年契約を選んだ人が全体の25%なのに対し、契約縛りなしを選んだのはわずか10%だったという。2年契約はデメリットだが、一方でインセンティブによる割引きで端末の購入価格が通常時より数百ドル程度安くなるため、「契約で縛られても安いほうを選ぶ」傾向があることがわかる。iPadでは現在契約縛りなしのオプションしか存在しないが、もし年契約縛りで端末が安く購入できるのであれば、ユーザーはそちらを選ぶ可能性が高いということを示しているのかもしれない。通信キャリアにとっても、携帯電話と異なるタブレットでどのようなビジネス展開をするかは非常に悩みどころであり、今回のデータはユーザーの製品選択傾向を知るための一助となるかもしれない。